2016年12月26日

映画『それでもボクはやってない』司法の闇を暴く!/感想・ネタバレ・あらすじ・結末・意味・解説

それでもこの映画がやったのだ。



評価:★★★★★ 5.0

日本の司法関係者は否定するだろうし、証拠が有るわけでもないが、この映画のせいで裁判員制度が始まったとニラんでいる。
映画中で、裁判の実際や、そこに関わる法曹界の面々が、いかに実世間から遊離しているかが白日のもとにさらされてしまった。
有罪率99.9%という、司法における無謬性の強引な構築の実態が、この映画で露になった。
この異常な村社会によって、法が司られているというのがほぼ事実だというのが、一市民としてはホントに怖い・・・・・・・
それでもぼくはやってない・あらすじ

面接に向かう満員電車で痴漢に間違えられた金子徹平(加瀬亮)は、現行犯逮捕された。徹平は警察署と検察庁での取調べでも、容疑を否認し無実を主張する。しかし受け入れられず、起訴され裁判に付される。徹平にはベテラン弁護士・荒川(役所広司)と、新米弁護士・須藤(瀬戸朝香)がついた。徹平の母・豊子(もたいまさこ)や友人・達雄(山本耕史)、痴漢冤罪事件の体験者の佐田(光石研)も参加し、事件調査や署名活動を開始した。裁判が始まり、弁護士荒川は警察の捜査が不十分であることを立証し、裁判は有利に進んで行ったのだがが、裁判長の交代により事態は予断を許さなくなっていく・・・・・・・・・・

(日本/2006年/143分/監督脚本・周防正行)

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それでもボクはやってない感想・解説
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周防正行監督は、いままでも仏教界、学生相撲、社交ダンスなどマイナーな世界を描いてヒットを飛ばしてきた。
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この人のスゴイ所は、普通の人が知らない情報を拾い上げ、その情報が世間一般の人にはエンターテーメントとして受け入れられると見極める、その眼力にあるように思う。

またその情報を、通常であればドキュメント的に提示しそうなものだが、しっかりと映画の物語として落とし込んで、見る者にドラマとしての強さを伴って伝える能力がすばらしい。
 
そういう力を持ったこの監督が、この映画ではマイナーなだけではなく、タブーともいうべき世界に手を広げてしまった。

sore-sihou.jpg恐ろしい事に国家権力である。
これほど取材が難しい世界はない。
なぜなら役所官公庁は、情報を一般に知らせない事で円滑に運営出来ている面がある。
例えば、この映画で語られているように、刑事事件の99%が有罪になるという情報を聞いただけで、誰もがおかしいと思うはずだ。


soredemo-posu.jpgこの99%の有罪率のカラクリは、司法制度の中にいる人々、裁判官、検事、弁護士、は法曹界という閉鎖社会の中の同僚であるため、例えば検事が起訴した事件を引っくり返すと、その裁判官の評価が下がるというように、その法組織の体系を暗黙の内に守ろうとする過度の防衛本能が原因なのである。

日本の役所組織にこういう例は山ほどあり、その内容を秘匿とまでは言わないまでも、敢えて公開をせずに済むよう、どこが担当部署か分からなくしたり、書類関係を煩雑にしたり、組織的な迷宮を構築して面倒事を極力減らし組織を外部から守ろうとする体質があるのだ。


しかし、これは単にお役所お役人の世界と簡単に言ってすむことであろうか。

実は日本の社会構造全般、日本の全ての組織に共通することだと思えるのである。


つまり、日本人は多かれ少なかれ所属する組織の中で、組織を守る為にこの映画の司法制度と似たような行動様式を持ってはしないか。

sore-hiza.jpgたぶん大多数の日本人は、集団を守るために個人の意思を犠牲にする事で、組織=社会を円滑に運営してきたのだ。
そのシステムが決して悪いばかりだとは思わないが、社会から敵対視された個人にとっては絶望的なシステムである。

つまり社会全体が、組織=集団の和を乱さないという行動様式を個人に求めているのに対して、真逆の行動を取るという意味を考えてみるべきだ。
たぶん日本社会で個を主張することがどれほど困難か、等しく日本人であれば過去に経験をしているであろうし、想像するだに恐ろしい事態だと了解されるであろう。

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少なくとも普通に日本社会で育って来た人間であれば、社会=集団に従いなさい、全体の和を乱す行動は慎みなさい、自己主張をするより協調性を優先しなさい、という教育を受けているはずだ。

