2017年07月29日

『リリイ・シュシュのすべて』痛みの仮想と現実/詳しいストーリー・あらすじ・出演者

『リリイ・シュシュのすべて』(ストーリー・あらすじ編)



英語題 all about lily chou chou
製作国 日本
製作年 2001
上映時間 146分
監督 岩井俊二
脚本 岩井俊二
音楽 小林武史

評価:★★★★  4.0点



この美しさと痛みが共存した映画をどう語ればよいだろう。
岩井俊二監督作品に通底する溢れる叙情性が、この映画では思春期の少年の痛みにシンクロして、マゾヒスティックな美を生んでいるように思う。
この作家の感性によって描かれた、現代日本の美学が「滅びの予兆」としてある事が証明されたようで、胸苦しさと切なさを覚える。
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『リリイ・シュシュのすべて』あらすじ



コンピューターの画面に流れる、チャットの文字。
歌手リリイ・シュシュのファンサイト『リリフィリア』で管理人フィリアが打ち込む。
「彼女が生まれたのは1980年12月8日、ジョン・レノンが射殺された日と同じ。この偶然の一致に意味はない。僕にとって意味があるのは、彼女が誕生したという事だけ。」

lyly-itihara .jpg

そう仮想世界に発信したフィリアとは、現実世界では中学二年生の蓮見雄一(市原隼人)という少年だった。

蓮見雄一は悪友2人と電車で鞄を盗んだり、CDショップでCDを万引きしたりしていた。
その盗品を仲間達と、中古ショップに持ち込み換金していた。
Lily-erot.jpg

その中古ショップで、リリイ・シュシュのポスターを見つけ、そのポスターを貰う。
実は中学校で級友からいじめにあっている雄一にとって、リリイ・シュシュだけが彼の救いだった。
そんなある日掲示板『リリフィリア』に青猫というハンドルネームの参加者が増えた。
フィリアは青猫を歓迎し、交流は徐々に深まり、信頼し共鳴するようになる。

lili-yobidasi.png
しかし現実では、雄一はリリイ新譜CDを万引きしようとして、店員に捕まる。
中学の女性担任が店に謝罪し、学校に戻ると母親が呼び出されていた。

lili-hosino.pngその夜雄一は、イジメの首謀者の星野修介(忍成修吾)に呼び出された。
取り巻きを連れた星野は、学校に密告しただろうと雄一を責め、リンチにかける。
これまでも星野に金を渡すために、雄一と彼の仲間2人は盗みや万引きをしていたのだった。


雄一が中学一年の時に、物語は遡る。
lyly-nyubu.jpg
中学に進級した星野と雄一は同じ剣道部に入部した。

星野は小学校の時いじめられていた過去を持っていたが、しかし雄一とはウマが合い、自宅へ泊まるような間柄になる。
そして剣道部の5人は2年へと進級し、夏休みの沖縄旅行を計画するが、費用のあてはない。
そんな彼らの前で、他校の不良達が大金をカツアゲしている場に遭遇し、星野がどさくさまぎれにそれを横取りした。その金で5人は沖縄へと向かった。
lili-oki.png

沖縄の島巡りを楽しむ5人は、ガイドの中年男と4人の娘と、そして行く先々で顔を合わせる高尾(大沢たかお)という青年と共に、旅行を楽しんだ。
lili-drown.png
そんな旅行の最中、星野が海で溺れ高尾の人工呼吸で九死に一生を得る。

しかし高尾青年が自動車事故に合い、意識のない彼を救急ヘリで病院へ搬送した。
そして海を渡る船の上、星野が突然立ち上がって盗んだ金を海へばらまき、1人で異様な笑みを浮かべる。
「1999年の夏休みを境に、世界が灰色になった。」と、フィリア=蓮見雄一は書き込んだ。

lili-cut.png新学期になり星野は、クラスを牛耳っていた不良とケンカし、勝利する。
以来、星野は不良達を従え、学校を支配しだした。

雄一たちも星野の命令には絶対服従を強いられていた。
そんな星野の犠牲者の1人が津田詩織で、暴行され淫らな写真を撮られたため、援助交際を強要されその稼ぎを星野に納めさせられていた。
そんな彼女の監視役として、雄一は彼女と共に行動するよう命令された。

