2016年07月18日

『イングロリアス・バスターズ』フィクションは現実に勝利するか?

映画オタク・タランティーノの戦争映画コラージュ



評価:★★★★   4.0点

白雪姫がベッドから眼を覚ましたとき、7人の小人がベッドの周りでそれぞれ得意な獲物(武器)を抱えて臨戦態勢だった。
小人の参謀"ドック"が囁く。「姫・・・・まだ敵が誰か不明ですが、すでに包囲されてます。」
白雪姫は華やかな微笑みを浮かべながら、M61バルカン砲を構える。
「一体どなたかしら?」と歌うような白雪姫の言葉が消えないうちに、天井から白馬に乗った王子が日本刀を閃かせながら突入してきた。
小人の"ドーピー"が咄嗟に走り、日本刀に体を串刺しにされながらも、残った命の全てを籠めて王子の喉笛に噛み付く。
二人の血が噴水のように部屋を染め上げ、ルビー色の虹が燦然と輝いた。
その虹を橋頭堡のようにして、シンデレラがAK47を連射しつつ、フェアリーゴッドマザーと共に窓から飛び込んでくる。すかさず白雪姫はバルカン砲を毎分4,000発の速度で発射し応戦する。
曳航弾が飛び交う中、双方の弾幕に巻き込まれた、"ドーピー"と王子の体があっという間に千切れ、200カラットのダイヤの指輪を付けた王子の左手が、永遠の輝きを撒き散らしながら白雪姫の胸の谷間に飛び込む。
彼女は微かなエクスタシーの揺らめきに0コンマ3秒、引き金を緩める。
瞬間シンデレラは華麗なワルツを踊るように身を翻し、白雪姫の額に自分の額をピタリと付けた。
白雪姫の背後に回ったフェアリーゴッドマザーは、その喉に刃渡り50センチのコンバット・ナイフを突きつける。その硬度HRC60のナイフ・ブレードは易々と骨まで白雪姫の首を切断するはずで、小人達も手を出せない。

シンデレラが勝ち誇った顔で、白雪姫を見下ろしながらゆっくりと言う。
「生まれながらのお姫様に、デカイ面されちゃ困るのさ。」
白雪姫は眼をそらさず、深い瞳でシンデレラを見つめ――――――キスをした。
「死の接吻のお味は、お気に召して?」
そう言う白雪姫の前で、シンデレラがローブデコルテの裾を花のように広げながら崩れ落ちる。
「ビビデバビデブ〜」という叫びと共に、フェアリーゴッドマザーのナイフが、笑う白雪姫の首を宙に飛ばした。
美しき姫君達の血の海の中で、「ビビデバビデブ〜」と「ハイホー」という雄叫びが交錯し、フェアリーゴッドマザーと小人達の戦いが続けられる。
戦い続ける者達の眼に涙が浮かんでいるのは、決して肉体的損傷のせいだけではない・・・・
THE END(R―15)


上のお粗末なアクションドラマを延々書いたのは、タランティーノの映画というのが、本質的にこんな過去の創作物(映画)の過激なコラージュだと思ったからです。

例えば『レザボアドッグス』の"深作欣司・仁義なき戦い"、 『‎ジャンゴ 繋がれざる者』の"マカロニ・ウェスタン"、そしてこの映画『イングロリアス・バスターズ』は古今東西の戦争映画のコラージュだと感じます。


もっとも、スタートはマカロニ・ウェスタンの音楽に乗って、ユダヤ人家族を皆殺しにするナチスドイツの残虐シーンから始まります。
その殺人現場から逃れた一人の少女の、復讐譚が物語の骨子です。
そのユダヤの少女が経営する映画館で、たまたまドイツの英雄を描いた映画を、封切イベントする事になって、そこにゲッペルスやヒットラーも出席する事になり、それを聞きつけた、ブラッドピット率いる「チーム・バスターズ」のアメリカ軍ドイツ潜入部隊も、同時にその劇場を爆破しようと動き出すという物語です。

