2014年10月16日

ブーリン家の姉妹

ブーリン家の別の少女



評価:★★★★ 4.0点

家族の確執と執着。
血族というものが、宿命的に、否応なく、不可避の形で持たざるを得ない、強い「関係」が作り出す、個人の愛憎と欲望によって、世界や歴史が動かされて来たのだというメッセージが、説得力を持って伝わってきます。

出演は姉アン役にナタリー・ポートマン、妹メアリー役にスカーレット・ヨハンソン、ヘンリー8世役にエリック・バナという豪華なもの。
脇を固める役者たちも重厚感があって、作品に説得力を与えています。
個人的にはブーリン家の姉妹によって追い落とされる、元王妃キャサリン・オブ・アラゴン役のアナ・トレントが懐かしい。
かの名作「ミツバチのささやき」「カラスの飼育」の子役が、こんなに立派になって・・・・・

この物語は、イングランドの王ヘンリー8世の寵愛をうけ英国の歴史を変える事になったブーリン家の姉妹の物語です。
ヘンリー8世はブーリン家の長女アンが王妃の座につきたいとの望みに応えるため、現王妃を離縁しようと画策します。
基本的に当時の結婚は神の前で交わした神聖なる契約ですから、未来永劫不変の関係です。
当時のローマ・カトリック教会は神の名において、離婚を認めませんでした。
そこでヘンリー8世は、ローマカトリックと喧嘩し破門されたため、イギリス国教会というキリスト宗派をでっち上げ離婚を成立させます。
この強引な王の施策は、国内外から非難を浴びる事になります。

しかし、この映画内では語られていませんが、実はこの時代は薔薇戦争やプロテスタントの興隆など、多事多難の時期でありそれゆえ後継者として男子が相応しいという、ヘンリー8世の強い思いがこんなスキャンダルを生み出した側面もあるようです。

たしかに、この映画で語られるブーリン家のアンは権力を恣意して、専横を重ねるように見えます。

しかし、注意深くみればこの姉妹は、家族の繁栄の為や、ヘンリー王の色欲や政治的野心の道具として使い捨てられたりと、当時の権力構造で優位に在った男達や、その父権社会の犠牲者だったと言えないでしょうか。
この王ヘンリー8世は好色であると同時に、精力的に仕事もし、人々からカリスマ性を認められていた、言うならば英雄的男性だったのです。
こういう人物が英雄としてもてはやされる時代に、その周囲で生きた女達は、真に幸福ではいられないように思います。
自分の人生を自分で選べない当時の女性達の悲しみや憤りが、アンの行動を駆り立て突き動かしているように見えます。
アンのように虐げられた立場の者が権力を持っていくとき、自らを虐げた者たちに対する復讐や、自らの狂おしいばかりの欲望に、遂にはその身を破滅させるまで走リ続けるしかなくなるのでしょう。

しかしその過剰な情念に滅ぶのが、持って生まれた生来の質というよりも、外部的な要因によってもたらされるとき、これは被害者と呼ばずに何と呼ぶべきでしょうか。
そう考えれば、多かれ少なかれ、歴史上も現在でも、女性とは社会的被害者だったに違いありません。

そんな悲劇を象徴するブーリン家・アンが残した忘れ形見が、結婚もせずに男よりも強くイングランドを世界を支配したのは歴史的必然というべきです。
この映画の原題「the other boleyn girl」=「ブーリン家の別の少女」とはこのアンの娘、バージンクィーン・エリザベス一世を指していると思います。


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posted by ヒラヒ・S at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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