2017年04月29日

難解映画『ノーカントリー』コーエン兄弟の傑作/詳しいストーリー・あらすじ・出演者

『ノーカントリー』ストーリー・あらすじ編

原題 No Country for Old men
製作国 アメリカ
製作年 2007
上映時間 122分
監督・脚本 ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
原作 コーマック・マッカーシー


評価:★★★★  4.0点



この映画は、突然の、寸断された、事故のような、思いもかけない、断片が組み合わさったような先の見えない緊張感がある。
サイコパス、シガーの圧倒的存在感と相まって、見る者を底知れぬ不安と名状しがたい恐れに引きずり込む。
この映画に描かれたかれた不可知の出来事にこそ、現代アメリカの真実が潜んでいると感じられる。

『ノーカントリー』予告




『ノーカントリー』あらすじ



この映画は物語の語り部保安官トム(トミー・リー・ジョーンズ)のナレーションから始まる。

【ナレーション大意】私は信じられないが25歳で保安官になった。私の祖父も父もそうだった。父はプラーノ(ダラス近くの町)の出身で、父はそれを誇りにしていた、私もそうだ。信じがたいが、昔の保安官は銃すら持たなかった。ジム・スカボロウーもガストン・ボイキンズ(有名な保安官)も、持たなかった。仕事について彼等ならどうしたかと私は問いかける。
私は、14歳の少女を殺害した少年を死刑にした。新聞は“激情犯罪”と書いたが、本人は“感情はないし前から、殺人に興味があり出所したらまた誰か殺す”と言った。最近の犯罪はなぜそうするか、物差しで測れない。それを恐れてはいない。この仕事の為にいつでも喜んで死ぬ。しかし、そのためにより多く賭けようとは思わない。・・・・・・理解できないことに遭遇した時。魂が危険にさらされたら、彼は言うべきだ、“OK、この世界の一部になると”

テキサス州の路上に一台のパトカーが止まり、若い保安官補が不審な男を拘束する。
その男は酸素ボンベを持った殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)だった。保安官補が事務所で電話報告中に、背後からシガーに襲われ殺される。
シガー絞殺シーン

シガーはパトカーに乗り前を走る車を止め、警官を偽装し近づくと家畜の屠殺用ボンベで運転手の額を撃ち抜いた。殺した男の車を奪って逃走する。
nocuntory-catgun.gif


nocont-kill.jpgその頃、ベトナム帰還兵で今は溶接工のルウェリン・モスは、狩りに向かった荒野で、散乱する死体と車を発見した。

車の中に生き残った男がいて、水を欲しがったが、モスは持っていなかった。

no-coun money.jpg麻薬取引のトラブルだと分かったモスは、取引の金があると推測し、周囲を探すと木陰で男の死体を見つけ、そのそばには200万ドルの入ったバッグがあった。
モスはその金を盗み、自宅へ持って帰る。

その夜モスは水を欲しがった男が気になり、水を持って現場に戻ってみると、そこには麻薬組織の者がいて、見つかり肩を撃たれた。
no-cun-kalla.jpg
家に戻ったモスは追手が来ることを予期し、すぐに妻のカーリーを実家に向かう長距離バスに乗せ、自分も金を持って逃亡を始める。


一方シガーは、麻薬組織から金を取り戻す仕事請け負い、事件現場を訪れた。
モスの車から登録者を調べるため車体番号を外した。
さらに現場を確認し、金に仕込んだ発信機の受信装置を受け取り、シガーは組織の手下2名をその場で殺害した。

【意訳】シガー:これが奴のトラックか?/組織メンバー:ああ/シガー:ねじ回しをくれ?このタイヤは誰が切った?/組織メンバー:メキシコ人だろ、俺たちじゃない。/組織メンバー:あれは死んだ犬/シガー:ああ/シガー:受信機は誰が/組織メンバー:俺が持ってる/組織メンバー:欲しいだろ?/シガー:反応は?/組織メンバー:ピーピー鳴ってないだろ。/シガー:分かった。それをくれ。

事件現場で捜査にあたる地元保安官のトムは、殺害現場の殺戮を見て憂鬱になる。
nocunt-tomi1.jpg
そこでトムは、知り合いのモスの車が乗り捨ててあるのを見つけた。

トムは、危険な殺戮者がモスを追っていると、本人に知らせるべく探し始めた。
シガーもモスの行方を追って、モスの自宅を訪れるが、自宅はもぬけの殻だった。しかし、電話の請求書を見つけモスの妻の生家を知った。

モス本人は金を持ち、国境近くのデル・リオにいた。
道路沿いのモーテルに入り、部屋の通気口にトランクを隠した。そんな彼を追って、シガーがモーテルに来た。そしてメキシコの麻薬組織の追手も来ていた。両者ともに金に隠された発信機の信号を頼りにモスの部屋を知ったのだった。

シガーとメキシコ側の追手が銃撃戦を始める中、モスは別の部屋に隠れ、その通気口から金を引っ張り出し逃走する。シガーはこの時、通気口にブリーフケースの引きずる跡を発見する。