ここには例えば、アメリカ映画の『戦略大作戦』や『戦争のはらわた』『特攻大作戦』『荒鷲の要塞』『ナヴァロンの要塞』などのイメージを想起しました。
しかしヨーロッパ映画の影響も色濃く、タイトルの基となった『地獄のバスターズ』や『パリは燃えているか』『地下水脈』『無防備都市』『影の軍隊』そして、見ていないのですがレニ・リヒテンシュタール監督の山岳映画やパープスト監督について映画内で言及されていますので、そんなイメージもあるのでしょう。

さらに言えば、デヴィッド・ボウイの「キャット・ピープル」が流れるシーンでは、運命的な女性の姿を映画『キャット・ピープル』にオーバーラップさせていると思います。


また、この映画で、タランティーノは初めて欧州映画もそのコレクションとして、使用したのだと感じました。

いずれにせよ、そんな「フィクションの世界」を下敷きにして「フィクション」を生み出すタランティーノとは、日本のオタクの如く、すでに「現実世界」の住人ではなく「フィクション内で生きている」のではないでしょうか。

たぶん、タランティーノに言わせれば「つまらない現実」などより、「虚構=フィクション」の価値が勝るということかと・・・・・・・・


この映画は「現実」は「映画=フィクション」によって、変革しえるというメッセージだったと感じます。
さらに言えば、このシーンが語るのは「現実」は「フィクション」に従属するという、タランティーノの信念であるようにも思うのです。


この映画には、そんなこの監督の決意表明のようなシーンを、映画館の復讐シーンで見い出す思いがします。
映画館では、一人で300人を相手にしたドイツ兵の活躍を、その兵士を主役にして描いた映画が上映されています。その映画を見ながら、その主演した兵士は、現実の殺人を思い出すから映画を見ていられないと語ります。
また、復讐者の少女が現実で受けた苦難を、映画館で果たすということにも、同様の構図を見ることが出来ます。

この映画館のシークエンスは、本当に美しい、華麗な、シーンで圧倒されます。

再度言いますが、これはタランティーノのオタク人生を賭けての、「映画の力」に対する信念の激白であるように感じました。
正直、映画に対する強い愛に『ニュー・シネマ・パラダイス』のラストに匹敵する、名シーンだと感動しました。


そんな強い信念を感じて、私も、現実よりフィクションが大事と、脳に刷り込まれたような気がします。
もし道で「AK47を持ったシンデレラが・・ハイホぉ・・」などと恍惚の表情を浮かべブツブツ呟く者がいたら、フィクションに現実を優越された私です。


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posted by ヒラヒ・S at 20:37| Comment(7) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは!この映画観てると思います笑〜あれ?と思いました。復讐なんですよね!動画助かりますね笑🎵( ̄▽ ̄)タランティーノさんはひねくりまわした殺し方はしないので好きです。
Posted by ともちん at 2016年07月18日 21:02
>ともちんさん

ど〜もm(__)mアドバイスに従い[YouTube]使いまくりです。
親切が一番かと。
タランティーノかっこいいですね〜
Posted by ヒラヒ・S at 2016年07月18日 21:05
この映画、自分はイマイチでしたが・・なるほど勉強になりました。
動画も使用してバージョンアップしましたね!
Posted by いごっそ612 at 2016年07月18日 21:36
ともちんさんところで見ましたが、自分のスマホではきれいにYOUTUBE表示されてます。
Posted by いごっそ612 at 2016年07月18日 21:40
>いごっそ612さん
ありがとうございます。
YOUTUBE表示OKとのこと、教えていただいてありがとうございます。ホットしました(^^)
しかし、やっぱりブログ技術は、まだまだですし色々教えて下さい。
タランティーノの映画としては、個人的には「パルプ・フィクション」がベストですが・・・・次は、ジャンゴを見ようかなとm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年07月18日 21:55
見えます見えます( ̄▽ ̄;)💦
Posted by ともちん at 2016年07月18日 21:59
>ともちんさん

見えました?見えました?わ〜いわ〜い(^^)/
おさがわせしましたm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年07月18日 22:07
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