2016年10月10日

『バベットの晩餐会』不毛の地と神の聖晩餐会・あらすじ・感想・解説

祝祭に招待します。




個人的な評価:★★★★★ 5.0

この映画を見ると幸福になります。
同時に敬虔な気持ちを持つのはなぜでしょう。

バベットの晩餐会あらすじ
プロテスタント牧師(ポウエル・ケアン)の二人の娘、マーチーネ(ヴィーベケ・ハストルプ)とフィリパ(ハンネ・ステンスゴー)は19世紀後半のデンマークの片田舎の漁村に住んでいた。若き日マーチーネは青年士官ローレンス(グドマール・ヴィーヴェソン)と、フィリッパは高名なオペラ歌手アシール・パパン(ジャン・フィリップ・ラフォン)と恋に落ち、男達は求愛する。しかし、二人は神に仕える道を選び、父が亡くなった数十年後もその仕事を続けていた。そんなある嵐の夜、マーチーネ(ビアギッテ・フェザースピール)とフィリパ(ボディル・キェア)のもとに、オペラ歌手パパンの紹介状を持ち、バベットという女性(ステファーヌ・オードラン)が訪ねてきた。パリ・コミューンで家族を失い亡命中の彼女を、二人は家政婦としておくことにした。それから月日が流れ姉妹は、父の生誕百周年の晩餐を行うことを計画する。最近村の人々の間で争いごとが多くなってきたので、この機会に皆の心を一つにしようというのだ。そんな時バベットの宝くじが当たり、バベットは恩返しに晩餐会で料理を作らせてほしいと頼む。豪華な食材をふんだんに使ったバベットの晩餐会は、将軍となったローレンス(ヤール・キューレ)や村人たちをゲストに始まったのだった・・・・・・

(デンマーク/1987年/102分/監督・脚本ガブリエル・アクセル/原作アイザック・ディネーセン)
88年度アカデミー外国語映画受賞作


1987年に公開されたデンマーク映画。
一見地味な映画です。
ハリウッド的なストーリの盛り上げも、派手なアクションもありませんが、静かな陽光のように少しずつ気持ちが暖かくなっていく、そんな映画です。

この物語の中で、明瞭な悪役は一人も出てきません。
事件らしい事件もありません。
babe-fuke.jpgそれでも見ていて退屈でないのは、人々を無言のうちに苦しめる過酷な自然と、その苦しい日々の暮らしをつましく過ごす村人の暮らしが対比として、緊張関係を作り上げてるせいではないでしょうか。

本当に日々の暮らし自体が、過酷な自然に対する人間の小さな勝利を示して、既に感動的です。

こういう生産性の悪い土地では、神というものを拠り所にしなければ、人々は生きていけないだろうなと素直に納得できます。
そして老姉妹は自らの恋も封印して、神に仕える道を選びます。
それは、その村の人々が生きていく為に不可欠な祭祀を担うという選択です。
つまりこの村の人々は、この老姉妹も含め「生きる=命を維持する」という必要最低限の事に全力を傾け、かろうじて命をつないでいるのです。

しかし考えてみれば、過去の歴史の中で「命を維持する」事に不安を持たなくなったのは、先進国では第2次世界大戦後、先進国以外では未だに不安が完全に払拭できてい無いというのが実情です。kiga_4.jpg
人類は「命を維持する」という、その目的を満たすために人類史の99%を費やしてきたのです。
それはギリギリの条件の中で、その日一日が過ぎれば心の底から神に感謝せざるを得ないほど、過酷な日常だったことでしょう。

そういう中で、生きるための糧=食糧が神の恩寵として認識されるのは必然ではないでしょうか。
この映画の中でバベットが集めた、この世界に生まれた最高の素材。
それは等しく神より命を授かった、人間以外の生き物を、人間の為に犠牲にする行為に他なりません。
それは神の作った秩序、生命の連環を完遂することを意味します。
それゆえバベットは敬意を持って調理し、その命の中から最高の滋味を引き出すのです。
バベットの晩餐会メニュー
ウミガメのコンソメスープbabe-supe.jpg
アペリティフ(食前酒)シェリー酒:アモンティリャード (Amontillado)





ブリニのデミドフ風(キャビアとサワークリームの載ったパンケーキ)babeto2.jpg
シャンパン:ヴーヴ・クリコ - 1860年 (Veuve Cliquot)








ウズラとフォアグラのパイ詰め石棺風 黒トリュフのソースbabeto-3.jpg
赤ワイン:クロ・ヴージョ - 1845年 (Clos Vougeot)






季節の野菜サラダ

チーズの盛り合わせ(カンタル・フルダンベール、フルーオーベルジュ)

クグロフ型のサヴァラン ラム酒風味(焼き菓子)baberu-01.jpg

フルーツの盛り合わせ
コーヒー



ディジェスティフ(食後酒)コニャック:
ハイン - フィーヌ・シャンパーニュ (Cognac : Hine - Fine Champagne)

結果として、バベットの作り上げた料理は、命を維持する大事な栄養であるだけでなく、大げさにいえば、神の創り給うた宇宙の調和を現出するものとなるでしょう。
 
この晩餐会が、あたかも宗教行事のように見え、おのずと世界に対して敬虔な気持ちを持たざるを得ないのは、そんな事情によると思うのです・・・・
 
 司祭バベットの祝祭にようこそ。
 あなたのお腹と心を温めます。

劇中歌モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」より、二重唱「Là ci darem la mano(手をとりあって)」



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posted by ヒラヒ・S at 17:53| Comment(4) | TrackBack(0) | デンマーク映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おおっ!☆5とは高評価ですね!
なかなか古い作品知ってますよね〜。
書く前に観て書いてるんですか?記憶で書いてるんですか?
Posted by いごっそ612 at 2016年10月10日 19:57
こんばんは(ФωФ)ちょっとホントに食べたいです🎵やはり一番は食べる事ですよね。この映画は知らなかったですね〜😃ほおお
Posted by ともちん at 2016年10月10日 20:11
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)
この映画を見ると、食べることはお祝いなのだという気にしてくれます・・・・幸福を感じますm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月10日 20:34
>いごっそ612さん
今は古い記事を、ブラッシュアップして再UP中です。
一応書いた記事は、手元にVHS・DVDで置いてありますので、疑問に思った部分は再チェックしています(^^;)
Posted by ヒラヒ・S at 2016年10月10日 20:36
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