2016年11月19日

『ちゃんと伝える』園子温監督の祈りの映画のあらすじと感想

表現者としてのけじめ



評価:★★     2.0点

この映画は、監督「園子温」らしくない映画だと感じる。
いつものような、血とグロと暴力を封印したようなこの作品が表現したかったのは、喪失を受け入れるという静かな諦念だったようにも思う。
ちゃんと伝えるあらすじ
27歳の地方の編集会社に勤務する史郎(AKIRA)は、父(奥田瑛二)が倒れ、入院したというのだ。
父親は高校の教師でサッカー部の顧問でもあった。父は「教育」も「サッカー」もスパルタ式で、史郎は高校で父のサッカー部に入らされ、日々厳しく指導された。そんなことから史郎は、成長した今も父と言葉を交わすこともなく、距離をもって接してきた。
しかし父がガンで病状は楽観的ではないと知り、史郎は毎日病室を訪れ父と会話をすることを決意する。やがて、2人のわだかまりは徐々に解消し、「回復したら、湖に釣りに行く」と約束するまでになる。母(高橋惠子)は、そんな2人を傍らで見守る。だが父の担当医師(吹越満)が、不調を訴える史郎を精密検査した結果、病状が父よりも重いガンだと判明する。その事実を史郎は、両親と幼なじみで恋人の陽子(伊藤歩)には打ち明けられない。史郎は一人思い悩むが、何よりも息子の死を父に看取らせたくないと考えていた・・・・・・・・・

(日本/2009年/108分/監督脚本・園子温)

この映画には、命が喪われることの痛みや惜別が、間違いなく記されている。
更にこの映画の主人公が病を得て、恋人との関係を確認する描写には、命や人の想いの「継承=ちゃんと伝える」ことの重要さが描かれている。

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しかし正直に言えば、今ひとつ胸に沁みない。

それはたぶん監督「園子温」にとって、個人的な物語であるという事情から生じたものではなかったか。
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たとえばこの映画の舞台である豊川市が監督の故郷であるということでも、個人的な物語である事の一端がうかがい知れる。

それゆえ、この物語の中に現れる「父の厳格さ」や「釣竿」や「湖」や「高校時代の部活動」の思い出は、監督の実体験を何らかの形で反映させたものだと感じた。

しかし、その個人的なモチーフは物語のメッセージとして有機的に機能していなと感じる。
けっきょく、この映画に籠められた「亡き人」に対する弔意は、客観的な表現というよりは、主観的な独白として語られていると感じざるを得ない。

作家というものが、個人的な感動や想いを普遍化し、万人に伝わる表現に効率よく変換し伝えるべき存在だとすれば、厳しい事を言えば、職業監督の作品としてギリギリの作品だと言わざるを得ない。
園子温監督の映画だと見れば、彼の本質である過剰なエモーションを封印しているような、この映画を私は評価できない。
園子温監督の過剰な映画の例『冷たい熱帯魚

冷静に考えれば、この脚本の映画は、是枝裕和監督に撮ってもらうべき題材だったはずだ。
それゆえ、映画表現としては★2つとせざるを得なかった。

しかし上の事情は、プロの監督である「園子温」であれば、当然客観的に承知していたはずだ。
いまの日本映画界において、失敗作という債務を背負うことのリスクも承知だろう。

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つまりは、監督生命を賭けてでも「亡父」に追悼の作品を捧げたいという思いに、素直に感動をした。


やはり映画監督という職業にある者にとって、この情と個人的なモロモロを整理するには、映画として表現することが最も正しい行動だったろう。

やはり表現者としては、必要な一本だったろうと私は信じる。

この映画を撮ったことで監督「園子温」は、以前にも増して熱い情熱を「ちゃんと伝える」準備ができたはずだと信じている。

しかし、この映画『ちゃんと伝える』を見て分かったのは、園子温監督の作品に過剰に溢れていた「熱い情熱」とは、その成長を「スポ根」で鍛え上げた「御尊父」の鍛錬の賜物だということだ。
だとすれば、不謹慎といわれようとも「血」と「グロ」に染め上げられた、「熱い過剰な思いの弔い映画」こそ映画監督園子温が「ちゃんと伝える」形として相応しかったとも思うのだが・・・・・・・・・・・・・・・・

園子温監督のドキュメンタリー映画『園子温という生きもの』予告編


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posted by ヒラヒ・S at 16:37| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは(´・ω・`)何という・・息子が先に💦その後オヤジって。お母さんがかわいそすぎますよね。よく考えるなぁ〜こんな事。順番の重さですよね。順番が間違ってるといろんな人が不幸になりますね。真面目映画観たいです♪
Posted by ともちん at 2016年11月19日 18:08
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)先立つというのは、なかなかねぇ〜
実際の映画は、また違う展開を見せるんですが・・・この監督らしくない映画ですm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年11月19日 18:19
園子温監督作でこういうのあったんですね、園子温監督も最近はちょっと暴走気味・・リアル鬼ごっことかかなり酷かったです。原作読まずに作ったもんだからメチャクチャ・・好きな監督さんなので次回作に期待したいですね(*‘∀‘)
Posted by いごっそ612 at 2016年11月20日 15:46
>いごっそ612さん
ありがとうございます(^^)
正直スランプ気味ですよね〜今は剛速球投手から技巧派に転進中なのかとも思いますが、なかなか上手く行っていないデスね・・・
Posted by ヒラヒ・S at 2016年11月20日 17:38
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