援助交際を終え2人家に帰る途中、詩織は雄一に金を投げ、雄一を蹴り殴った。
そして川へと飛び込んだ詩織は、ずぶ濡れになりながら泣いていた。

雄一は、フィリアとして書き込む「僕にとってリリイだけが、リアル」だと。
そして青猫に呼びかける「リリイの物語を聞かせてくれ」と。


lyly-piano.jpg
中学では、合唱コンクールがあり、クラスごとに練習が始まっていた。

雄一のクラスでは、彼も思いを寄せているクラスのアイドル的存在の久野陽子(伊藤歩)がピアノを弾く事になった。
lili-kannzaki.pngしかし、日ごろから久野を敵視している、クラスを仕切る女子・神崎すみか(松田一沙)とその仲間達が練習を拒否した。
久野は曲をピアノ無しでアレンジし好評価を得るが、ボスの神埼はその編曲が久野の手によると知って、敵意を募らせた。


lili-tandem.pngそんな時、合唱コンクールのリーダーを務めた佐々木と一緒に帰った陽一は、佐々木が津田詩織が好きだと打ち明けられ、詩織との仲を取り持った。

また雄一は、星野から久野陽子を工場跡地へ誘い出し、罠にかける手引きをしろと命令を受けた。
lili-Fact.png

そこには神埼がおり、工場内で不良達にレイプされる久野陽子の姿を、窓から嘲るように見ていた。
神埼はその工場が星野の父のもので、夏休みに会社が倒産し、彼の家族が離散したと話した。
雄一は好きな久野が犯されている工場の外で、ただ泣いていた。
lili-cry.png

「無限のループを堕ちていく。誰か助けて」とフィリア=雄一は、書き込んだ。
それに対し「僕も同じ痛みの中にいるから」と、青猫は呼応した。


14歳の少年少女達には、更なる過酷な運命が待ち受けていた・・・・・・・・・・・

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『リリイ・シュシュのすべて』予告

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『リリイ・シュシュのすべて』出演者

蓮見雄一(市原隼人) /星野修介(忍成修吾)/久野陽子(伊藤歩)/津田詩織(蒼井優)/佐々木健太郎(細山田隆人)/神崎すみか(松田一沙)/多田野雅史(郭智博)/清水恭太(笠原秀幸)/飯田待典(五十畑迅人)/寺脇仁志(勝地涼)/仲貝弘和(内野謙太)/犬伏列哉(沢木哲)/池田先輩(高橋一生)/蓮見静子(阿部知代)/島袋(市川実和子)/高尾旅人(大沢たかお)/星野いずみ(稲森いずみ)/レストランの中年男(杉本哲太)/小山内サチヨ(吉岡麻由子)/恩田輝(田中要次)/中古CDショップ店長(上田耕一)/パーマ屋の客(鷲尾真知子)/黒崎大(ジャイアント茶所)/津田の客(武発史郎)/シーサー(カッチャン)/オタク(樋口真嗣)/岩崎(藤井かほり)/ふゆ(中島唱子)/神田先輩(南イサム)/クリオネ(中村太一)/辻井影彦(西谷有統)/黒崎伸一(山内秀一)/加藤(田中丈資)/フィリア派(久我未来)/リリイ派(原田優一)/笹野涼香(児玉真菜)/生田恵(相坂真菜美)/磯川良子(吉川明)/東海林真澄(北原ヨリ子)/井沢紀子(伴杏里)/村上奈津美(田口未央)/杉沢弥生(宇野まり絵)/遠藤佐知 (馬場喬子)/マリン海遊従業員(広田愛)/マリン海遊従業員(ヘレナ)/マリン海遊従業員(中村綾乃)/三味線奏者(大枡美穂)
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2017年03月25日

『椿三十郎』ネタバレ・ラスト・結末/黒澤時代劇のルーツを求めて

椿三十郎(ネタバレ・ラスト・結末 編)


評価:★★★★★ 5.0点

実は黒澤監督の時代劇とは、過去のチャンバラ映画とは隔絶した表現がされていました。
そのルーツはハリウッドの西部劇にあると感じます。
この作品『椿三十郎』が最もそんな特徴を表わしていて、見過ごせない一本です・・・

またこのラストには、黒澤リアリズムの本質が隠されていると思います。
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以降

