2015年10月24日

50回目のファースト・キス

「語られるもの」と「語るもの」の関係



評価:★★★    3.0点

いい恋愛映画です。

ザックリ言って恋愛映画のドラマとは、好意を待った相手と上手くいっていない状態=「欲望の不充足」の顛末を描くことにあると、勝手にかんがえています。
ですから、好意を持つ者がなぜその恋愛対象と完璧な相思相愛=「欲望充足」に至らないかの原因がそこにはあるはずです。

例えば、古典的な所では「親の反対」「事故」「戦争」「死」なんて言う、自らの意志ではなく「大きな運命」で上手く恋愛が成就しないという理由づけがあります。
それが現代に近ずけば、個人の自由が広がるにつれ「お金」「浮気」「理想」なんて言う個人的な理由が前面に出てきます。

どちらにしても、こんな原因があったらどんなに好きでもうまく行かないよねぇ〜、ど〜なっちゃうんだろ〜と観客に思わせれば勝ったも同然です。
見る者は、恋人達の恋の行方に一喜一憂する事でしょう。

結局「恋愛映画」のキモは、恋愛がうまくいかない理由に説得力を持たせることだと言えるでしょう。

さて、この映画のキモ=「恋愛阻害要因」は「病気」です。

これは実は、「大きな運命」の範疇に入る「古典的要因」ではあります。
「ある愛の歌」や日本で言えば「世界の中心で愛をさけぶ」なんて、「不治の病」という運命で引き裂かれるカップルなんて言うのは、王道中の王道ですね。
これで泣かないようでは、人でなしとまで言われてしまいます。

さて、この映画での「病気」はじつは、過去の「不治の病」系の病気とはちょっと違うユニークな点を持つものです。
実は、ある日を境にして短期記憶が長期記憶に書き込めなくなってしまうという、「リカバリー症候群」とでも名付けたい精神疾患を持つ彼女との恋というお話です。
つまり、ある日に出会ってお互いひかれ合ったとしても、彼女は記憶が一日しか保持できず、翌日にはキレイサッパリ彼の事を忘れてしまい、また一から関係を作り直さなければならなくなるのです。

この「病気」のユニークなのは、従来の「病気ネタ」は=「死による恋愛消滅」に結びついていて、すべからく死んじゃったから恋愛がうまくいかなかったというストーリだったものを、「死なない」「でも恋愛にならない」という「ライトな病気」を持ってきた所です。

この設定はなるほど、深刻にならずに、恋愛の不成就を納得させる、ラブコメ設定にピッタリの「理由」で、よく考えたものだと感心しました。
何せ、好きな二人の恋愛を邪魔するためには、普通であれば阻害要因として「親」「恋敵」「社会的反対」「事件・事故」なんて大掛かりな道具立てが必要な所です。
でも、この「病気」であれば、翌日起きれば恋が消滅しているのですから「永遠の恋愛物語」を作れることになります。

そしてまた、この「恋愛阻害要因」にメゲズに、彼女にアプローチする事によって男性側の純愛を際立たせるお話になっていると思います。
そういう意味では二人の運命に対して、古典的な恋愛ストリーが持つ同情や、その先の恋の行方に対する感動もあります。
ハリウッド「ロマンチックコメディー」としての標準は、クリア―しているのは間違いないでしょう。
素直に「悲恋がどうなるかハラハラしたけど、この結末で感動した」と思えば★5でもおかしくない作品です。


で私の評価は、★3ナンですけど・・・・・・ちょっと説明させて下さいまし。

私のマイナス★二つの理由は、単純にこの「恋愛阻害要因」=「1日分の短期記憶が長期記憶に書き込めずに、目覚めると前日の事を忘れる」という設定が、このラブコメに使うにはもったいない位の「素材=アイデア」だという1点にあります。

実際この映画に描かれたような病気が実在するのか、実在するとしたらこの映画に見られる程度に日常生活が可能なものなのかは、存じません。
仮に実在の病気だとしたら、すべての病気がそうであるように苦悩や悲劇があるべきでしょうし、それが見えればこの語り口にはマッチしないでしょう。

それゆえ単なるアイデアだったとして話を進めますが、それでもこの「ラブコメ調」の映画に使うには、どこか納まりが悪い気がします・・・・・

実際この「1日分の短期記憶が長期記憶に書き込めずに、目覚めると前日の事を忘れるヒロインとの恋」が、哲学的な重い問いを発している事を、観客は無意識のうちに感じてしまうと思うのです。

すなわち「恋愛における必然」とか「運命とはなんぞや」とか「人と人が惹きあう事」や「愛がユニークなものか、継続の上で成立するか」なんていう、「恋や愛」に関する根本的な問いをこの設定は発しちゃってるように思います。
また、同様にちょっとヒネって「恋愛が持つ狩猟性」だとか「永遠のバージニティ」なんていう「恋愛と官能」に関する刺激的なシチュエーションも暗示してくれてもいます。

そんな様々な要素が詰まったこの「アイデア」から始まるストーリーにも関わらず、その潜在能力を開花させてやれなかった「脚本」に、惜しいなぁ〜です。

この映画の雰囲気に合うのは「魔法にかかって、1日たつと忘れてしまうヒロイン」という、ファンタジー設定だろうと思います。
そこに、変に現実感と「深い問題をはらんだアイデア」を持ち込んでしまえば、見る方が混乱してしまうのではないでしょうか。

あ〜もったいない。

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posted by ヒラヒ・S at 20:12| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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