2016年06月22日

『ショーシャンクの空に』開放感の理由を考えて見る

日常という煉獄



評価:★★★★★ 5.0点

すでに古典としての風格を持ち始めた、この刑務所を舞台とする映画のラストに向かっての解放感は、何事だろうと考えたりする。

この映画は、冤罪で罪を得た主人公が、刑務所の過酷な管理と統制の中にあっても、希望を捨てず少しずつ刑務所内で自由を獲得していく物語だ。
しかし、その手段が刑務所所長の不正経理の帳簿操作だったがゆえに、主人公の刑が冤罪によるものだとわかっても、刑務所所長は自らの不正の発覚を恐れ、その権限により再審を認めないと主人公に告げる。
その時、主人公のとった行動は・・・・・・・・というのが、おおよそのストリーだ。

この映画の過去の刑務所の物語と違うのは、この主人公が「ホワイトカラー=知的労働者」であることだ。
それまでの刑務所ものの映画であれば、主人公はだいたい労働者階級の出身であり腕力にものを言わせて、自由のための戦いをするというのが定型だった。
そう思えば、この主人公の設定は暴力に寄らず、知性によって理不尽な看守の横暴に対抗するという、新たな刑務所ヒーロー像を示したのではないか。


しかし、基本的にドラマの爽快感とは「水戸黄門」では無いが、不条理に耐えていく正義と、その正義を蹂躙する非道な悪の攻撃が描かれ、正義の者がそれ以上耐えられなくなったり、怒りが頂点に達したときに、正義に立つ者が法も道理も超越して悪を懲らしめる形こそ「王道」であったはずだ。

このとき、正義の側の戦いとは、現実の闘争というよりは「神の鉄槌」として行使されるだろう。
それゆえ悪と同様、もしくはそれ以上の暴力が振るわれたとしても、神の代理人として見る者から許容され得るのである。
そして、上の勧善懲悪を完遂するためには、暴力という形で表現されてこそカタルシスを生んだはずだ。

しかし仔細にこの映画の構図を見てみれば、実はこの知識階級の主人公は、刑務所という悪の場において一方的に攻撃されているわけではない。
彼はその職能を有効に活用して、刑務所内で一定の利益を享受する。
その利益が、所長の悪事の管理者として働くことで得たものであると思えば、この主人公は実は悪に加担しており、決して正義の使者ではないと分かる。
つまりは、この刑務所と主人公の相克を単純に「勧善懲悪」の物語原型に嵌め込む事が、間違いなのであろう。


それではこの劇中の刑務所とは、何を意味するであろうか。
そこで、鍵を握るのはモーガン・フリーマン演じる「調達屋」の存在である。
彼は刑務所内で、主人公同様、やはり己の職能を持って独自の地位を獲得している。
つまりは、この刑務所内には、権力・金と、特殊技能を持つ管理者と、商品の流れがあることを考えれば、それは小さく見れば会社組織であり、マクロ的に捕らえれば現代社会のアナロジーであったろう。
であればこそ、刑務所を出た老受刑者は社会から見放された者として、自ら命を絶たざるを得なかったのである。
従って現実社会を仮託されたこの刑務所内の生活が、終わりが見えない、ただ耐え続けるだけの暗鬱な描写である理由も、現代社会の閉塞感を表わしたモノとして納得がいくのである。

結局、この主人公は「刑務所=現代社会」に適応しすぎたがゆえに悪に染まり、悪に染まったがゆえに正義に立ち返ることができなかったのである。
それはやはり、現代社会というあまりにも加重な法と規制を生きる身になれば、多かれ少なかれルールを逸脱しなければ生きていけない、現代人を代表した存在だったろう。
そしてそれは、必然的に現代を生きるものは、悪人としての己を生きざるを得ないのだと、追認することでもある。

こう整理してみれば、この映画はその必然的に悪をはらんだ現代社会からの開放を描いたがゆえに、かくも観客に爽快感をもたらすのではないだろうか。


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posted by ヒラヒ・S at 20:01| Comment(4) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おこんばんは〜観たような・・(・・?忘れた💦モーガンさんが出ると重厚さが漂いますね〜・・・必要悪って事ですかね?刑務所も会社組織って何かカッコええわ♪
Posted by ともちん at 2016年06月22日 20:03
>ともちんさん

グリーンマイルとおんなじ監督で、おんなじ原作者「スティーブン・キング」です。
そんな、こんなで「グリーン・マイル」嫌いの私としては、恐る恐る見たんですが、面白かったですm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年06月22日 20:19
おお〜5.0来ましたね!
まさに名作ですね!BD持っていますよ(*‘∀‘)
『必然的に悪をはらんだ現代社会からの開放を描いたがゆえに、かくも観客に爽快感をもたらす』
まさしくそうだと思います!
Posted by いごっそ612 at 2016年06月22日 21:20
>いごっそ612さん

名作ですね〜モーガン・フリーマンが効いてますよね・・・・個人的には「グリーン・マイル」が・・・・う〜ん。それはそれとして、モロモロいつもありがとうございますm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年06月22日 22:17
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