2017年08月10日

映画史の1本『或る夜の出来事』世界初のラブ・コメ映画/感想・解説・評価

『或る夜の出来事』(感想・解説 編)



原題 It Happened One Night
製作国 アメリカ
製作年 1934
上映時間 105分
監督 フランク・キャプラ
脚色 ロバート・リスキン
原作 サミュエル・ホプキンス・アダムス

評価:★★★☆  3.5点



この映画は、映画史上初のラブ・コメ、ハリウッドで言うところのロマンチック・コメディーだと断言しちゃいます。
ハリウッドを代表するスター、クラーク・ゲーブルのキャラクターが最も活かされた作品だとも思います。
第7回のアカデミー賞でオスカー史上最多受賞を果たした、ハリウッド黄金期の歴史的作品です。
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『或る夜の出来事』感想



it hap-crsh.jpgこの映画が作られた当時は、アメリカウォール街から端を発した「世界恐慌」による経済不況が世界を覆っていました。
日本やドイツは軍国主義に走り、アメリカはニューディール政策で経済を賦活させる努力をしていた時期でした。

そんな暗い時期に撮られたこの映画は、大衆芸術としての「庶民の夢」を、その恋愛とコメディーのドラマ中に含んでいたようにも思います。

それを象徴するのが、金持ちでワガママな存在=ヒロインのエリーと、庶民で仕事をクビになった主人公=ピーターが描かれることです。
そのピーターは、ワガママ令嬢に振り回されて、苦労を重ねることになります。
it hap-bump.gif
つまりは、金持ち達が自らの利益を貪ったがゆえに引き起こされた「世界恐慌」という苦難のツケを、弱い立場の庶民が払わされることの苦々しさが見え隠れします。

そして結果から見れば、この映画はエリーというワガママ令嬢を、庶民のピーターが屈服させる物語なのだと思えてなりません。

ピーターは庶民の鬱憤を晴らす如く、ワガママなエリーに「お前の親の育て方が悪いから、そんなになったんだ」と怒り、ついには「お尻ペンペン」までします。
【意訳】ピーター:父親に電話したほうが良い。/エリー:どうしたの?弱気になった。/ピーター:いいや、君のためさ。飢え死にしたくないだろう。/エリー:お金全部上げちゃったの?/ピーター:俺じゃなくて、君がやったんだろ。なけなしの10ドル。だから父親に電話したほうが良いと思ってね。/エリー:いやです!ニューヨークに行くと決めたから、もし飢え死にしようとも行くわ。/ピーター:分かったよ。ウェスリー(エリーの夫)は、なんでこんなに女を夢中にさせるんだ?これを持って、丸太の上に立て。(靴をぶつけられて)頼むから遊ばないでくれ。/エリー:ごめんなさい。肩車をされるのはひさしぶりだわ。

ピーター:これは肩車じゃない。/エリー:そうよ。/ピーター:お前おかしいぞ。/エリー:私のパパが間違いなくこうして肩車してくれたのを覚えてる。/ピーター:こんな風に運んだのか?/エリー:そうよ。/ピーター:お前の父親の頭じゃ肩車を分からないんだ。/エリー:私の叔父も、私の母親の兄弟も四人の子供がいて、彼等だってこうして肩車されてたわ。/ピーター:賭けてもいいが、お前達一族はまともに肩車できない。俺は金持ちで肩車できるヤツをまだ知らないね。/エリー:あなたの偏見よ。/ピーター:お前は肩車の名人を俺に見せてくれ。そしたら、俺は本当の人間を見せてやるさ。例えばアブラハム・リンカーンのように。生まれながらの肩車名人だ。お前の高慢な一族から、いつお前は離れられるんだ?/エリー:私のパパは肩車の名人よ。/ピーター:ちょっと、これ持っていてくれ。(叩く)ありがとう。

it hap-ship.jpgこんな金持ち令嬢の憎まれ役だけに、ヒロインのエリーを演じたクローデット・コルベールが、こんな金持ちのイヤな女は演じたくないとゴネたのも分かる気がします・・・・・
やはり悪役ですし。


そんな、こんなで、この映画は公開当時お高くとまった批評家からは酷評されたものの、庶民大衆の絶大な支持を受け、歴史に残る古典作品として今に残ります。

そんな庶民の支持を物語るエピソードを・・・・・・・・・・
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@この映画でシャツの下に下着を着ないスタイルが流行った。

