2016年01月24日

愛情物語

ハリウッドの良心




評価:★★★★   4.0点

ビッグバンドオーケストラのバンドマスターでピアニストのエディ・デューチンの生涯を描いた良作だと感じます。
ハリウッド黄金期の作品が持つ、美しく良心的で正しいというテーストを感じる作品であると感じます。
決して突出した名作だとは思いませんが、オーソドックスな作品であるだけに、当時のハリウッド映画の総合力・基礎力の高さが分かる一本だと思います。

名優タイロン・パワーやキム・ノヴァクの魅力は、古きハリウッド・スターの力を示して堂々たるものです。
1950年代とは、アメリカが最も影響力を持っていた時代です。
そして自分たちの持つ力や正義で、世界を良いものにできると信じていた時期でした。

それを反映して、ハリウッド映画もアメリカ的な価値感を歌い上げた作品が、多いように思います。

この映画も1930〜40年代に活躍したピアニストを主人公に、古き良きアメリカが持つヒューマニズムや家族の絆を描いています。
多少お涙頂戴のキライはあるものの、その黄金期のハリウッド映画的な安定した話法と、悲劇であっても決して希望を忘れないその描写が、見るものの心を暖かく包みます。

音楽の使い方も理に適った、映画と音楽の連携が良く出来ていると作品だと思います。
特に、カーメンキャバレロ演奏のショパンの『夜想曲第2番』は、出色の演奏ではないでしょうか。
その他の演奏も、ロマンチックでバラエティーにとんでいて、聴いてるだけで甘い気分になります。
古き良き時代を彩る、華麗な音楽がまた作品を盛り上げ、否が応でも見る者の涙腺を刺激します。

そんなロマンチックで、善良で、ヒューマニズムに富んだ、家族全員で楽しめる、ハリウッド映画の古き良き時代のスタンダードの気高さに惚れ惚れします。
しかし最近のハリウッド映画をみても、こんな大人から子供まで楽しめる家族向け作品には、とんとお目にかからなくなりました。
実はそれには理由があります。

こんな家族みんなで映画を楽しむというレジャーの在りかたは、1950年代以降徐々に少なくなっていきました。
それは家族の娯楽の王座が、TVの出現によってその立場を奪われてしまったからです。
そんな流れを受けて映画界は、1967年の「俺達に明日はない」に始まる、家族ではなく個人を狙ったアメリカン・ニューシネマの方向に舵を切ることになるわけです。
そんなこんなで最近では、万人受けする派手なアクション映画か、ディズニー作品ぐらいでしか、家族揃ってという映画はなくなってしまいました。
その作品にしてから、この「愛情物語」のような、世間のモラルの規範になるような「美しい絵空事」の映画はまずありません。

そういう意味でこの映画は、良心的ファミリー映画がまさに完成の域に達していた1950年代の作品であり、ハリウッド映画の歴史的な資料として残したいような一本だと思いました。
またこういう映画を見ると、かつて観客と映画がお互いに信頼しあい、相思相愛であった時代の、映画に対する「愛情物語」を見るようで心が温かくなります。


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posted by ヒラヒ・S at 12:09| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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