2017年05月26日

『レインマン』自閉症の兄とのロードムービー/解説・感想・サヴァン症候群

『レインマン』感想・解説編


原題 Rain Man
製作国 アメリカ
製作年 1988
上映時間 134分
監督 バリー・レヴィンソン
脚本 ロナルド・バス 、バリー・モロー
原作 バリー・モロー

評価:★★★★  4.0点


この映画は自閉症・サヴァン症候群患者の、特異なキャラクターとその天才性を世に知らしめた一本です。
また、トム・クルーズとダスティン・ホフマンの熱演により、アカデミー賞他、各国の映画賞に輝きました。
それと同時に、この映画はアメリカの古き良き時代を懐かしむ作品かとも思いました。
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『レインマン』予告



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『レインマン』感想



この映画はいろいろと優れた点が多いかと思いますが、個人的にはまず脚本が素晴らしいと感じました。
reinman-pos1.jpgダスティン・ホフマン演じるレイモンドのキャラクターが強烈過ぎて、かすみがちですがこの映画はトムクルーズ演じるチャーリー・バビットが主軸の作品だと思います。
この作品の主人公、トム・クルーズ演じるチャーリーから見た時、わがままで孤独な彼が、兄レイモンドと出会い旅することで、最後には人間的に成長する物語と見えます。
それは、兄レイモンドにしても、他者との関係を取り結べず、頑なに自分の習慣に固執する姿とは、実を言えば、この兄弟チャーリーとレイモンドは共に、自己中心的で他者に無関心な、相似の性格を保持していると感じます。
つまりはこの物語は、自閉症的なキャラクターが他者との関係を構築するストーリーだと思うのです。
そんな自閉症的な性格とは、レイモンドはともかく、チャーリーの場合は生まれてすぐ母を亡くし、父とは距離があったという、孤独感から端を発したものでした。
孤独で寂しくて、想像上の「レインマン」を頼りに少年時代を過ごしたという過去から、他者と関係を持つ術を成長過程で学べなかった結果だと思えるのです。

rainman-posyoko.jpgそんなチャーリーの家庭環境、親の不在とは、現代アメリカ社会の離婚率の高さを考えると、現実的な問題として当時から現れていたはずです。
そう思えば、この映画が語るのは、現代の崩壊した家庭環境を再び修復しようとした、
古き良きアメリカ家庭を復活させたいという試みだったのではないでしょうか。

そんな冷たい現代社会から、ハートウォーミングな時代「古き良きアメリカ」への回帰が、この映画のそこここに埋め込まれていると思います。
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『レインマン』解説

名車ビューイック


この映画の古典回帰を象徴するのが、車です。
この映画のチャーリーにとって、車とは父親の象徴だと思うのです。
なぜなら父親が大事にしていた車、ビューイック・ロードマスターを勝手に持ち出して運転したことが、父親との決定的な断絶を生んだのだと劇中で語られています。
1949年型ビューイック・ロードマスター・コンバーチブル
Rain-Buick.jpg1949年戦後初のフルモデルチェンジを受け、ホイールベースと車体の長さを短くし、その重量の増加をわずかに抑えることに成功しました。 最大の変化は、販売パンフレットにも記載があるツーピースの曲面ガラスの風防でその見た目から観測車と呼ばれたそうです。

映画では、当時8,095台の限定生産で直列8気筒、「ファイヤーボール・エイト」エンジンをつんだ世界初のダイナフロー(オート)トランスミッションを採用した特別な車だと語られています。
なお撮影に使われた、この車は2012年12月14日テキサス州ダラスでオークションにかけられました。
その値段は80,000ドルで始まり、落札値は170,500ドル、110円換算で1億8千万円!だったそうです。凄い車です。

そんなこの車、ビューイックが父親の遺産として残されたことを考えれば、この車が父を表す記号なのは間違いないでしょう。

そして映画の冒頭では、チャーリーがランボルギーニを港で受け取るシーンから始まり、自分はフェラーリに乗る姿が描かれます。
rainman-countach.jpg
ここで描かれたものとは、チャーリーが父と同義である車から離れられずに、その人生の糧として車を扱っているという執着ではないでしょうか。
しかし、その車はクラッシックカーとは真逆の、最新のイタリア車で商売にしているのです。

reinman-tandem.jpgここにはアンビバレンツな、憎みつつ執着せざるを得ない肉親との関係が、車に置き換えられて巧妙に語られていると思います。
そんなこの車と旅をするという事は、亡き父の愛に身をゆだねている事と同義だったと思います。
それゆえ、旅の終わりにはその愛を信じられるようになったのではないでしょうか。