そしてまた日本人はこの社会的要請に実に忠実に従う。
これほど善良従順な民族が地球上にいるかと、朝方4時に車も誰もいない交差点で赤信号を待っている日本人をみて、心の底からいじらしくなる

この教育の行きつく先が、小はサービス残業という組織に対する奉仕であり、その最大値こそ、第2次世界大戦時に日本軍で見られた、玉砕であり、特攻隊であったのだと思わざるを得ない。


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よき日本人とは、為政者・支配者にとっては、扱いやすく、どんな要求にも従う、従順なコマであった。
その個人というコマを、先の大戦で見るように、為政者は平然と使い捨てたし、これからも使い捨てるはずだ。

sore-taitei.jpgなぜなら、組織に反抗するような日本人はいないし、”正しい”日本人であれば組織に献身することこそ喜びだと感じるはずなのだから、日本の為政者は、国民を国家に奉仕させることに、多文化ほど痛痒を感じないですむ。

こう考えて来たとき日本の組織に対する個は、旧日本軍軍人やこの映画の様に、いつも悲劇的な結末を迎えざるを得ないのであろうか?

 
私はそうは思わない。
sore-sihoumega.jpg絶対に日本においても、個人が「組織=社会」と戦って勝てる道が有ると、信じる。

例えば、周防監督とこの映画が成し遂げたように、個が勇気を持って組織の不合理を糾弾しさえすれば、組織は「裁判員制度」の如く、自ら開示せざるを得なくなるのだと信じたい。

そして、個が社会に在るその不合理を追求しなければ、日本は容易に全体主義に陥ることは、過去の歴史からも明らかである以上、自戒を込めて、個は社会と対決する覚悟を持つべきなのである。

その対決の一端が、その勝利の証明こそ、この映画だと信じる。
 
再び期待も込めてこう言おう。
「裁判員制度」を実施させたのは・・・・
日本の司法関係者は否定するだろうが―
それでもこの映画がやったのだ。」と・・・・

加瀬亮インタビュー

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以降「それでもボクはやってない・ネタバレ」を含みます。ご注意下さい。
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裁判の証拠として、現場状況の再現ビデオが提出され、徹平の犯罪が不可能だとの証明がされたと思われた。
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更には事件の目撃者の女性が見つかり、無罪も証言した。
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そして、ついに判決の日を迎えるのだった・・・・
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それでもボクはやってないラスト・シーン
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しかし、判決結果は有罪。
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判決を聞きながら徹平は、裁判所は真実を明らかにする場所ではなく、とりあえずの判決を下す場所でしかないことを悟る。
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そして、判決を不服として控訴した。
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このラストの、司法関係者に対するメッセージは強烈だ。裁判官自身、自らの罪と罰を、こんな裁判の形で誰かに決められたいと思っているのか?という問いである・・・・・・

この結論を見て、不満を感じる観客も多いだろうと思う。
しかし、そのフラストレーションこそ、周防監督の目指した物だったろう。
この映画は結末で、司法制度の現実を見る者に突きつけ、そこで感じる不充足や憤懣の強さによって、即ち日本の法制度がどれほど国民感情から乖離しているかを証明して見せたのだ。


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posted by ヒラヒ・S at 18:29| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは〜「スペック」の加瀬亮さんだったですね(´・ω・`)そうそう。観てないですけど・・満員電車の中では両手を上に上げるっていうのはこの映画から?始まったのでしょうか。実際皆やってるのかな。女のチカンはどうなるのでしょう・・・公平に。
Posted by ともちん at 2016年12月26日 19:22
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)加瀬亮さんでした。いかにも悪い事できなさそうな顔です・・女のチカンも告発すれば同様の罪になるはずです・・・女性専用車両を増やしてもらえば、お互い気を使わなくても・・・ねぇ(^^;
Posted by ヒラヒ・S at 2016年12月26日 20:46
加瀬亮の代表作ですね!
なかなかいい映画でした。評価も★5で間違いなしですね!
他人事ではない、話ですよね〜。
Posted by いごっそ612 at 2016年12月27日 16:37
>いごっそ612さん
ありがとうございます(^^)満員電車では手は常に上です(^_^;)
更に月3千円で入れる、弁護士保険に入ろうかどうか検討中ですm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年12月27日 18:11
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