2016年08月20日

『お嬢さん乾杯!』名匠木下恵介監督の描く、戦後の恋と夢

日本映画ルネッサンス

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評価:★★★★   4.0点

この作品には、ビックリしました。
オシャレでスマートで洗練されたロマンチック・コメディーです。
この映画が、どれくらいすばらしい映画か物語る後日談があります。

この映画は1949年、戦争終結して4年後に公開されました。
当時GHQに占領されていた日本は、すべての映画を「GHQ民間情報教育局」が検閲していました。
そして、この映画を見た当時の情報教育局長カーミット・R・ダイク准将がその出来栄えにビックリして、アメリカ本国で上映会を開いたそうです・・・・・そこに、オブザーバーとして出席していた映画監督がいました。
その監督ビリーワイルダーもこの映画に感動し、貴族的なヒロインと庶民的なヒーローという組み合わせを使って、1953年に一本の映画を撮り上げました・・・・・そう「ローマの休日」です。


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  というのは・・・・・ゴメンナサイ・・・・
    嘘です。

 
でも、こんなウソがまんざら無い話じゃないと思えるぐらい、良くできてるし、原節子クライマックスの決意表明のセリフなんか「ローマの休日」のアン王女の最後のセリフとほんと似ているんです。
原節子はオードリーとだっていい勝負です、佐野周二、佐田啓二もいい味出しています。
新藤兼人のオリジナル脚本は、フランク・ダラポンにだって引けをとりません。
何より、木下恵介のこのセンスはビリーワイルダーに負けていないと思います。 

いっそ日本の「ローマの休日」と言わせて頂きましょう。

物語のあらすじは、華族の令嬢である池田恭子(原節子)が斜陽となった一家の為に、新興成金の自動車工場の青年社長(佐野周二)と見合いをし、無事結婚できるかというようなお話です。


このストーリーの中には、第二次世界大戦後の日本の世相が織り込まれています。
この映画は戦争が終結して4年後だと申しましたが、激しい社会的な構造変化の真っ只中で、貴族のお嬢さんが身売りしたとか、成金が名家の令嬢を愛人にしたりというような悲劇がソコココにあったそうで・・・・
そういう点では、 もう過去の価値観は壊れて、金銭以外は信じられなくなっている世の中です。

また、この頃の結婚は基本的に、親同士が決めた相手と結婚するというのが、当然のことでした。
それに背けば勘当されても文句は言えません。
結婚とは当人同士の愛情によって成立するものではなく、基本的には家と家との結びつきです。
そういう意味では古い因習は変わらず有って、人々を縛っています。


しかし、そんな時代背景にあって、この映画では名家のお嬢様に対して一貫して伝える、成金の青年実業家のメッセージと基本的なスタンスに感動します。
彼は言います。
「僕はあなたを見た瞬間に好きになった。あなたは、どうなんですか?僕を好きですか?」
「心から好きでなければ、不幸になります。」
「お金はいくらでも援助します。でも結婚は気持がなければできません。」
・・・・・今現在聞いてもシビレるセリフです。

終戦直後の焼け野原の時に、お金が全てで、結婚と恋愛が結びついていない、この時代に「お金じゃない、結婚に必要なのは愛だ」という言葉を聞いた観客の驚く顔が目に浮かびます。

そして、映画のストーリーは「愛」をハッキリ口にしない「お嬢様」の為に、「僕よりもっとふさわしい人がいる。」からと、青年はお金の援助だけをして身を引くのです・・・・・ただ「お嬢さんに乾杯」をして。

この映画には、戦後の荒れた世相に向けて、木下監督が訴えたい高い理想が決して押しつけがましくなく、表現されていると思います。
戦後4年の混乱期に、あえて、こんな都会的なロマンチック・コメディーを撮ったのはホントに奇跡だと思いますし、この映画を苦しい中で作り上げた日本映画界に心から賛辞を贈りたいと思います。

そんなこんなで、もう一度言わせていただきますが、いっそ日本の「ローマの休日」と呼ばせて頂きましょう。

ここから先は「こんな古い映画なんて興味ないよ」なんていう皆様に向けて、少しでも興味を持っていただこうという、この映画に出ていた日本の映画スターのご紹介です。

この映画に出ていた、昭和の大女優原節子
小津安二郎監督に出ている彼女の美しさは、神々しいほどです(『晩春』レビュー
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もう一人の主役佐野周二は、善良な青年の役が良く似合います。
sanosyuuji.jpgご存知かとも思いますが、この方は「関口宏」のお父さんです。ですから当然「関口知宏」のお祖父さん。
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この映画には、主役の佐野周二の弟役で「佐田啓二」が出ています。佐田啓二は二枚目の役が良く似合います。
sadakeiji.jpgこの人の長女が「中井貴恵」、息子さんは「中井貴一」です。
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だんだん面白くなってきましたので、この映画を離れて昭和のスター列伝を続けたい所ですが・・・・またの機会に。

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posted by ヒラヒ・S at 22:57| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは!モノクロは深みがありますね( ̄▽ ̄)原節子さんて聞いたような?中井貴一さんて小泉今日子さんとドラマに出ていた人でけっこう好きな俳優さんです「最後から二番目の恋」昔は結婚は家と家・・窮屈な時代ですよね。
Posted by ともちん at 2016年08月20日 23:13
>ともちんさん
ありがとうございますm(__)m
「最後から二番目の恋」ありましたね〜(^^)
古い映画で恐縮です・・・日本映画史を代表する監督と俳優陣ですので、何となくオススメしたくなったということですm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年08月20日 23:45
まさかのウソを混ぜて来るとは〜Σ(゚Д゚)
真面目にそうなんだ〜と読んでいました(笑)
昔の映画の方が深みがあって良さそうですね。
Posted by いごっそ612 at 2016年08月21日 06:24
>いごっそ612さん
ありがとうございます(^^)
ウソつきで申し訳ありませんm(__)m
木下恵介監督はファミリードラマの元祖のような方で、歴史的な一本としてご紹介です。
Posted by ヒラヒ・S at 2016年08月21日 17:47
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