2017年01月18日

是枝裕和『ワンダフルライフ』無私の奉仕・あらすじ・ネタバレ・ラスト

人生の輝く時を求めて



評価:★★★   3.0点

太宰治が小説で書いていた挿話がある。
「難破して泳ぎ疲れて、辛うじて取り付いた岬の岩から、陸に一つの窓が見え、そこには幸福な家族団らんがあった。遭難者は声を上げ助けを求めることで、その団欒を壊したくなくて、そっと海の中に沈んでいった・・・」というものだ。

この映画は、実にそんな「無私の奉仕」を描いた映画のようにも思う・・・・・

ワンダフルライフあらすじ

月曜日の朝、木造の事務所に職員たちが出勤してきた。所長の中村(谷啓)、職員の望月(ARATA)、川嶋(寺島進)、杉江(内藤剛志)、アシスタントのしおり(小田エリカ)。彼らの仕事は、死者たちの人生の中で天国へ持っていく想い出をひとつ選ばせることだった。今回は22人の死者たちが施設にやってて、職員が面接を開始する。死者たちは、戦争で米軍の捕虜になった時の白米の味を選んだり、子供の出産を選んだり、幼年期の思い出や、セスナの飛行を選んだりする。しかし、渡辺(藤武敏)という老人は、自分が生きてきた証が分からないと悩む。伊勢谷(伊勢谷友介)という若者は、想い出を選べないという。水曜日になり、想い出を決める期限の日となったが、渡辺はまだ迷っている。そんな彼に人生をビデオで振り返り、想い出を選んではどうかと望月は提案する。木曜日は各々の思い出の、撮影準備が進み、金曜日には撮影が行われた。渡辺も最後に妻(香川京子)と映画を観に行った帰り、二人で座った公園のベンチの思い出を選んだ。土曜日。いよいよ、上映会の日だ。死者たちは、再現された自分たちの想い出の映画を観て天国へと次々に旅立って行った・・・・その姿を見ながら職員の望月は一つの決心をしていた・・・・・・

(日本/1999年/118分/監督脚本・是枝裕和)
<ワンダフルライフ出演者>

ARATA(望月隆)/小田エリカ(里中しおり)/寺島進(川嶋さとる)/内藤剛志(杉江卓郎)/谷啓(中村健之助)/内藤武敏(渡辺一朗)伊勢谷友介(伊勢谷友介)/吉野紗香(吉野香奈)/香川京子(渡辺京子)/由利徹(庄田義助)/白川和子(天野信子)/原ひさ子(西村キヨ)/横山あきお(守衛さん)/志賀廣太郎(山本賢司)/阿部サダヲ(青年・渡辺一朗)/石堂夏央(娘時代の渡辺京子)/山口美也子(食堂係)/木村多江(食堂係)/平岩友美(受付係)
<ワンダフルライフ受賞歴>

第46回サン・セバスチャン映画祭国際映画批評家連盟賞受賞、第16回トリノ映画祭最優秀脚本賞受賞、第20回ナント三大陸映画祭グランプリ受賞作品

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ワンダフルライフ感想
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wanda-gaki.pngこの、死者を現世から来世に橋渡しする施設を描いたファンタジーが表しているのは、人生に素晴らしい瞬間が人には一つは有るというメッセージだったろう。
またこの世に何一つ良い思い出がなかったとしても、自らの知らないところで他者の幸福に寄与していると描かれていると感じた。

実際この映画のARATA演じる主人公は、
22才で戦争で死んだ自分に素晴らしい
思い出がないということで、成仏出来ず現世と来世の中間で迷っている。


つまりは、現世と来世に至る過程で、現世の輝く時を「唯ひとつ」選ばねば成仏できないという設定なのだ。
そんな中で、何もいい思い出がなかったという者もいれば、いい思い出ばかりで一つなんて選べないという者もいる。

wannda-arata.jpeg
しかし最終的には、人生の輝く時を一つ携えて、それ以外の記憶を全て捨てて、現世から離れていくのだ。

そんな、この映画のラストを見れば、やはり人生は素晴らしいのだ語っているように感じる。

一つの輝く時を持ち得たことで、「一個の人生には必ず意味がある」というメッセージがここには有るに違いない。
それはこの主人公にしても、自己の人生が無為で無価値だと思い、素晴らしい想い出など無いと思っていても、最後に他者に対して何らかの歓びを与えていたのだと気づく点で明らかだろう。


