2017年02月23日

『猿の惑星』(1968)人種差別にも見える映画・あらすじ・ネタバレ・ラスト

誰が「猿」をころしたか?



評価:★★★★  4.0点

この映画のラストを、何の予備知識もなく見た人は本当に幸福だったろうな〜と思う。
もし未見で、予備知識もないのであれば、今すぐレンタル・ビデオ店に走ることをお勧めする。

猿の惑星・あらすじ

ケネディ宇宙基地から発射された宇宙船は1年6ヵ月後、だが光速に近い航行により実時間は2000年という年月を経て、一つの惑星に着陸した。宇宙船には隊長テイラー(チャールトン・ヘストン)とドッジ、ランドンらの宇宙飛行士が乗っていた。地表に到達した時、湖に着水し宇宙船は破損して沈没してしまう。3名はさまよい歩いた果てに、初めてほかの人間を見たが、彼らは原始人のように裸で皮を衣服としていた。そこへ、服を着て馬に乗り銃を手にした猿たちが現れ、人間を捕獲していく。喉を撃たれたテイラーも捕らわれの身となる。捕まえられた人間の中にノバ(リンダ・ハリソン)という女もいた。この惑星では、猿が高い文化を誇る高等動物で、人間は口もきけない下等動物だった。テイラーは外科医の手術を受けた後、ジーラ博士(K・ハンター)と出会い、そして彼女はテイラーの知能が高いことに驚き、恋人の考古学者コーネリアス博士に伝えた。2人はテイラーにとっての味方となったが、この惑星の最高権力者のザイアス博士(モーリス・エバンス)は、テイラーを危険視し、脳葉切除と去勢手術を命じた。それを知ったテイラーは脱走したが、捕まってしまう・・・・・

(原題Planet of the Apes/製作国アメリカ/製作年1968/112分/監督フランクリン・J・シャフナー/脚色 ロッド・サーリング、マイケル・ウィルソン)

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猿の惑星・感想・解説

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1968年に公開の、この映画を最初に見たのはいつのことだろう。
すでに確かな記憶が無い位の、昔のTV放送だったように記憶している。
しかし今回あらためてみてみると、その画面から出てくる不穏なオーラとでも呼ぶべきものに圧倒された。
ま〜実は新シリーズの『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』を見て気になって、再度オリジナルシリーズをもう一度見たという流れだった。
猿の惑星:創世記(ジェネシス)予告編


更にはティム・バートン版の『猿の惑星』もあるが、これはラストが個人的には気に入らない・・・・
ティム・バートン版『猿の惑星』(2001年)予告

マット・ディモンも悪くはないがチャールトン・ヘストンの貫禄を前にすると・・・・

やはりオリジナルの衝撃力、古典作品の良い所は、見るたびに違う顔を現す点にあると再認識したのだった。
オリジナルを最初見た時には、スペクタクルなアクションに興奮し、次に見たときには、その逆転世界の構図に潜む、社会の権力とは何かという事を思った。

saru-linda.jpg
しかし今回オリジナル・シリーズ全体を見てみると、結局ハリウッド的「柳の下にはドジョウが何匹」シリーズになってしまったなぁと思った。

じっさいこのシリーズは3作目以降は無理やり作られていくものだから、徐々につじつまが合わなくなって、最後は絵に書いたようなタイム・パラドックスを残して消滅する。
それはそれとして、SFファン的にはデストピア(=反理想世界)映画として、その誕生から終焉までを、ま〜行き当たりばったりではあるし発端はドコ?という疑問は残るのだが、壮大に描ききったその力技に拍手を送りたい。

猿の惑星・時代背景

そしてまた、今回見て感じたのはこの映画シリーズが、実に当時のアメリカ社会の現実を反映した映画だったかということだった。
この1960年代から’70年代は、アメリカは対外的にはベトナム戦争を抱え、国内的には公民権運動の盛んだった時期だ。
当ブログ関連レビュー:
映画『卒業』
ベトナム戦争反対を描いた
アメリカンニューシネマ

実際、アメリカ国内でも軍隊が出動するぐらい、黒人達マイノリティの抵抗は激しかったのである。
当ブログ関連レビュー:
映画『招かざる客』
人権問題を描いた古典的名作
人種差別問題をまとめています。


