2014年09月16日

阪急電車 片道15分の奇跡

阪急電鉄の「水戸黄門」



評価: ★★   2.0

宮本信子の演技に+☆1。映画的技術に対して+☆1。

この映画に関しては、私の見方は特殊かもしれません。
この映画を愛してらっしゃる方々は、スミマセン・・・・お読み下さらない方がよろしいかもしれません。


この映画は基本的に人情話で、阪急電車に乗り合わせた人々の問題について「人はそれぞれやりきれない思いを抱えて生きている」、「死ぬほどつらいわけではないけれども、どうにもならない気持ち」と説明します。
その気持ちを乗客同士が[交流]を持つことで変化(問題解決・幸福感)が訪れ、結論として「この世界も悪くない」という結論が語られます。


なるほどここで提示されている「問題と解決」の公式[やりきれない思い+人間同士のふとした交流=問題解決・世界の調和]には文句のつけようがありません。

でもここで描かれる問題は、命の危険を感じるモノからどうでもいいモノまで多岐にわたります。
しかし公式に従って一律に[やりきれない思い]で語られ、更に問題処理も[人間同士の軽い交流]で解決し、そして結論として「世界は悪くない」と謳われます。

乱暴な話だと思いませんか?

例えば、小学生のイジメにあってる女の子。
居合せた中谷美紀演じる女性の「かっこいいよ。がんばれ」という声かけが解決策です。
なるほど、この子は一時この「人間同士のふとした交流」によって心の平安を得るかもしれません。
しかし、根本問題=イジメが何も解決しないのに、これでよかったと言えるでしょうか?

例えば、オタクの疎外感に悩む男女。
電車内で話すことで恋人同士になります。なるほどこの公式に一番添っている様に思いますし二人のシアワセを祈ります。
しかし、オタクはいいので社会性=コミニュケーション能力を高めるのが今後の人生における本質的な解決です。


つまりこの映画における「公式」は問題の大小や質、問題に対する適切な解決などを無視し、決められた結果=予定調和の答え「世界は悪くない」を証明するために存在している様に思いました。

このある「公式」に従って「予定調和」に導く手法、これは時代劇「水戸黄門」などの「勧善懲悪」と同じ構造です。
この「予定調和」に向かう物語は、何があっても「悪が滅びる」や「世界は悪くない」に結果が決まっているだけに、安心して見ていられますし、伝える「答」が明確になるという利点があります。

それゆえ、説話やプロパガンダ、宗教説教に使われる手法です。

つまりこの形式が示すのは、政治信条・宗教・道徳などによる、「世界観」によって世界が成り立っているというメッセージです。


例えば「水戸黄門」における世界観は「悪は退治される」です。
しかし根本的な幕藩体制下の封建社会の歪みを修正はしません。
天下の副将軍なのに・・・・・ナニヤッテンダロウです。

しかしまだ、時代劇においての予定調和は、時代的なフィルターを通し一種の「おとぎ話」となりますので、まだ害は少ない。

しかし、現代社会において「予定調和的な世界観」が成立すると思っているのでしょうか?
しかも「世界は悪くない」という「世界観」で何が救われるのでしょう。

少なくとも近代以降、一律の「世界観」で全てが解決できるという「幻想」は消滅したというのが常識でしょう。

しかもその世界観が「世界は悪くない」というのですから・・・・・・これでは「世界観」ではなく「世界感」です。


ハッキリ言います、この映画は現代の問題に関する解決を何も提示せず、単に口当たりのいい「人のつながり」という情緒を垂れ流しているだけです。
こんな「世界は悪くない=なんとなくシアワセ」というような映画を作る必然性が、今の日本にあるのでしょうか?

私には、よく分かりません・・・・・・・

ホントに、この世界は悪くないですか?
「アフリカでは7歳の子が拉致され銃を持たされ戦わされます。」

ホントに、この世界は悪くないですか?
「北朝鮮では子供たちが親もなく下水管で暮らしています。」

ホントに、この世界は悪くないですか?
「地球の環境変化は崩壊寸前です。地球上の生命全体が危機にあります。」

ホントに、この世界は悪くないですか?
「毎日毎日紛争が絶えず、その紛争で人が死んでいます。」

その責任の一端は、今の日本にあるのです、本当に、この世界は悪くないんですか?
こんな世界の中で、この映画で語られている問題に頭を悩ませている日本人って?

正直・・・・・恥ずかしい・・・・この映画で語られている世界観は「悪」ではないですか?

宮本信子演じる現代の水戸黄門の説得力で、それなりに「シアワセ」を感じられてしまうのですが、この映画で語られる「シアワセ」に何の意味があるでしょうか。

スミマセン・・・・もし不快に感じられたら、お詫び申し上げます。


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posted by ヒラヒ・S at 22:51| Comment(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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