 右のシーンで、主人公ピーターを演じたクラーク・ゲーブルがシャツを脱いで、裸なのがカッコイイと若者を中心に流行ったそうです。


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Aこの映画で大陸横断バスの利用が増えた。


 それまで旅行といえば、飛行機や鉄道が中心だったものが、横断バスの旅がポピュラーになったそうです。

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Bこの映画でヒッチハイクが定着した。

映画史に残る名シーン「ヒッチハイク」。この映画の後、ヒッチハイカーが増加したといいます。


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Cこの映画がバックスバニーを生んだ。

この映画で見られる、敵に追いかけられながら、ニンジンを齧るイメージから、アニメ「バックスバニー」が誕生したという説があります。


ということで、この映画がどれほど人々に愛されたか、大恐慌の苦しい時代に「庶民大衆」に元気を与えたかと想像してみたりしています。
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『或る夜の出来事』解説

クラーク・ゲーブルとクローデット・コルベール



この映画の撮影時34歳だったクラーク・ゲーブルは、この映画で人気を不動のものにし、アカデミー主演男優賞を獲得しています。
クラーク・ゲーブルの魅力は、乱暴にすら見える言動に象徴される、男性的なセックス・アピールに当時の女性たちは虜になったといいます。
クラーク・ゲーブル(Clark Gable, 1901年2月1日 - 1960年11月16日)は、アメリカ合衆国の映画俳優。第二次世界大戦前後の時代を代表するビッグスター。

大手映画製作会社のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)の幹部の目にとまり、1930年に契約し翌年から多くの映画に出演、「キング・オブ・ハリウッド」の異名をもつ大スターとなる。(wikipediaより)

そして、ヒロインのクローデット・コルベールは、ラブ・コメの女王として人気を博し、本作でアカデミー主演女優賞を得ています。
クローデット・コルベール(Claudette Colbert, 本名:エミリー・ショーショワン(ニックネームはリリー)、1903年9月13日 - 1996年7月30日)はフランス生まれのアメリカ合衆国の女優。


1930年代、40年代にスクリューボール・コメディで人気を博したコメディエンヌ。1936年には年収30万ドルを稼ぎ、アメリカで最も高収入の女優の一人となった。

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『或る夜の出来事』評価


この映画は、映画史に残る古典であり、ロマンチック・コメディーの元祖と言って良いと思うのですが、個人的な評価は、映画としての魅力は★3というところかと・・・・・・
it-hap-pos.jpg
それに歴史的評価を+☆0.5とさせて頂きました。

実を言えば、現代の映画に慣れた目から見ると、すこ〜し映画のテンポがノロイかと思います。
また、エピソードも冗長な所があったり、ラストに至るまでの過程も、もう少し整理できたように思います。
これは1936年という時代に生まれて、初めてこの映画を見ていれば、斬新で、軽快なテンポに感じられたと思うのですが・・・・・・・・

アナウンサーの喋る一分間の文字数が、現在では400字を超えているのに対し、30年前では300文字程度だったといいます。
ましてや、この映画の一世紀を過ぎようかという時間経過を考えれば、テンポの遅さは致し方ないかとも思います。
更に付け加えれば、この映画はサイレントとトーキーの過渡期という事もあり、名匠フランク・キャプラ監督と言えども、長回しや、カット割りなど、サイレント時代の撮影法がまだ尾を引いているようにも感じられます。


また、現代の視点で見ると残念なのが、ワガママな大金持ちの娘というヒロインの設定が、そこまでワガママに感じられないという点です。
Film.jpg
これもたぶん、当時の「お淑やかな女性」に比べれば、クローデット・コルベールが演じるのを嫌がった事で分かるように、こんなヒドイ女は有り得ないというキャラクターだったのかとも思います。

しかし、今となっては、もっと、ずっ〜〜〜〜とワガママな女性が巷に溢れているだけに、そんなヒドイ娘に見えないという・・・・・・・・
そんなことで、悪役として見れば、現代の眼では弱く感じます。

また、今の目線で見れば、クラーク・ゲーブル演じるヒーローも、いかにワガママな高慢娘とはいえお尻をひっぱたいたり、大声で罵ったりするのは、ちょっと乱暴で抵抗があります。
しかし、これも当時の男は、この位強くなければいけなかったのでしょう。

そう思えば、女性達が強くなったことと、男たちが軟弱になったことで、現代の物語として見れば、対立構造が弱く、ドラマの力学が十分発揮されないように感じてしまうという事でした。