逃げたモスは、ホテル・イーグルに部屋を取り、自分が追跡されるのが発信器のためだと気付く。
モスは発信機を逆手にとって、追手・シガーを罠にかけ反撃にでて、激しい銃撃戦を繰り広げる。

その末にどちらも重傷を負った。
シガーが傷で動けない間に、モスはメキシコ国境を越えメキシコの病院に入院した。

そんなモスの病床にアメリカ側のもう一人の追手、賞金稼ぎのウェルズがやってくる。
彼は金をよこせば、命を守ってやると取引を持ちかけた。モスはその話に答えなかったが、ウェルズは自分の泊まっているホテル、モスとシガーが銃撃戦を行ったホテル・イーグル、に連絡をしろといって去った。
ウェルズはホテルで待ち伏せていたシガーに出会う。


【意訳】シガー:どうもカーソン。お前の部屋に行こう。/ウェルズ:こんなことする必要はない。俺は日銭稼ぎだ、家に帰るよ。/シガー:帰りたいか?/ウェルズ:あんたの時間をくれればATMまで行こう。1万4千ドルある。それで別れようじゃないか。/シガー:ATM/ウェルズ:鞄の場所を知っている。/シガー:知っているなら持ってるだろう。/ウェルズ:川の土手なんだ。そのどこにあるか俺は知ってる/シガー:もっといい事を知っている/ウェルズ:なんだ?/シガー:それの運ばれる場所だ/ウェルズ:どこだ?/シガー:おれの足元に運ばれるんだ。/ウェルズ:持ってくるには20分かかる/シガー:これから何が起こるかわかるかカーソン。お前は状況を理解して威厳を持て/ウェルズ:地獄に落ちろ。/シガー:分かった。質問がある。お前が従ったルールでこうなったなら、お前のルールが何の役に立った?/ウェルズ:お前は自分の頭がどれほど狂ってるか、判っているか?/シガー:お前の言ってるのは、この会話の本質か?/ウェルズ:いいやお前の本質だ。/ウェルズ:お前は金を手に入れられるんだ。(その時部屋の電話が鳴り、その音を聞きながらウェルズは殺され、電話にはシガーが出た)/モス:もしもし/シガー:はい。/モス:カーソン・ウェールズはいるか?/シガー:お前の思う状態ではないが。俺に会いに来い。/モス:誰だ。/シガー:誰だか分かるだろう。俺と話す必要があるだろ。/モス:俺にはない。/シガー:お前はそうする。俺がどこに行くか分かるか?/モス:俺が気にするとでも?/シガー:お前がどこにいるか知っている。川向こうの病院だ。でもそこには行かない。どこに行くか分かるか?/モス:ああ分かる。でも彼女はそこに居たがらないだろう。/シガー:ああ、いつになるかは、それは大した違いじゃない。/モス:なら何のために行くんだ。/シガー:結末はどうなるか分かるだろう。/モス:ああ。/シガー:お前が分かっているなら、提案をしたい。金を俺に持って来い。さもなければ彼女はお前の連帯責任を負う。お前が手に入れられる最良の取引だ。俺は、お前に命を守れとは言えない。お前には無理だからだ。/モス:時間をくれれば持ってく。お前を俺の最優先課題にするよ。もう探さなくても良いぞ。

シガーはモスが金を運んで来なければ、妻カーラの命はない、同時に金を運んできてもモスは殺すと宣言した。
モスはシガーの元にはいかなかった。
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モスは病院を抜け出し国境を越え、カーラに電話しエル・パソのモーテルで落ち合おうと連絡をする。
Nocun-mum-mex.pngカーラは保安官トムからモスの現状の危険性を聞かされており、助けを求めてトムに連絡する。
一方、カーラに目を光らせていたメキシコ側の追手は、カーラの母親に親切にし、合流地のモーテルを聞き出す。


そしてシガーは、自分以外にも、賞金稼ぎウェルズ、メキシコ側に情報を流し追わせたアメリカ組織のボスを射殺した。
麻薬組織ボス襲撃シーン

【意訳】シガー:誰だ/会計士:私?/シガー:そう。/会計士:誰でもない。会計士なんだ。/シガー:奴は受信機をメキシコ人に与えた。/会計士:彼が・・・・・彼はもっと大勢に探させたいと思ったんじゃ・・・・/シガー:愚かだ。正しい人間を選んでるのに。/会計士:そうだね。君はボクを撃つ?/シガー:状況次第だ。俺が見えるか?


