2014年09月11日

アイリス

神なき世に問う、介護の救いとは?



評価:★★★★ 4.0点

ここで描かれているのは残酷なまでの現実です。

英国実在の作家アイリス・マードックとその夫で同じく作家であり文芸評論家のオックスフォード大学教授ジョン・ベイリーの実話を映画化したものです。

この映画は事実を描くという事に主眼を置いていて、それゆえドラマ的な盛り上がりやカタルシスはありません。それゆえ映画の評価としては−☆1としました。しかしそれ以上にドキュメンタリー的な力があり、現実の介護が身にしみて伝わります。

若い二人が愛し合い、愛し続けて時を重ね・・・・その人生の果てに待ち受けている、非情な運命。
長年連れ添った妻がアルツハイマーで崩壊する様を見る夫。

途中途中に挟み込まれる、夫婦の若い頃の輝かしい姿が印象的なだけに、よけいに老年の衰えが痛々しいのです。

この病気の妻は、作家です。
そんな頭脳明晰な人間でもアルツハイマーになるという事で、この病気はロシアンルーレットのように誰の身にも降りかかる不運であることが語られます。

また、介護する年老いた夫の献身が泣かせます。
妻を施設に入れることを勧められたことに対して、「夫が妻の面倒を見るのは当然だ」と言い、長年の情愛を込めて介護にあたります。
しかし、徐々に疲れ、家の掃除もままならず、ついには言葉も不自由な妻を罵るようになります。

「どうせ何を言っても分からない」

この悲惨な断絶の末に、老々介護の虐待や、果ては無理心中という事態も引き起こされるのでしょう・・・・・・
大学教授の優れた知性と、深い精神性を求めてきたこの夫、この人物にしてから、介護を平静に全うできない事に衝撃を受けます。
コミュニケーションを失った、自己を失った人間とともに生活をし続ける事は、本当に困難だという事が体感に近い感覚でわかります。

またその果てに迎える妻の死に対して、なんら夫の苦悩が救われる術が提示される訳ではなく、結局、神の存在を問うということになります。

「神は死んだ」とニーチェが言ってから、もう100年以上を過ぎた今でも、このアルツハイマーの果ての死に対して何ら精神的(=哲学的)な救済を見出し得ないという事実は人間の限界を示すのでしょうか・・・・・

 やはり人は、どれほど愛情を相手に対して持っていたとしても、愛情を還して貰えなければ努力を続けることは出来ないのでしょう・・・・


「人は神にはなれない」という自明の理をこの映画が告げてるように思います。


ですから、どうか介護されてる方は無理をなさらないでください。

自分だけで負担を背負い込まず、ありとあらゆる方法を使って助けを叫んでください。

介護されてる人が苦しんでいるとすれば、それは介護なさっている人の罪ではありません。この負担はもう社会全体で考えるべき問題です。

そのためには「助けて」という声を上げるべきなのだろうと思います。

生意気ながらこの映画を見てそう思いました・・・・・・



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posted by ヒラヒ・S at 20:00| Comment(0) | イギリス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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