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それは、現代の眼から見れば、バスの中だろうと、公衆のまっただ中だろうと、平気で煙草を吸い続けているこの映画を、嫌煙権をカサに非難し断罪するようなものなのですが・・・・・・・・・


残念ながら努力をしてみましたが、当時の価値観でこの映画の真価を十分評価することができず、私にとってはこの評価となりました・・・・・・・悪しからずご了承ください。

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2017年08月07日

映画『或る夜の出来事』1934年製作ラブ・コメディーの古典/詳しいストーリー・あらすじ・出演者

『或る夜の出来事』(ストーリー・あらすじ編)



原題 It Happened One Night
製作国 アメリカ
製作年 1934
上映時間 105分
監督 フランク・キャプラ
脚色 ロバート・リスキン
原作 サミュエル・ホプキンス・アダムス

評価:★★★☆  3.5点



この映画は、映画史上初のラブ・コメ、ハリウッドで言うところのロマンチック・コメディーだと断言しちゃいます。
ハリウッドを代表するスター、クラーク・ゲーブルのキャラクターが最も活かされた作品だとも思います。
第7回のアカデミー賞でオスカー史上最多受賞を果たした、ハリウッド黄金期の歴史的古典作品です。
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『或る夜の出来事』あらすじ



マイアミ港に係留された豪華ヨットの上では、銀行家の大富豪アンドルース(ウォルター・コノリー)が、一人娘エリー(クローデット・コルベール)に困り果てていた。
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エリーは父の承諾を得ずに飛行家キング・ウェストリー(ジェームスン・トーマス)と結婚をしたため、船に監禁し説得をしていた。
しかしエリーは、頑として受け付けずハン・ストさえ始めたのだ。
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ついには、娘はヨットから海に飛び込み、逃亡してしまった。

エリーは追跡者を避けるため、庶民が旅行に使う長距離バスに乗った。
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そのバス発着所には、本社とケンカしクビを言い渡された新聞記者ピーター・ウォーン(クラーク・ゲーブル)がいた。

ピーターとエリーはニューヨーク行きのバスに乗り、隣り合わせに座ることになったが、お互い好感を持てずギクシャクしていた。
そのバスが休憩で停車した時、エリーはトランクを盗まれてしまい、持っているのは切符と4ドルを残すのみとなった。
ピーターは親切心でいろいろアドバイスをするが、エリーは騒いで見つかることを恐れ、私に関わらないでと彼に言い怒らせた。
バスは夜を通して走り続け、早朝ジャクソンビルに到着し30分の休憩になった。
お嬢さん育ちでワガママのエリーは、私が戻るまで待っていてとドライバーに言って、50分後に戻ってきた時にはバスは出発した後で、次の便は夜8時だと言われ途方にくれる。
そんなエリーに、ピーターが声をかけた。
彼はエリーがバスの切符を座席に忘れてるのに気付き、渡そうと待っていたのだった。
そしてピーターは、エリーの父アンドルースが、1万ドルの懸賞金をかけ娘の行方を捜索させていると教えた。
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ピーターはプレイボーイの飛行家キング・ウェストリーは最低の女タラシだと言い、父の元に帰れと薦めるが、エリーは拒否した。
そして去ろうとしたピーターに、エリーは「1万ドルを私があげるから父に連絡するな」と言った。
それを聞いてピーターは怒り、「甘やかされて何でも金で買いたがる。人間性のかけらもない。」とエリーに怒鳴った。

しかし、そう言いながら、ピーターは自分をクビにした編集長宛に電報を打ち、エリー発見のスクープ記事があると連絡した・・・・・・・・・

その、夜に出発する大陸間バスには、エリーとピーターの姿があった。
しかし、大雨で道路が塞がれバスが立ち往生し、ピーターは金のないエリーのために夫婦と偽って近くのモーテルに一部屋借りた。
しかしエリーは同じ部屋で寝ることに文句を言うと、ピーターは下心は無い、ただ記事を書かせてほしいと言い、もし断るなら父親に連絡すると脅した。
エリーは外の大雨を見てついに諦めて、同じ部屋に泊まる事になった。
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ピーターは、部屋にロープを張りシーツで目隠しをし、ジェリコの壁だと言った。(聖書に出てくる絶対崩れない壁。ただし最後にはトランペットの音で崩れたという)

翌朝、朝ごはんを作り服にアイロンをかけてくれたピーターに、エリーは素直に感謝を覚えた。
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そんな所に父の追っ手の探偵が探しに来たが、ケンカ中の夫婦を装って誤魔化した。