椿三十郎・ネタバレ

を含みますので、ご注意下さい。
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しかし、黒藤邸に詰めていた次席家老の黒藤(志村喬)竹林(藤原釜足)らが臆病なのを利用し、三十郎は隣に責め手が控えていると伝え、斬り込み合図の椿の花を流させる事に成功した。



合図を見た若待の斬込みで、城代家老睦田(伊藤雄之助)は救われた。
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黒藤邸に室戸半兵衛(仲代達矢)と菊井(清水将夫)が戻ったときには、後の祭りだった。


室井はこれまでと言い捨て、去った。


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椿三十郎・ラストシーン

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藩に平和が戻り、慰労の宴が催され九人の若侍が揃ったが三十郎の席は空いていて、三十郎は姿を現わさない。
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救助された城代家老は、事のしだいは知っており、穏便に済ませる積りだったと語り、若者達を恐縮させた。
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三十郎がすでに邸内にいないことが分かり、若侍達は後を追う。

そして対峙する、三十郎と室戸半兵衛を発見する。
三十郎と室戸半兵衛の対決

二人の勝負は、一瞬早く三十郎の居合い斬りが勝った。

sanjyu-baka.png
勝負に勝った三十郎に「お見事」と声を掛ける若侍・伊坂(加山雄三)。
三十郎は「馬鹿」と怒号する。

「いい刀とは、鞘に収まった刀だ。」
「半兵衛も俺も、抜き身の刀だ。」
「おまえらは、鞘におさまってな。」

「あばよ」そう言い捨てて、肩を揺らして去っていく。


sanjyu-las.png

この最後の決闘シーンは、間違いなく「ハリウッド・西部劇」そのものだと思います。


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上の椿三十郎の最後の決闘シーンについて、仲代達矢がその著書『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)に、詳細な内容を語っています。この本もとっても面白くてオススメです。

仲代達矢がこれまでの作品を振り返る。日本映画は昭和20年代から30年代を中心に黄金時代と呼ばれる。ちょうどその頃、仲代達矢はデビューした。俳優座養成所でのこと、小林正樹、岡本喜八、黒澤明ら名監督との出会い、高峰秀子、原節子、勝新太郎といった有名俳優との仕事などを回想する。映画会社の専属にならない、当時としては珍しいフリーの立場を貫いた。一年の半分を映画、もう半分を舞台ときっちりわけて仕事をしてきた俳優だからこそ、日本映画の盛衰を冷静に見ていた。現在の映画界についても鋭く語る。(amazonより)

上の本を元に、再現実況シーンをでっち上げてみました。現場の緊迫した状況が伝われば幸いです。
また、このシーンの黒澤の演出方法にこそ、リアリズムの本質が現れていると思います・・・・

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椿三十郎の決闘シーンの架空・実況中継

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大変な事件が起こったようです!
黒沢監督の作品「椿三十郎」の撮影中、「ラストの決闘シーン」において誰も予想しなかった事態が起こり、今も現場は緊張に包まれている模様です!
現地から中継に切り替えます!


こちらは現地です、ほんとにひどい状況です。
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現場に立ち会った若侍役の田中邦衛氏は、あまりの事に「驚愕」し、まだショックから立ち直ってない様子です。


sanjyu-kayama.png
また同若侍役の加山雄三氏も「何も聞いていなかった。あんな事になるなんて」と茫然としております。


映画出演者に取材した所、誰もが口を揃え「この一騎打ちの場面は台本に詳細は何も書かれていなかった」と証言しています。

当事者の一人「椿三十郎」役の三船敏郎氏は、最後の立会シーンに関しては、黒沢監督からの指示通り、その抜き打ちの型を一人で練習し続け、誰にも知らせなかったとの情報もあります。
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また、もう一人の当事者であり被害者ともいうべき、室戸半兵衛役の仲代達矢氏も「あの決闘でこんな事態になるとは」と虚ろな瞳で語っています。

そしてやはり、三船氏と同じく監督の指示により密かに居合を練習したとの事です。さらに、仲代氏は「三船さんの殺陣は凄まじく速いので、負けないように必死に練習した」とも語っています。