つまり当時のアメリカ白人を代表するハリウッド・スター、チャールトン・ヘストンが猿(黒人・アジア人などマイノリティ)に支配される恐怖とは、そのままアメリカ白人社会の当時の恐怖を反映したものだと思えてならない。

チャールトン・ヘストンの紹介

チャールトン・ヘストン(Charlton Heston, 1923年10月4日 - 2008年4月5日)はアメリカ合衆国・イリノイ州エヴァンストン(Evanston)出身の俳優、社会運動家。身長191cm。妻は女優のリディア・クラーク、長男は映画監督のフレイザー・ヘストン(Fraser Heston)。
略歴
Charlton_Heston.gifイリノイ州の中心部シカゴの北に隣接するエヴァンストンに生まれ、ノースウェスタン大学卒業後はアメリカ陸軍に入隊し、第二次世界大戦には爆撃機の搭乗員として参戦していた。
退役後1950年に最初の映画に出演、『ミケランジェロの彫刻のように美しい』と称された肉体美と精悍なマスク、格調高い演技力でいくつもの名作に出演し、1959年には映画『ベン・ハー』でアカデミー主演男優賞を獲得した。ハリウッド黄金期後期を支え、日本人にも馴染み深い大作やSF映画の主演も務めた。1966年から1971年までは、俳優組合の会長をつとめた。
saru-char-Zaius.jpg演じる役柄、出演作も幅広かったことで知られ、とくに当たり役となった歴史劇『十戒』や『ベン・ハー』、『エル・シド』、『華麗なる激情』等では歴史上の英雄を、『大地震』、『ハイジャック』等に代表されるパニック・アクションのタフガイな主人公をそれぞれ演じ分けた他、更には『猿の惑星』や『ソイレント・グリーン』などの娯楽作、異色作にも登場しイメージを一新した。1980年代以降は『ピラミッド』などのオカルト的作品の悪役で性格俳優の一面も見せ、90年代も個性的な名脇役として親しまれ晩年まで出演を続けた。『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001年)ではゼイウス(猿側の将軍セードの父)役でカメオ出演した。(Wikipedia引用)(右写真:チャールトン・へストン演じるゼイウス)


そんな時代が反映されたからこそ、映画自体に緊迫感と迫力が生まれたに違いない。
saru-bouling.jpg
チャールトン・ヘストンはマイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンバイン』でインタビューされている通り、全米ライフル協会の会長を務めるタカ派ではある。

しかしチャールトン・ヘストンの名誉のために言えば、実はマーティン・ルーサー・キング牧師らと共にワシントン大行進に参加した、公民権運動家でもあった。

saru-benha-.jpgそんな、彼がこの映画に潜む人種差別の影を感じ得なかったのも不思議だが・・・・・
たぶん、『ベン・ハー』、『エル・シド』の裸で鞭打たれる彼のアタリ役の、変り種としか考えてなかったのかもしれない・・・


何にせよ素直に文脈を読めば、白人社会の崩壊の恐怖を象徴しているこの映画は、猿に擬されたマイノリティから見れば、本当に屈辱的な映画だろう。

USA-flag.png優れた白人を暴力で支配する野蛮人という構図を、ここまでアカラサマに提示されて面白いはずが無いだろう。
しかし、ここで描かれる白人的選民意識というものは、しばしばハリウッド映画の中に無意識のうちに表現されてきたように思う。

この意識で作られる物語は主人公が「正しく美しい」という前提に立っている。
主人公が正しく美しいのであれば、敵は「悪く醜い」ということで、猿として表わされた。

USA riot.jpg
この映画の制作年代は、アメリカ的「真・善・美」が揺らいでいた時期だったことの現れてして、「偽・悪・醜」の敵に打ち負かされる強迫観念が映画を支配している。

結果的に独善的なこの映画に通低する主張「悪に征服される善」の恐怖は、結局うやむやでアイマイなタイムパラドックスの中で、出口を見出せない。

saru-pos.jpg
それはこの矛盾の理由が、アメリカ白人支配者層の自らを絶対的正義として反省が無い事に起因しているのに違いない。

自らの掲げる正義が敵にとっても真実なのかという、その検証が無ければこの矛盾は解消し得ないだろう。
しかしこの映画の動機が何であれ、このシリーズ全体の中に「デストピア」に対する恐れと憧れが、万人に通じる秀逸な形で定着していると思う。