見つからない娘に焦燥を募らせる父は、更に新聞・ラジオで大々的に告知し、ついにバスの乗客の一人が気付く。
ピーターは、ギャングのふりをしてその男を追い払ったが、バスで旅することは危険だと知り、エリーと共にバスを降りた。
しかし、手持ちの金を使い果たした二人は、干草をベッドに野宿した。
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そんな二人は、共に行動するうちに反発しつつも、惹かれあうようになる。
翌朝、ピーターは畑から抜いたニンジンを生のままかじり、エリーにも薦めたがエリーはイヤだと食べなかった。
二人は、車をヒッチハイクしてニューヨークを目指した。


しかし、乗せてくれたドライバーは、親切なふりをした泥棒だった。
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ピーターはドライバーを倒し、逆に車を奪いニューヨークにエリーと向かった。

その頃、娘を心配した父親は結婚を認める決心をし、飛行家キング・ウェストリーと和解し、それを新聞でも報じた。
エリーはその新聞を見たが、ニューヨークまで3時間の所で泊まると言って、ピーターを困惑させた。
it hap-jericoNo2.jpeg
その晩モーテルの一室で、ジェリコの壁を挟みながらエリーとピーターは、恋について語った・・・・・・・

ピーターは愛する女性を太平洋の島に連れて行きたいと語る。

it hap-buckbed.png
するとエリーはジェリコの壁を越え、私をそこに連れて行って、あなたを愛しているとピーターに訴えた。

しかし、ピーターは抱きつくエリーに「ベッドに戻れ」と言った。

しかし、涙ながらに寝入ってしまったエリーの顔を見ながら、ピーターはある決心をしていた・・・・・・・

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『或る夜の出来事』予告

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『或る夜の出来事』出演者

クラーク・ゲーブル(ピーター・ウォーン)/クローデット・コルベール(エリー)/ウォルター・コノリー(アンドリュース)/ロスコー・カーンズ(シェプリー)/ジェムソン・トーマス(ウェストリー)
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posted by ヒラヒ・S at 17:32| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月21日

映画『サヨナラ』(1957年)日本娘と米兵の恋/感想・解説・ホワイトウォッシング

サヨナラ(感想・解説 編)


原題 Sayonara
製作国 アメリカ
製作年 1957
上映時間 147分
監督 ジョシュア・ローガン
脚本 ポール・オスボーン
原作 ジェームズ・A・ミッチェナー


評価:★★★   3.0点



この1957年に作られた映画は、美しいけれども陳腐なメロドラマのように思えるかもしれません。
しかし戦後の混乱の中で、アメリカ軍兵士と日本娘の恋が実際どうだったのかを探求してみると、なかなか複雑な状況がありました。
この映画は名優マーロン・ブランドが出演し、アカデミー賞にも、助演男優賞にレッド・バトンズ、日本人役者として2017年現在でも唯一のオスカー保持者、ナンシー・梅木がこの映画で助演女優賞に輝いたほど、ハリウッド的な理想を謳った作品ではあります。

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『サヨナラ』予告


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『サヨナラ』出演者

ロイド・グルーバー少佐(マーロン・ブランド)/ハナオギ(高美似子)/アイリーン(パトリシア・オウエンス)/ナカムラ(リカルド・モンタルバン)/ジョージ・ケリー(レッド・バトンズ)/カツミ(ナンシー梅木)/マイク・バレー大尉(ジェームズ・ガーナー)/ウエブスター将軍(ケント・スミス)/ウエブスター夫人(マーサ・スコット)/フミコ(久場礼子)/クラフォード大尉(ダグラス・ワトソン)

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『サヨナラ』感想

奇妙な日本



正直に言えば、この映画には日本人から見れば奇妙な日本が、間違いなく描かれています。
sayo_hanaogi.jpgいろいろと不思議な日本を見せつけられるのですが・・・・・・
中でも、この映画のヒロイン"ハナオギ"という名前からして不思議な存在が、奇妙なことをしてくれます・・・・・・・