総合しますと、問題のシーンの撮影において、実際どうなるか知っていたのは監督とごく一握りのスタッフだけだった模様で、しかも思ったより血シブキ効果を強くしすぎてしまったという、制作側にとっても予想外の事態によって、更に現場が混乱した模様です。

sanjyuurou-nakadai.jpg
仲代氏は「あまりの勢いに体が崩れそうになったのを、必死に踏み止まった」と語り、さらに「そこも黒沢監督は、決闘の迫力を出すため計算していた」のではないかとの、疑念を今も捨て切れていないとの事です。

結局、監督・黒沢氏が密かに企てた計画に、全てのスタッフ出演者が騙されたというのが実情のようです。
その動機に関しては、この出演者も驚愕する、大事件発生の瞬間を記録に留めること以外には考えられず、その「事件記録」がどれだけの衝撃かは、見たものの「記憶」に刻みこまれて永遠に消え去る事はないかと思われます。

以上現場からでした。

sirueto-anauns.jpg
ありがとうございます。
スタジオには映画研究の専門家をお招きしておリます。
いかがお考えでしょうか?


sirueto-critic.jpg
え〜私が思いますに、黒沢監督は以前から殺陣は踊りじゃない、あんな歌舞伎のような立ち回りで人は切れないと言ってたね。

クス・・・結局、殺陣をリアルにすれば、殺人現場を再現するってことでしょ?
人が死ぬ瞬間が事前に分かったり、何が起こるかなんて、誰もわからないのが当たり前でしょう?
それは突発的な非日常のはずでしょ?
クス・クス・・・そういう意味であれば、これだけ完璧に「事件」を発生させるためには、この詐欺師まがいの手しかないんじゃないの?
sanjyu-blood.gifクス・・・みんなマネしたいだろなぁ・・・
ケケケ・・でもマネできないよ・・・・

ケケヶ・・・・二度やっちゃったら・
ケケ・・・事件じゃないもんね・・・
ケケケケケケケケケ・・・

これで、殺陣っていうかアクションの本質が「事件性」に在って、その「事件性」ゆえに見る者に衝撃が与えられるってことが、ハッキリしちゃったよネ・・・ケケ

でもサ〜すっごいよネ・・・ケケ・・・・何か自分でも切りたくナンナイ?これ、コ〜フンすんじゃん!
これ見るとさ〜 ばさ〜ってばさ〜ってキリタクナルよね
ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ


ザア-----------------------ザ--・・・CM「驚きの切れ味!二枚刃は切れる!!」

sirueto-anauns.jpg
イヤXX、マズぃ・・・でしょ!?このコマーシャルって−
え?始まって−
ゴホン・・お見苦しい点がありました事をお詫び申します。
いずれにしてもとんでもない世界映画史上、空前絶後の「事件」が起きた模様をお伝えしました。


当ブログ関連レビュー:
『羅生門』

裁きの真実を問う黒澤映画の古典。
この映画も完璧な一本。
「羅生門」は人間存在のリアリティーを語っていると感じます。



『七人の侍』

チャンバラ活劇のリアリズム
世界を驚嘆させた黒澤映画の古典。
時代劇アクションのリアリティーを語っています。




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posted by ヒラヒ・S at 18:01| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月24日

映画『椿三十郎』黒澤時代劇のルーツを求めて/感想・解説・殺陣の歴史

椿三十郎(感想・解説・編)


評価:★★★★★ 5.0点

実は黒澤監督の時代劇とは、過去のチャンバラ映画とは隔絶した表現がされていました。
そのルーツはハリウッドの西部劇にあるのではないかと個人的には思えます。




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椿三十郎・感想・解説

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そんな黒澤監督の時代劇とハリウッド西部劇の関係を確認するのに、この作品『椿三十郎』は見過ごせない一本だと思います・・・

まずは、黒澤以前のチャンバラを幾つかサンプルとしてご覧頂きましょう。
サイレント映画の大傑作、1925年(大正15年)『雄呂血』坂東妻三郎主演・二川 文太郎監督


坂東妻三郎の殺陣のスゴさはどうでしょう。
大変な迫力で、その身体能力の高さにも驚きますが、注目して頂きたいのはその殺陣の動きです。
まるで舞を踊るような動きではないでしょうか?