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『レインマン』受賞歴

第61回(1989年)アカデミー賞:作品賞、 主演男優賞、 監督賞、 脚本賞
第39回(1989年)ベルリン国際映画祭:金熊賞
第46回(1988年)ゴールデン・グローブ:作品賞(ドラマ)、 男優賞(ドラマ)

主演男優賞に輝いたダスティン・ホフマンは、演劇学校の名門アクターズ・スタジオの出身です。
関連レビュー:
ハリウッド映画とアクターズ・スタジオ『メソッド演技』
ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジャック・ニコルソンを輩出した名門・俳優養成所、演技の秘密

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『レインマン』解説

ルート66


この映画では、最初飛行機で旅行をしようとし、レイモンドが受け入れられず、ハイウェーで移動しようとしますが、それすらも恐いといわれ、ついに旧国道ルート66をのんびりと走ることになります。
ルート66
Rain-route66.gif映画で走ったのは、オハイオ州シンシナティ(地図だとセントルイスの右、車で5時間程度の距離)からスタートしてラスベガスを経由、ロサンゼルスをゴールとするルートです。

この歌にも歌われた「ルート66」は、今は高速道路の整備で廃れてしまいましたが、アメリカでは「マザー・ロード」と呼ばれるほど、アメリカの古き良き時代を象徴する道だそうです。

国道66号線(こくどう66ごうせん、U.S. Route 66)は、アメリカ合衆国中東部のイリノイ州シカゴと、西部のカリフォルニア州サンタモニカを結んでいた、全長3,755km(2,347マイル)の旧国道。1926年指定。州間高速道路の発達によりその役目を終え、1985年に廃線となった。
ルート66(Route 66)とも呼ばれ、大陸を横断するこの道はアメリカ西部の発展を促進した重要な国道であり、映画や小説、音楽などの中に多く登場し、今なおアメリカのポップ・カルチャーの題材にされている。
国道66号線の衰退への道は1956年、ドワイト・アイゼンハワーの連邦補助高速道路法に調印したことによって始まった。以後、この法律により、アメリカ合衆国内の主要な国道は次々に州間高速道路に置き換わっていった。(wikipediaより)
歌:ジョン・メイヤー『ルート66』

飛行機や高速道路など、現代的な交通手段が、事故が多いとレイモンドは主張します。
それは、現代社会の危険を象徴するもので、それゆえ映画のテーマに沿って古き良き「マザーロード=母なる道」に回帰するのだと描かれているのでしょう。

つまりは、生き別れていた兄を乗せて、父親の形見の車で、母の道をひた走る姿とは、やりすぎだと思うくらい「古き良き懐かしのアメリカ=幸せなアメリカの家庭」のイメージを追っている描写だと思います。

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『レインマン』解説

キム・ピークとサヴァン症候群


そして、そんなノスタルジックなこの作品にとって、ダスティン・ホフマン演じるサヴァン症候群とはどういう意味を持つでしょうか。
サヴァン症候群(サヴァンしょうこうぐん、英語: savant syndrome)とは、知的障害や発達障害などのある者のうち、ごく特定の分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す。
イギリスの医師ジョン・ランドン・ダウン(英語: John Langdon Down)は1887年、膨大な量の書籍を一回読んだだけですべて記憶し、さらにそれをすべて逆から読み上げるという、常軌を逸した記憶力を持った男性を報告した。その天才的な能力を持つにもかかわらず、通常の学習能力は普通である彼を「idiot savant」(イディオ・サヴァン=賢い白痴【仏語】)と名付けた。(wikipediaより)

サヴァン症候群は自閉症や発達障害を持つものが必ずなるわけではなく、原因となる理由もわかっていないそうです。
サヴァン症候群患者キム・ピーク
下はサヴァン症候群患者、キム・ピーク。この映画の原作者は、この人物と会ってこの物語を書き上げたそうです。
【大意】しばしば人の心は、55歳のキムピークの例のように不思議な働きをすると言う。世界でも有名なサヴァン症候群の精神障害と天才性を追った。
記者:この前に住んでいたアパート郵便番号10003の住所は?/キム:イースト・サイド下。イースト・サイド下/記者:私の事務所は30303はどこ?/キム:アトランタ。
ナレーション:キムは恐るべき頭脳の力を見せつけた。彼は、レインマンのレイモンド・バフェットの実在モデルだ。(映画挿入:電話番号を暗唱し、昨日電話帳を覚えたと言うシーン)ダスティン・ホフマンはこの役でアカデミー主演賞に輝き、この白痴天才という現象を世界的に知らしめた。ダスティンはキムの後をつけて歩いて、我々と共にハリウッドで6時間を過ごした。そして彼は鼻に触って、キムに僕はスターかもよと言いました。
記者:私は1962年5月9日生まれだ。/キム:金曜日だ。

ナレーション:キムは白痴天才という脳の障害を持って生まれた。しかし彼の障害は驚くべき写真記憶という贈り物を、その他サヴァン達と同様もたらした。その機能の状態は不完全な解明しかされてない。キムの脳は左脳が無いか一つの脳になっている。一つの半球は分離してなく、脳梁が存在しない。それで彼は分類機能と感情機能が彼には無い。その代わり45%〜50%程度の脳で、我々の98%を補っている。
ナレーション:全ての可能性に反して、キム・ピークは本を読むことを学び、そして知識に対する飽くなき飢えが彼の世界を支配している。
記者:最後のソヴィエト連邦の議長は?/キム:ゴルバチョフ/記者:社会的指導者として最も在位が長かった者は。ちょっと難しいかな、ピピンの有名な息子で解るかな。/キム:シャルルマーニュ大帝
市の図書館はキムの第二の家で、そして、9000冊の本を読んだというのがその証拠だ。幸運なことに図書館には60万冊の蔵書があり、それで彼はしばらくは忙しいでしょう。


そして、この映画のレイモンドは自閉症だと語られています。
自閉症(じへいしょう、英語: Autism)は、社会性の障害や他者とのコミュニケーション能力に障害・困難が生じたり、こだわりが強くなる脳機能障害。先天性の要因が大きい。
言語の発達の遅れ、対人面での感情的な交流の困難さ、あるいは全くの無関心、反復的な行動を繰り返す、行動様式や興味の対象が極端に狭い、常同的に奇声を発する、手をひらひら動かす、極度の自己中心的思考になる、物を列や幾何学的に整然と配置する、被害妄想を持つ、ストレスによる他害行為などの様々な特徴がある。

自閉症とは「意思伝達などコミュニケーション能力の困難」「対人関係の困難」「物事への興味と感心が狭く特定の事にこだわる」などを特性とする先天的な脳機能障害だそうです。

rainman-kimdas.jpgそんな他者と関わりを持てないレイモンドは、23年前に施設に入れられてから、弟にもその存在を告げられずに、ひっそりと生きてきました。
それは、ガレージにほとんど動かされずしまわれていた、ビューイックの姿にもかぶります。
(右:キム・ピークとダスティン・ホフマン)

そう考えれば、レイモンドとは古い世代、ビューイックに象徴される父の世代を代表して、この映画に現れているようにも思います。
rainman suits.jpg
それは旧世代が、能力は有りながら子供達に愛情を示せない。
そんな「意思伝達などコミュニケーション能力の困難」ゆえに、世代間の断絶が生じ「親から子」に愛が伝わらなかったのではないかという、問いかけのように感じます・・・・・・・・・・

つまりは、この映画は古い世代が愛を現代の子供たちに伝える映画なのです。
そして、世代間の愛の伝承こそが「古き良きアメリカの家族」を再び取り戻す道だと語っている映画だと思いました。

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posted by ヒラヒ・S at 16:49| Comment(6) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは〜( ̄▽ ̄)ラストシーンが切なかったです。レイモンドはさっさと元に戻るというか・・チャーリーはいろんな感情が溢れていたのに。トムさんも良かったですね(笑)
Posted by ともちん at 2017年05月26日 19:29
>ともちんさん
ありがとうございます(^^)ラストはいろいろ思うところがあります・・・・ちょっと、当時は描きがたい部分もあったかな〜と。
ネタバレで、そこら変化かせて頂きますm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2017年05月26日 22:11
私もかなり記憶力はいい方なのですが、到底サヴァン症候群ではありません。もっと能力が高かったら天才だったのに…(笑)
ま、中途半端な記憶力で結局凡人なんですね。残念です(´-ω-`)笑
Posted by 尾崎杏子 at 2017年05月26日 22:15
>尾崎杏子さん
ありがとうございます(^^)記憶力良いだけで尊敬です。私は白痴天才の天才がないという(T T)特にスマホで調べるようになってから、名前が本当に出てこなくなりました(^^;
Posted by ヒラヒ・S at 2017年05月26日 22:36
うちの子サヴァン症候群です。
世界中の国旗を見ただけですべて言えます。小人図鑑のこびとも全て言えます。でも、授業には全然でないんすけどね(;'∀')
Posted by いごっそう612 at 2017年05月28日 05:58
>いごっそう612さん
ありがとうございます(^^)
お子さん天才ですね!記憶力がいいのは将来活きますよ〜。授業も興味さえ持てば・・・・(^^;
パソコン復帰オメデトウございますm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2017年05月28日 19:54
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