このハナオギは、マツバヤシ歌劇団のトップスターなのですが、そのハナオギが歌劇団の宿舎に帰る帰途がファンタスティックです。
sayo-skd-back.png

日本庭園の橋の周囲に、なぜか稚児さん風の女の子が並び、わらべ歌を歌ったり・・・・・・・

さらにはハナオギが腕の上に、尻尾の長い鶏「尾長鳥」をとまらせたり・・・・・・・・・
sayo-onaga.jpg

実はこのマツバヤシ歌劇団は、松竹歌劇団(SKD)の舞台シーンを流用し、ヒロインのハナオギをはめ込んだようです。
松竹歌劇団(しょうちくかげきだん)は、1928年から1996年まで日本に存在したレビューおよびミュージカル劇団。
出演者が女性で占められる「少女歌劇」の系譜に属する。松竹を母体として東京・浅草に本拠を置き、1930年代には東京一のレビュー劇団として、兵庫県宝塚市を本拠とする宝塚少女歌劇(宝塚歌劇団)と人気を競った。太平洋戦争を経て、戦後は本拠地・国際劇場の大舞台を活かした「グランド・レビュー」を売りに人気を保ったが、1960年代ごろより徐々に低迷、1990年代にはミュージカル劇団へ転向するも定着せず、1996年をもって解散した。「Shouchiku Kageki Dan」の頭文字をとったSKDの通称でも知られた。大阪府に現存するOSK日本歌劇団(旧・大阪松竹歌劇団)は姉妹劇団である。(wikipediaより)
2017年OSK日本歌劇団【新橋演舞場】レビュー夏のおどり 告知映像

ですから、この映画のレビューシーンも当時日本で繰り広げられていたモノには違いありませんが・・・・・
多少「エキゾチズム=日本情緒」を追加しているのではないかと感じます。
もっとも当時の実際の舞台を見ていないので何とも言えませんが・・・・・・・・

何にせよ、アメリカ人から見て印象的な、日本的な異国情緒がこの作品のそこかしこに埋め込まれ、その点が日本人からすると違和感となっていると思います・・・・・・

Nakamura.jpgそれを象徴するのが、歌舞伎役者のナカムラです。
なんと主人公が日本に来た冒頭に登場する、この歌舞伎役者を白人のリカルド・モンタルバン演じているのです。

そして、おかしな日本語で話す姿にビックリします。
これはまさしく、ホワイトウォッシング、「白人化(漂白)表現」に間違いないと思い、あ〜また変な日本を見せつけられるのかとゲンナリしたのでした・・・・・・

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『サヨナラ』感想

ホワイトウォッシング



最近映画の世界で耳にする言葉に、ホワイトウォッシングという言葉があります。
映画におけるホワイトウォッシング(えいがにおけるホワイトウォッシング、英語: Whitewashing)は、アメリカ合衆国の映画業界で白人以外の役柄に白人俳優が配役されること。映画黎明期より度々白人俳優が白人以外の役に配役されてきており、映画の歴史と共にある。日系アメリカ人活動家のガイ・アオキは「アフリカ系アメリカ人がホワイトウォッシングの対象であるのと同様にアジア系民族も経験している」と語った。ネイティヴ・アメリカンにも同様のことがいえる。(wikipediaより)


単純に言えばホワイトウォッシングとは、本来は黒人であったり黄色人種の役どころを、白人が演じることを指しています。
Film-katinko.jpg
古くは単純に該当するマイノリティーの俳優がいなかったり、知名度の低い俳優では映画の成功が見込めないなどの理由で、有名な白人スターを使って来たというハリウッド的な慣行がありました。

それが、問題視されるようになったのは、白人が他人種を演じることの是非と共に、結局のところそのマイノリティーの描かれ方が、しばしば白人から見た侮蔑的でステレオタイプな存在として描かれてきた点に問題があるように思います。
典型的なホワイトウォッシング
『ティファニーで朝食を』(1961年)のミッキー・ルーニー演じる、日本人"ユニオシ"

出っ歯でメガネの典型的な日本人像を演じ、笑いを生み出してくれています。
しかし、ミッキー・ルーニー自身演じた事を後悔しているとの言葉を語っています。
関連レビュー:オードリーの名作
『ティファニーで朝食を』
名曲ムーンリバーの調べ
ティファニー宝飾店


例えば、2017年公開された実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』。
この映画のヒロイン草薙素子を、スカーレット・ヨハンソンが演じたことで、ホワイトウォッシングだと、海外では批判があったようです。
『ゴースト・イン・ザ・シェル』予告

しかし、そもそも『ゴースト・イン・ザ・シェル』の少佐は人工ボディーですし、日本人が造形すれば白人風に成りそうだし・・・・・・
更に正直いえばスカーレット・ヨハンソンのファンだし・・・・・・・・

