2015年08月02日

グリニッジ・ヴィレッジのアルバート・アイラー

叫び



評価:★★★★★  5.0点

ムンクの叫びという絵を見ると、いつもアルバートアイラーを思い出す。
壊れてしまったのだなと思う。
聞く者の脳髄を直接痺れさせるような長い長い叫び。
恐怖と苦悩を叫ぶ事によりかろうじて均衡を保っていたのだろう。

ジャズと言うジャンルは、どこか難解な印象があるかもしれない。
しかし実はシンプルな演奏方法で、メインテーマを演奏した後、基本的なコード進行とリズムの中で、それぞれがソロを自由に演奏する。

それはブラック・カルチャーに共通する、コールアンドレスポンス(呼びかけと返答)であり、現在のラッパー達やヒップホップダンスのバトルと同様の形式の中で、自らを主張していくものだ。

ジャズが難しいと感じてしまうのは、そのバトルが言葉ではなく、楽器でなされる所に在るのではないか。
ボーカルをまず探してしまう、現代の軽音楽になれた耳には、バスドラムの音に呼応して金切り声を上げるトランペットの音を追うのは難しいかもしれない。

しかし、丹念に音を追って行けばその演奏の中に、何を表現してもいいという自由があふれていることに気づくはずだ。

つまり、実際のジャズとは、大声で好きな事を言いまくるという、音楽のことだと考えている。

それを楽器でしなければならなかったのは、奴隷としての長い歴史を背負わされたアフリカ系アメリカ人の歴史的経緯と、不可分な理由による。

白人にとって気に食わない言動一つで、縛り首になってしまう黒人達にすれば、しゃべることすら自由ではない。

そんな黒人達にとって、自由に怒りや悲しみ苦しみを表出できるのが、ジャズだったのだ。

つまり、ジャズの中には根本的に言葉にできない感情の奔流で、あふれているのである。
ちなみに言えば、黒人の音楽にはブルースにしてもロックにしてもラップにしても、同様の感情が潜んでいると考えている。
本来ブラックミュージックは、黒人達のどうしようもない社会に対する怒りの表出としてある。

それゆえ、白人達がどれほど技術的に模倣しようと、その表現にどこか軽さや薄い響きが在るのは、怒りを持ちようがないという理由によるのだろう。

そして、このアイラーである。

この音を聞けば分るはずだ。

誤解を恐れずに言えば、アイラーは死んで良かったのだと思う・・・…
この人はもう生きられない。
生きろというのも酷だ。
こんな魂を引き裂かれたままで・・・こんなに苦しい叫びを上げ続けている人に、生きろと強制する権利は誰にもない。

今、彼の魂が天国で心安らかな日々をすごしていると信じている。

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posted by ヒラヒ・S at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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