この主人公の「無私の奉仕の幸福」というテーマは、この作品の原型として「素晴らしきかな人生(イッツ・ワンダフル・ライフ)」と同様の人間賛歌であると感じる。
関連レビュー:『素晴らしき哉、人生!』
フランク・キャプラ監督、ジェームス・スチュアート主演
アメリカ映画の古典的名作



この映画のエモーショナルな説得力を見れば、普通であれば、星4つは付けているだろう。

しかし、私はこの作品以降の是枝作品を、すでに知ってしまった。
wannda-koreeda.jpgその冷たいまでのリアリズムの中に日本人の心性を繊細に浮かび上がらせた、「是枝調」作品の完成度を経験してしまった。

正直この映画は、その是枝様式と、スタンダードな映画様式の中間で成立しているように思う。


結果として、是枝様式のリアリティは、このファンタジックな物語から遊離し、ファンタジーの力を削いでいると感じたため評価を下げた。

しかし、この映画には間違いなく是枝様式のスタイルが萌芽しており、そのリアリティー表現の過渡的作品として、見逃せない一本だと思う。


また、「海街ダイアリー」以後の「是枝様式」が、一種のマンネリズムを感じさせるとき、その閉塞性を打破する「是枝の虚構世界」というものの可能性を問い直すための、最良のテキストだと信じる。

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以降「ワンダフルライフ・ネタバレ」を含みますので、ご注意下さい。
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じつは、この施設で働く職員は皆、想い出を選べなかった死者たちで構成されていた。
主人公望月は特攻隊兵士で、自らの人生自体に幸福を見出せなかったが、唯一の甘い思い出は、渡辺の妻京子だった。
実は、彼女は出征前の望月の「いいなずけ」だったのだ。
望月は渡辺のビデオの片づけをしていて、渡辺からの手紙を見つけた。
そこには、渡辺の妻・京子が死んだ許嫁・望月に対する愛を知っていたから、彼女との日常を想い出として選べなかったが、しかし望月と出会いそれを乗り越えられたと書かれていた。

そんな渡辺が選んだのは、最後に妻(香川京子)と映画を観に行った帰り、二人で座った公園のベンチだった。
wand-wata-las.png

この手紙を見て望月とかおりは、すでに死んでいた京子の思い出を確認したところ、そこには出征前の望月とのデートのシーンが映されていた。
wanda-wata-tuma.png
実は渡辺が最後に妻(香川京子)と映画を観に行った帰り、二人で座った公園のベンチとは、出征前の望月と過ごした公園のベンチだったのだ・・・・・・・・・・・・

そして望月は、京子との思い出を自らも持ちつつ、思い出の撮影シーンはひとり思い出のベンチに座り、この施設の人々が自分を撮影しているシーンを眺めているものだった。
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彼は、この施設で人の幸せを助けた自分を、人生の想い出として天国へと旅立って行ったのだろう。

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「ワンダフルライフ・ラストシーン」
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月曜日になり、新たな一週間が始まる。
天国に行った望月の代わりに、もう想い出を選ばなかった伊勢谷は施設に残った。
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アシスタントのしおりは職員となって、新たな死者たちを待っていた・・・・・・
wanda-siori.png

この映画のラストは、施設の者が現世に喜びを見出せていなくとも、他者の幸福に寄与する「他者に対する献身=無私の奉仕」によっても人は生きていけるという物語なのだと解釈した。


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posted by ヒラヒ・S at 20:52| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは(´・ω・`)おお〜何かストーリーがいい感じです!これは観たい♪しかもオチがまたいい感じ(笑)人生で何か1つくらいかぁ〜私だったら映画を知った事ですね。あの世でも観たいですからね〜(笑)
Posted by ともちん at 2017年01月18日 21:08
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)私が持っていくとしたら、シネマ・パラダイスの最後でしょうかねぇ・・・・
一本だけ映画をあの世に持っていけると言われたら、迷うな〜
Posted by ヒラヒ・S at 2017年01月18日 21:25
是枝裕和監督なら間違いはないと思ったんですけどね〜★3とは普通?っすかね。未見なので迷いましたが、スルーしときます。
Posted by いごっそう612 at 2017年01月19日 05:48
>いごっそう612さん
ありがとうございます(^^)いい映画ですが是枝監督のもっといいのを知っているので〜★3です。この★3は3.5で、でも4とは言いづらいという・・・・・・他の是枝作品を知らなければ4を付けてるのは間違いないんですが・・・・・・
Posted by ヒラヒ・S at 2017年01月19日 08:56
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