この異世界の物語が示した世界観の構築の壮大さを思えば、この独善的な主張を語らせるだけのために使うには、惜しい素材だ。
それゆえ新シリーズの展開は期待したい。

新たなシリーズにおいては、アメリカの意識の変化をぜひ見たいものだと期待している。

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以降の文章には

猿の惑星・ネタバレ

を含みますので、ご注意下さい。
特に、この映画に関しては、ご鑑賞後にお読み頂くことをお勧めします。
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(あらすじより続く)
テイラーは捕まって査問会にかけられるが、猿のジーラとコーネリアスは、テイラーと現地人女性・ノバを逃がすことを決心し、砂漠地帯へ連れ出すが、その後を猿の指導者ザイアス博士が追って来る。
その砂漠地帯は、猿のコーネリアス博士はひそかに発掘した人骨と遺物により、数千年前の人間が、猿より高度の知能と文化を持っていたことを知っていた。指導者ザイアス博士はこの事実を知っていたが、この説を認めれば下等動物人間が猿を支配していたこととなり、社会の混乱と、自らの学説が否定される事を恐れ、この学説を認めなかったのだ。
テイラーは逆にザイアス博士をライフルで制圧し、自らの自由を勝ち取った。

テイラー:俺達の後を追うな。俺は、銃の扱いがうまいぞ。/ザイアス:もちろん、わかっとる。生涯ずっと、ワシはお前が来るのを待ち、同時に恐れていた。 まるで死のように。/テイラー: なぜ?初めから、俺を怖がってたんだ、博士。俺が悪意がなく、知性もあると分かっていたのに、アンタは俺を嫌い恐れ続けた。なぜだ?/ザイアス:君が人間だからだ。そして、君は正しかった。私は常に人間を知っていた。証拠から言えば、ワシは人間の知恵が、愚かしさと共に在るのだと信じている。人間の感情は、人間の脳を支配してしまう。人間は、自分自身さえ含めて、その周囲の全てに闘いを挑む、好戦的な動物なのだ。/テイラー: 何の証拠だ?洞窟では武器一つ見つかってないだろ。/ザイアス:立入禁止区域はかつて楽園だった。君の種族がそれを砂漠にしてしまったんだ。ずっと昔に。/テイラー:最初に戻ったようだ。俺にはまだ理由が分からない。この惑星で人間より猿のほうが進化してしまった。そして世界は悪くなった。そのパズルの1ピ−スが見つからない。/ザイアス:それを探すな、テイラー。お前は知ったら、きっと後悔するぞ。

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猿の惑星・ラストシーン

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テイラーとノバは新天地を求めて旅立つと、はるか向こうに自由の女神を発見する。
この猿の惑星は地球だったのだ。テイラーが宇宙船で飛び立ったあと、地球には核戦争が起こり、人類はほとんど死滅し、代わって2000年後に猿が支配するようになったのだった。

【意訳】ティラー:なんて事だ!俺は戻ってた!地球だ!いつだって、その危険は有ったが・・・とうとうやってしまったのか。狂った奴らめ!核戦争を起したなんて!クソッたれども!みんな地獄に堕ちるがいい!

もう一度言いますが、この映画のラストを、何の予備知識もなく見た人は本当に幸福だったろうな〜と思います。

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posted by ヒラヒ・S at 17:07| Comment(4) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは〜( ̄▽ ̄)「猿の惑星」はもうテレビで放映されてますが、私はオチだけ知ってました(笑)実は地球だった!という💦人間は傲慢な生き物なんですかね。
Posted by ともちん at 2017年02月23日 18:25
この映画のラストシーンは本当に名場面ですね!
おっしゃる通りに予備知識なしで見たら最高ですね。
古くてもこの映画は観ています。
Posted by いごっそう612 at 2017年02月23日 19:42
>ともちんさん

ありがとうございます(^^)オチだけ知ってたんですか💦それも、勿体ない!シリーズ通して見ると、グズグズになっていきます。
Posted by ヒラヒ・S at 2017年02月23日 20:14
>いごっそう612さん
ありがとうございます(^^)この映画のラストシーン、キレが良いですよね!実は、チャールトン・ヘストンの『ソイレント・グリーン』という映画のラストも凄いです!
Posted by ヒラヒ・S at 2017年02月23日 20:20
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