2017年03月04日

『ビフォアミッドナイト』現実の恋を生む力・あらすじ・ネタバレ・感想・ラスト

倦怠期のカップルの処方箋



評価:★★★★  4.0点

この映画を撮ったリチャード・リンクレーター監督の作品は、現実と虚構世界との間で無視し得ない作品世界を構築する映像作家だと思います。
この映画も、間違いなく「虚構=映画」の中に、現実世界を見事に再現した一作ではないでしょうか・・・

ビフォア・ミッドナイトあらすじ


ウィーンに向かう列車の中で出会い、その9年後パリで再会し再び恋に落ちた二人。今作は更にパリから9年経過した、小説家ジェシー(イーサン・ホーク)と環境活動家セリーヌ(ジュリー・デルピー)の結婚生活を描く。
ジェシーの元妻と住んでいる息子ハンク(シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック)を、ジェシーはシカゴに帰すため空港に送りに来た。ジェシーとセリーヌ、その双子の娘エラ(ジェニファー・プライア)とニーナ(シャーロット・プライア)そして息子ハンク(シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック)も含めて、友人の招きを受けギリシャでバカンスを過ごして来たが、ハンクは一足早く帰る予定だった。名残惜しげなジェシーは、ハンクの演奏会を見にシカゴに行くと言うと、母親がナーバスになるから来なくていいと言われる。
befo-mid-car.jpgジェシーは、ハンクの成長期に共に暮らせない事を悔やみ、帰りの車内でセリーヌにグチる。会話中でジェシーはシカゴへの引越を提案し、環境活動家として問題を抱えていたセリーヌは絶対に無理だと答え、シカゴに行くなら分かれるという。
別荘では主の老作家パトリック(ウォルター・ラサリー)とその友人である老婦人ナタリア(ゼニア・カロゲロプールー)、孫アキレアス(ヤニ・パパドプロ)とそのガールフレンド・アナ(アリアン・ラベド)、ジェシーの友人ステファノス(パノス・コロニス)とその妻アリアドニ (アティーナ・レイチェル)で、人生や恋愛の話を交わしながら宴を楽しむ。
bemid-sundown.gifステファノスの計らいで、一夜を近くのホテルで二人水入らずで泊まることになった。ホテルまでの道を、二人語らいながら、教会に立ち寄ったり、海辺で夕日を眺めたりと、ゆっくりとした時間を過ごす。
ホテルの部屋に入り、久しぶりに子供のいない時間を楽しむ二人だったが・・・・・・・

(原題 BEFORE MIDNIGHT/製作国アメリカ/製作年2013/108分/監督リチャード・リンクレイター/脚本リチャード・リンクレイター、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー)

========================================================

ビフォア・ミッドナイト感想・解説

========================================================

冒頭でも述べたとおり、この監督リンクレーターが追求するテーマの一つに、虚構の中に現実世界を取り込み「本当のような嘘を構築する」というものがあるように思います。
それが最も端的に出たのが、『6歳のぼくがおとなになるまで』で、この映画はなんと6歳の少年が18歳になるまでの12年間、毎年撮影し続けたものです。
それは、すでに「虚構=嘘」の為に、現実が従属し奉仕する姿にすら見えました。
当ブログ関連レビュー:
『6才のボクが大人になるまで』
リチャード・リンクレーター監督の傑作
現実に優先する映画のお話

そんな「現実を虚構」に従わせた作品として、この『ビフォア・ミッドナイト』も在ると思います。
aftemid-timeCheng.jpg
なぜなら、この映画も明らかに現実世界を物語に取り込んで成立しているからです。

それはこの映画の発端が、今作から18年前に撮られた『ビフォア・サンライズ』であり、その9年後に撮られた『ビフォア・サンセット』であり、そして今回の『ビフォア・ミッドナイト』へとつながり、それはそのまま現実世界の時間経過と映画内の時間経過がシンクロしている事で明らかでしょう。
つまり、現実時間が映画の中でも経過しているのです。
このシリーズは、18年前に生まれた恋を現実世界の時間を取り込んで、そのつど映画として発表しのでした。
(右写真:上『ビフォア・サンライズ』中『ビフォア・サンセット』下『ビフォア・ミッドナイト』)

その映画スタイルはあくまで現実味・リアリティーを追求した会話劇で、まるでレストランに行ったら、彼らが脇で語り合っているような、そんな日常的な光景を描いたドラマです。

befo-kiss.gif
そして、その現実と見間違えるような前二作のドラマで語られたのは、今や「恋愛」に夢も希望もロマンも無く、運命で「恋愛」は生まれないという宣言だと感じました。

それは、徹頭徹尾、人間が努力により作り上げた「恋」の姿だったと感じられます。
そして見終わって感じたのは、「恋愛」から夢やロマンが失われていても、人は現実世界で「恋愛」をする価値があるという感慨でした。

当ブログ関連レビュー:
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』
当三部作のオープニング作品
リアル恋愛映画のあらすじと感想