実のところ、戦前の殺陣は基本的には踊りの延長のようなモノだと感じます・・・
元祖・丹下作善、大河内傳次郎の殺陣映像集

そもそも、チャンバラ活劇の初期の俳優さんたちは歌舞伎界の二流三流の方々が演じられていて、その後、映画界のスターが演じるようになってからも、殺陣のかたちは様式的、舞踏的であったようです。
昭和の大スター、大河内傳次郎の殺陣映像集

そして、戦争の時代を経て敗戦後GHQの占領下では、1945年から1951年(昭和26年)9月の講和条約成立まで、日本映画界はチャンバラの映画製作を禁じられ、また時代劇の上映自体が禁止されたのです。
そんな娯楽に飢えた時代に、日本で上映されたのがハリウッド製の映画でした。
その時代、ハリウッド黄金期のミュージカルや西部劇映画が大量に流入し、日本人を(いや世界中を)興奮させたのでした。

1936年制作の西部劇『平原児』セシル・B・デルミ監督、クラーク・ゲーブル主演

1939年の西部劇『駅馬車』ジョン・フォード監督、主演はジョン・ウェイン

1953年『シェーン』ジョージ・スティーブンス監督、アラン・ラッド主演


こんな西部劇の決闘シーンで興奮していた日本人も、1951年に自由に時代劇を作れるようになると、各社が一斉に製作に乗り出します。
戦前からのスター、嵐寛寿郎は再び『鞍馬天狗』に出演し、片岡千恵蔵は『いれずみ判官』(遠山の金さん)、市川右太衛門も『旗本退屈男』などの時代劇に復帰し、時代劇スターとして映画界に君臨しました。
しかし、それらのチャンバラ活劇は戦前からの流れを受けて、やはり舞踊的な殺陣でした。
1955年(昭和30年)新諸国物語「紅孔雀」中村錦之助・東千代之介・大友柳太朗出演。


対して、黒澤明監督の殺陣は、その重厚さといい、動きの重心といい、本当に人を斬る動きを再現したような迫力です。
それは、リアリズム表現を追求したというという面もあるでしょうが、西部劇に負けない迫力を時代劇でどう表現するかという所で、苦闘の末『用心棒』の殺陣が生まれたのでしょう・・・・・・・・・
ここでは、銃の射撃音に対抗するかのように、日本で始めて刀の斬殺音が取り入れられています・・・・
黒澤明監督『用心棒』(1961年)の殺陣




そして、そんな西部劇の緊張感と銃の重々しい響きに対抗しうる殺陣が生まれえたのは、黒澤監督の演出力と同じぐらい、三船敏郎という卓越した役者が同時代に存在したということが大きいと思えます。
仲代達矢も自伝で言及していますが、三船の剣は本当に早く、しかも実際に斬られ役に刀身を当てて、迫力を出したといいます。
そんな稀代の時代劇スターと天才黒澤明監督が邂逅しえたのは、日本映画にとって、いやその後の映画界への影響を考えれば、世界にとって大きな意味を持っていたと思います。


黒澤監督が西部劇を見て、革新的な時代劇とチャンバラの殺陣を生み出したように、黒澤の時代劇を見たイタリア人が影響を受けマカロニ・ウエスタンを生み、さらにマカロニ・ウェスタン(英語圏ではスパゲッティー・ウェスタンですが・・・)がハリウッドの西部劇に影響を与えたというのは、お里帰りを果たしたような感慨を覚えます。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』よりカイロ・レン vs フィンとレイ

さらにはチャンバラ・アクションが、「スターウォーズ」はもちろん、アクション映画に必ずといっていいほど登場し、迫力の殺陣が繰り広げられています。


さらにそんなハリウッド・チャンバラを見て育った日本人が、新しいチャンバラを作っているのではないでしょうか・・・・・・・・
るろうに剣心 予告

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しかしこれは、西部劇のオリジナルを更なるこだわりを持って、迫力あるリアリティーを感じさせる黒澤と三船の殺陣だったからこそ、世界に影響を与えられたのだと思うのです。
やはり、戦前の様式的な殺陣であれば、とてもここまでインパクトを与えられなかったと信じています。

この映画の最後は迫力の決闘シーンが待っています。ぜひご自分の眼で、その衝撃を体感して下さい・・・・・



当ブログ関連レビュー:
『待ち伏せ』
三船敏郎の凄まじい殺陣が見れる一本。
日本映画黄金期の残照



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