関連レビュー:センスオブワンダーの行方
実写『ゴースト・イン・ザ・シェル』
SF映画の歴史
日本アニメの系譜

話が横に逸れましたが、何を言いたいかといえば、ある人種のキャラクターを他の人種が演じることが問題というよりも、そこに表現された人種的な差別感、レイシズムが問題なんだろうと思うのです。
sayo-asian.jpg
そして、『ゴースト・イン・ザ・シェル』にはそれを感じませんでしたし、ミッキー・ルーニー演じる、日本人"ユニオシ"はそれを感じるということでした。

結局問題なのは、人種差別が在るか否かであり、そこに敬意が在れば個人的には誰が演じても良いと思うのです。
逆に言えば、アジア人をアジア人種が演じても、そこに侮蔑的な表現があれば許容し難いと思います。

ホワイトウォッシングではないが、差別的な表現
『素敵なかたおもい』(1984)からロング・ディック・ドング

しかし笑いは誇張から生まれるとすれば、差別かどうかの判断も難しいとも思いますが・・・・


こんな侮蔑的な表現は、ハリウッドばかりではなく、例えばフランスの映画監督ジャンリュックゴダールの『気違いピエロ』にもあったりします。
ベトナム戦争の寸劇

ノート:観光客は現代の奴隷だ/アメリカ船員:おいそこで、何やってんだ!/マリアンヌ:チクショウ!アメリカ人だ!/フェルディナン:大丈夫、計画変更だ。簡単な事さ。ドルをくれたくなるような劇を見せてやろう。/マリアンヌ:どんな劇?/フェルディナン:分らないけど、何か奴らがすきそうな物を。/マリアンヌ:分かった、ベトナム戦争よ。/フェルディナン:分った。ベトナム戦争だ。/ノート:アンクル・サムの甥VSアンクル・ホーの姪/アメリカ水兵:ああ好きだね、とってもいいよ、好きだ、いいよ、素晴らしい。/フェルディナン:俳優達に少しばかりドルを。/アメリカ水兵:知ってるかい、ベトナムはハード・・・/マリアンヌ:ピエロ、心配しないで。こうやって取るのよ/アメリカ船員:おい、何するんだ!/マリアンヌ:ケネディー長生きしてね!/フェルディナン:奴等をまいたぞ、裏に行こう/マリアンヌ:嫌よ、踊りに行くのよ。
ここには、ベトナム戦争を引き起こしたアメリカに対する怒りが、侮蔑表現につながっているように感じます。

関連レビュー:ヌーヴェル・バーグの反米映画
『気違いピエロ』
ジャン・ポール・ベルモンドとジャン・リュック・ゴダール監督
ヌーベル・バーグの傑作


そしてこの映画『サヨナラ』は先に述べたように、ホワイトウォッシングもあれば、ハリウッド的な日本風景の典型も描かれ、日本人的な目線に立てば奇妙な日本が展開されています。

sayo-nakamura.jpgしかし、ホワイトウォッシングの張本人、歌舞伎役者ナカムラのリカルド・モンタルバンの歌舞伎を見たときに、その堂々とした踊りに驚きました。
腰の座った日本舞踊に、その修練は決して簡単なことではなかったろうと、個人的には感動しました。

F-japan.jpgそして、映画の中には「能」も出れば「文楽」も出てきます。
そして文楽で描かれた心中劇が、映画の中でしっかり消化されているのも、日本文化に対する敬意と感じます。
ここには多少ピントがずれていたとしても間違いなく、日本に対する敬意があり、大げさに言えば「他文化」に対する尊敬が根底に合ると思えてなりません。

この映画『サヨナラ』で語られたのは、かつての敵であっても―
どれほど文化が違おうとも―
尊敬と愛があれば共に生きて行けるのだという「理想」だと思うのです。
その美しく、気高い「理想」を高らかに謳いあげた見事さを思えば、尾長鳥のミョウチクリンさや、白人の歌舞伎役者の珍奇さをあげつらうのは、島国根性的な矮小な精神を示していると我が身を反省したのでした・・・・・・・・・

本音を言えば、この映画のヒロインが白人であっても、個人的には全然問題ありません。
実を言えば、この映画のハナオギ役のオファーは、
当初オードリー・ヘップバーンに出されたそうです。

見たくないですか?
オードリー・ヘップバーン演じる日本歌劇団のトップスター。

非国民と言われようとも、私は見たかった!!!!

最もそれは日本にいるからで、外国で侮蔑的に"ユニオシ"と呼ばれる経験をしていたら、やはりこういう表現は止めてほしいと思うかもしれませんが・・・・・・

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posted by ヒラヒ・S at 17:15| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする