2017年07月21日

映画『サヨナラ』(1957年)日本娘と米兵の恋/感想・解説・ホワイトウォッシング

サヨナラ(感想・解説 編)


原題 Sayonara
製作国 アメリカ
製作年 1957
上映時間 147分
監督 ジョシュア・ローガン
脚本 ポール・オスボーン
原作 ジェームズ・A・ミッチェナー


評価:★★★   3.0点



この1957年に作られた映画は、美しいけれども陳腐なメロドラマのように思えるかもしれません。
しかし戦後の混乱の中で、アメリカ軍兵士と日本娘の恋が実際どうだったのかを探求してみると、なかなか複雑な状況がありました。
この映画は名優マーロン・ブランドが出演し、アカデミー賞にも、助演男優賞にレッド・バトンズ、日本人役者として2017年現在でも唯一のオスカー保持者、ナンシー・梅木がこの映画で助演女優賞に輝いたほど、ハリウッド的な理想を謳った作品ではあります。

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『サヨナラ』予告


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『サヨナラ』出演者

ロイド・グルーバー少佐(マーロン・ブランド)/ハナオギ(高美似子)/アイリーン(パトリシア・オウエンス)/ナカムラ(リカルド・モンタルバン)/ジョージ・ケリー(レッド・バトンズ)/カツミ(ナンシー梅木)/マイク・バレー大尉(ジェームズ・ガーナー)/ウエブスター将軍(ケント・スミス)/ウエブスター夫人(マーサ・スコット)/フミコ(久場礼子)/クラフォード大尉(ダグラス・ワトソン)

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『サヨナラ』感想

奇妙な日本



正直に言えば、この映画には日本人から見れば奇妙な日本が、間違いなく描かれています。
sayo_hanaogi.jpgいろいろと不思議な日本を見せつけられるのですが・・・・・・
中でも、この映画のヒロイン"ハナオギ"という名前からして不思議な存在が、奇妙なことをしてくれます・・・・・・・

このハナオギは、マツバヤシ歌劇団のトップスターなのですが、そのハナオギが歌劇団の宿舎に帰る帰途がファンタスティックです。
sayo-skd-back.png

日本庭園の橋の周囲に、なぜか稚児さん風の女の子が並び、わらべ歌を歌ったり・・・・・・・

さらにはハナオギが腕の上に、尻尾の長い鶏「尾長鳥」をとまらせたり・・・・・・・・・
sayo-onaga.jpg

実はこのマツバヤシ歌劇団は、松竹歌劇団(SKD)の舞台シーンを流用し、ヒロインのハナオギをはめ込んだようです。
松竹歌劇団(しょうちくかげきだん)は、1928年から1996年まで日本に存在したレビューおよびミュージカル劇団。
出演者が女性で占められる「少女歌劇」の系譜に属する。松竹を母体として東京・浅草に本拠を置き、1930年代には東京一のレビュー劇団として、兵庫県宝塚市を本拠とする宝塚少女歌劇(宝塚歌劇団)と人気を競った。太平洋戦争を経て、戦後は本拠地・国際劇場の大舞台を活かした「グランド・レビュー」を売りに人気を保ったが、1960年代ごろより徐々に低迷、1990年代にはミュージカル劇団へ転向するも定着せず、1996年をもって解散した。「Shouchiku Kageki Dan」の頭文字をとったSKDの通称でも知られた。大阪府に現存するOSK日本歌劇団(旧・大阪松竹歌劇団)は姉妹劇団である。(wikipediaより)
2017年OSK日本歌劇団【新橋演舞場】レビュー夏のおどり 告知映像

ですから、この映画のレビューシーンも当時日本で繰り広げられていたモノには違いありませんが・・・・・
多少「エキゾチズム=日本情緒」を追加しているのではないかと感じます。
もっとも当時の実際の舞台を見ていないので何とも言えませんが・・・・・・・・

何にせよ、アメリカ人から見て印象的な、日本的な異国情緒がこの作品のそこかしこに埋め込まれ、その点が日本人からすると違和感となっていると思います・・・・・・

Nakamura.jpgそれを象徴するのが、歌舞伎役者のナカムラです。
なんと主人公が日本に来た冒頭に登場する、この歌舞伎役者を白人のリカルド・モンタルバン演じているのです。

そして、おかしな日本語で話す姿にビックリします。
これはまさしく、ホワイトウォッシング、「白人化(漂白)表現」に間違いないと思い、あ〜また変な日本を見せつけられるのかとゲンナリしたのでした・・・・・・

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『サヨナラ』感想

ホワイトウォッシング



最近映画の世界で耳にする言葉に、ホワイトウォッシングという言葉があります。
映画におけるホワイトウォッシング(えいがにおけるホワイトウォッシング、英語: Whitewashing)は、アメリカ合衆国の映画業界で白人以外の役柄に白人俳優が配役されること。映画黎明期より度々白人俳優が白人以外の役に配役されてきており、映画の歴史と共にある。日系アメリカ人活動家のガイ・アオキは「アフリカ系アメリカ人がホワイトウォッシングの対象であるのと同様にアジア系民族も経験している」と語った。ネイティヴ・アメリカンにも同様のことがいえる。(wikipediaより)


単純に言えばホワイトウォッシングとは、本来は黒人であったり黄色人種の役どころを、白人が演じることを指しています。
Film-katinko.jpg
古くは単純に該当するマイノリティーの俳優がいなかったり、知名度の低い俳優では映画の成功が見込めないなどの理由で、有名な白人スターを使って来たというハリウッド的な慣行がありました。

それが、問題視されるようになったのは、白人が他人種を演じることの是非と共に、結局のところそのマイノリティーの描かれ方が、しばしば白人から見た侮蔑的でステレオタイプな存在として描かれてきた点に問題があるように思います。
典型的なホワイトウォッシング
『ティファニーで朝食を』(1961年)のミッキー・ルーニー演じる、日本人"ユニオシ"

出っ歯でメガネの典型的な日本人像を演じ、笑いを生み出してくれています。
しかし、ミッキー・ルーニー自身演じた事を後悔しているとの言葉を語っています。
関連レビュー:オードリーの名作
『ティファニーで朝食を』
名曲ムーンリバーの調べ
ティファニー宝飾店


例えば、2017年公開された実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』。
この映画のヒロイン草薙素子を、スカーレット・ヨハンソンが演じたことで、ホワイトウォッシングだと、海外では批判があったようです。
『ゴースト・イン・ザ・シェル』予告

しかし、そもそも『ゴースト・イン・ザ・シェル』の少佐は人工ボディーですし、日本人が造形すれば白人風に成りそうだし・・・・・・
更に正直いえばスカーレット・ヨハンソンのファンだし・・・・・・・・

関連レビュー:センスオブワンダーの行方
実写『ゴースト・イン・ザ・シェル』
SF映画の歴史
日本アニメの系譜

話が横に逸れましたが、何を言いたいかといえば、ある人種のキャラクターを他の人種が演じることが問題というよりも、そこに表現された人種的な差別感、レイシズムが問題なんだろうと思うのです。
sayo-asian.jpg
そして、『ゴースト・イン・ザ・シェル』にはそれを感じませんでしたし、ミッキー・ルーニー演じる、日本人"ユニオシ"はそれを感じるということでした。

結局問題なのは、人種差別が在るか否かであり、そこに敬意が在れば個人的には誰が演じても良いと思うのです。
逆に言えば、アジア人をアジア人種が演じても、そこに侮蔑的な表現があれば許容し難いと思います。

ホワイトウォッシングではないが、差別的な表現
『素敵なかたおもい』(1984)からロング・ディック・ドング

しかし笑いは誇張から生まれるとすれば、差別かどうかの判断も難しいとも思いますが・・・・


こんな侮蔑的な表現は、ハリウッドばかりではなく、例えばフランスの映画監督ジャンリュックゴダールの『気違いピエロ』にもあったりします。
ベトナム戦争の寸劇

ノート:観光客は現代の奴隷だ/アメリカ船員:おいそこで、何やってんだ!/マリアンヌ:チクショウ!アメリカ人だ!/フェルディナン:大丈夫、計画変更だ。簡単な事さ。ドルをくれたくなるような劇を見せてやろう。/マリアンヌ:どんな劇?/フェルディナン:分らないけど、何か奴らがすきそうな物を。/マリアンヌ:分かった、ベトナム戦争よ。/フェルディナン:分った。ベトナム戦争だ。/ノート:アンクル・サムの甥VSアンクル・ホーの姪/アメリカ水兵:ああ好きだね、とってもいいよ、好きだ、いいよ、素晴らしい。/フェルディナン:俳優達に少しばかりドルを。/アメリカ水兵:知ってるかい、ベトナムはハード・・・/マリアンヌ:ピエロ、心配しないで。こうやって取るのよ/アメリカ船員:おい、何するんだ!/マリアンヌ:ケネディー長生きしてね!/フェルディナン:奴等をまいたぞ、裏に行こう/マリアンヌ:嫌よ、踊りに行くのよ。
ここには、ベトナム戦争を引き起こしたアメリカに対する怒りが、侮蔑表現につながっているように感じます。

関連レビュー:ヌーヴェル・バーグの反米映画
『気違いピエロ』
ジャン・ポール・ベルモンドとジャン・リュック・ゴダール監督
ヌーベル・バーグの傑作


そしてこの映画『サヨナラ』は先に述べたように、ホワイトウォッシングもあれば、ハリウッド的な日本風景の典型も描かれ、日本人的な目線に立てば奇妙な日本が展開されています。

sayo-nakamura.jpgしかし、ホワイトウォッシングの張本人、歌舞伎役者ナカムラのリカルド・モンタルバンの歌舞伎を見たときに、その堂々とした踊りに驚きました。
腰の座った日本舞踊に、その修練は決して簡単なことではなかったろうと、個人的には感動しました。

F-japan.jpgそして、映画の中には「能」も出れば「文楽」も出てきます。
そして文楽で描かれた心中劇が、映画の中でしっかり消化されているのも、日本文化に対する敬意と感じます。
ここには多少ピントがずれていたとしても間違いなく、日本に対する敬意があり、大げさに言えば「他文化」に対する尊敬が根底に合ると思えてなりません。

この映画『サヨナラ』で語られたのは、かつての敵であっても―
どれほど文化が違おうとも―
尊敬と愛があれば共に生きて行けるのだという「理想」だと思うのです。
その美しく、気高い「理想」を高らかに謳いあげた見事さを思えば、尾長鳥のミョウチクリンさや、白人の歌舞伎役者の珍奇さをあげつらうのは、島国根性的な矮小な精神を示していると我が身を反省したのでした・・・・・・・・・

本音を言えば、この映画のヒロインが白人であっても、個人的には全然問題ありません。
実を言えば、この映画のハナオギ役のオファーは、
当初オードリー・ヘップバーンに出されたそうです。

見たくないですか?
オードリー・ヘップバーン演じる日本歌劇団のトップスター。

非国民と言われようとも、私は見たかった!!!!

最もそれは日本にいるからで、外国で侮蔑的に"ユニオシ"と呼ばれる経験をしていたら、やはりこういう表現は止めてほしいと思うかもしれませんが・・・・・・

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posted by ヒラヒ・S at 17:15| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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