当ブログ関連レビュー:
『ビフォア・サンセット』
恋愛と映画のルネッサンス
シリーズ第二作目あらすじ・感想・解説

そしてこの映画も、シリーズの伝統にのっとり、やはり現実的で夢も希望も無い映画でした。

befMid-pos.jpg
夫婦にしろパートナーにしても、9年一緒に暮らしたカップルであれば、この映画で起るイザコザは、実に見に覚えのある、人ごとではない話ではないでしょうか。

このリアリティーに富んだ表現は、さすがにこの俳優、この監督の演出力の証明でしょう。
それゆえこの映画のドラマは、9年目のカップルが倦怠や相互に不満を溜め込んでいる現実を反映して、見ていてストレスとプレッシャーすら感じるドラマとなっています。

長期に渡りカップルであれば、悲しい事ですが、必ずお互いに募る不満が爆発する時が訪れます・・・・・
この映画はそんな倦怠カップルの一夜を描いています。

それゆえ現実世界のケンカを反映して、
ミモフタも無い、ブザマな、泥沼の、ついには相手の全否定へ向けた総攻撃にまで至ります。

それはまるで、ケンカ・紛争・戦争の本質を描いたロマン・ポランスキー監督の『大人のけんか』を彷彿とさせます。
当ブログ関連レビュー:
『おとなのけんか』
紛争の本質を語った映画
あらすじ・感想・解説


そして、双方の心に壊滅的な痛みと、カップル存続にとっての危機的な状況を迎えます・・・・・・
ここまでは現実世界の離婚カップルそのままの展開であり、流れです。
しかし、具体的には申し上げられませんが、この映画はそんな現実にジェシーが働きかけ、現実をより良いものにしようと努力をします。
Before-Midnight.jpg
このジェシーが「作家=虚構の住人」である事を思い出してください。
つまりこの映画は、『ビフォア・サンセット』でジェシーが小説によってセリーヌを引き寄せたように、「虚構」が現実に働きかけ、過酷な現実といえども良いものに変革しえるのだと語っているように思えてなりません・・・・・・・

そんな現実を変え得る「虚構」を「」と呼ぶのは、キザでしょうか?
イーサン・ホークとジュリー・デルピーのインタビュー

========================================================
スポンサーリンク

========================================================
========================================================
以降

『ビフォア・ミッドナイト』ネタバレ

を含みますので、ご注意下さい。
========================================================
========================================================
========================================================

ホテルに入った二人は、互いの言葉の中に現状の不満の種を見出し、相互に相手を責め始める。
ジェシー「俺は人生の全てを捧げたんだ、でも与えた以上の見返りを受けてない」
beMid-notlager.gif

セリーヌ「世界は理性的な男の愚かな決断で台無し」
afMid-manshit.jpg
もう泥沼ですな、・・・・・・・・・このあと怒ったセリーヌは部屋を出て行く。

========================================================

『ビフォア・ミッドナイト』ラストシーン

========================================================

ジェシーは彼女に未来から手紙が来たといい、それを読み説得を試みます。
おとぎ話を信じずに現実を生きようと、俺は関係を良くしたい、無条件で愛する、君を笑わせる、君の文句に耐えると。そして言う・・・・・・・
「真実の愛はここにある、これが現実の人生だ、完璧じゃないかもしれないが、これが現実だと」
aft-mid-realrife.gif


やはり現実の人生とは痛くとも辛くとも、自ら一つ一つ積み上げる以外に、幸せは作り上げられないという話かと思うのでした・・・・・


スポンサーリンク
posted by ヒラヒ・S at 18:39| Comment(4) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは( ̄▽ ̄)でた!(笑)私はハッキリとジェシーの味方です。セリーヌはずっと争いをふっかけて結婚生活を続けると思います。日本人の感覚だとジェシーはいい夫です(笑)2人は合わないと思います。4作目で判断したいですけど(笑)
Posted by ともちん at 2017年03月04日 19:17
おろろ恋愛系来ましたか!珍しい様な気もします。
ところでPOV方式のホラーでは超怖いと思ったことが無いのですが、普通のホラーでは『屋敷女』みたことがありますか?これがまさしく最恐ホラーでしたので、お暇があったら観てみて下さい。
Posted by いごっそう612 at 2017年03月04日 20:35
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)書きたいと思っていて、忘れていましたが、ともちんさんで思い出しました。(笑)ふっふっふっ結婚はこんなもんですゼ・・・・どっちが良いも悪いもない、お互いりくつがあってガマンしあって・・・・・・そして長く続くと空気のようになるのではないでしょうか?
Posted by ヒラヒ・S at 2017年03月04日 20:52
>いごっそう612さん
ありがとうございます(^^)この監督の恋愛モノは甘っちょろくないので好きです(笑)『屋敷女』ありがとうございますm(__)m早速今日ツタヤに行ったんですが、『デビル・インサイド』、『ハングマン』が無かったという・・・・ヘタレな店で「REC」借りました『屋敷女』も次チェックします(^^;
Posted by ヒラヒ・S at 2017年03月04日 21:08
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/447523671

この記事へのトラックバック