そして、シガーも養鶏業者の車を奪いエル・パソに向かう。
モスもモーテルに着いた。
そして警官トムがエル・パソのモーテルへ急行して眼にしたものとは・・・・・・・

『ノーカントリー』キャスト・出演者

エド・トム・ベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)/アントン・シガー(ハビエル・バルデム)/ルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)/カーソン・ウェルズ(ウディ・ハレルソン)/カーラ・ジーン・モス(ケリー・マクドナルド)/ウェンデル保安官助手(ギャレット・ディラハント)/ロレッタ・ベル(テス・ハーパー)/エリス(バリー・コービン)/ガソリンスタンド店主(ジーン・ジョーンズ)/アメリカ側組織ボス(スティーヴン・ルート)


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2017年04月28日

映画『JUNO/ジュノ』16歳の妊娠騒動/ネタバレ・ラスト・結末感想

『JUNO/ジュノ』ネタバレ・ラスト 編

原題 Juno
製作国 アメリカ
製作年 2007/96分
監督 ジェイソン・ライトマン
脚本 ディアブロ・コディ


評価:★★★☆  3.5点



この映画は、望まず妊娠してしまった女子高生が、前向きに失敗に対処することで成長する物語かと思いました。
この映画の結末は、幼かった少女の成長と、本当に人生で大事なものを理解した、明るい未来を描いて「ガールズムービー」としてのパワーに満ちています。


『JUNO/ジュノ』予告動画



『JUNO/ジュノ』キャスト

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以降の文章に

『JUNO/ジュノ』ネタバレ

を含みますので、ご注意下さい。

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(あらすじから)
ジュノは父に人間不信に陥ったと語った。

【意訳】父:なにやらご機嫌斜めだな。どうしたんだ?/ジュノ:私はただ、なんていうか、人間性への信仰を喪ったの。/父:俺で助けになるか?/ジュノ:ただ・・・・不思議なんだけど・・・・二人の人間がいいカンジでずっとやってけないのかな。/父:カップルみたいな?/ジュノ:うん、愛し合ってる人達。/父:彼氏問題なら、正直言ってその状態でデートするのは進めない。ますますコジレルだけだろ。/ジュノ:違うってパパ。/父:つまり、キモい?ギャル語で何て言ったっけ?気色い?キモ悪?/ジュノ:もういいって。そんなんじゃなくて、二人が永遠にハッピーなままいれないのかってこと。/父:それは、簡単じゃないのは確かだ。俺は世界記録を持ってるわけじゃないが、でもお前の新しい母親とは10年続いているし、幸せだと胸を張って言える。それで・・・・・個人的な意見だが・・・・一番はそのままのお前を愛してくれる相手を見つけることだ。


ジュノはそれを聞き、自分の最も自然に付き合える相手と仲直りすることにした。
翌日学校に行くと、ポーリーにケンカした事を謝った。

【意訳】ジュノ:私あなたを愛したみたい。/ポーリー:え、友達として?/ジュノ:違う。本当の意味で。だって、今まであった中で一番クールなんだもん。何も努力しないでも。/ポーリー:本当は相当努力してるんだけど。/ジュノ:普通に頭良いし、他の人と違う。あなたはいつも、私のお腹じゃなくて、私の顔を見てくれるし。で、いつもあなたを見ると、お腹で赤ちゃんがメチャクチャ蹴るの。/ポーリー:そうなんだ。/ジュノ:たぶん私の心臓が、あなたを見るたび激しく鼓動を打つからよ。/ポーリー:ぼくもだ。/ジュノ:あなたは私が望む全て。私の金メダリスト。/ポーリー:ディープキスしていい?/ポーリー:ウン。/友達リア:こら、ジュノ!そんなディープキスしてると、早く生まれちゃうよ!


そして、いよいよ出産予定日を迎える。
juno-barth.gif

ジュノは、彼氏ポーリーがレースだったので、何も告げなかったにも関わらず、ポーリーは駆けつけてくれた。
出産後の情景

【意訳】ジュノ・ナレーション:彼は子供を見ないことにした。私も同じ。私達の子ではないから。赤ちゃんは彼女のもの。/看護婦:息子さんと会ってみる?/バネッサ:息子だったのね。/バネッサ:私、どう見える。/母:新米ママ。今は全てが恐い/ジュノ・ナレーション:それは椅子とともに終わった。/壁の手紙:バネッサあなたがまだその気なら、わたしもそのつもり。ジュノ

この手紙が表したのは、たとえ夫婦が別れたとしても、子供は親になりたい人の元に行くべきだという、ジュノの思いだったろう。
生まれた赤ん坊は、ヴァネッサの息子になった。
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『JUNO/ジュノ』ラストシーン

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出産を終え、ジュノは普通の高校生の生活に戻った。
彼女は、相思相愛の彼とデュエットをする。

[歌詞和訳]ANYONE ELSE BUT YOU(あなたしかいない)
You're a part time lover and a full time friend(あなたは時々恋人、そして永遠に友達)
The monkey on your back is the latest trend(問題を背負うのは最近のハヤリ)
I don't see what anyone can see(私には見えない、誰もが見えるものが)
In anyone else but you(あなたしかいない)
Here is the church and here is the steeple(僕達は教会とその尖塔)
We sure are cute for two ugly people(二人醜くとも、二人ならキュート)
I don't see what anyone can see(私には見えない、誰もが見えるものが)
In anyone else but you(あなたしかいない)
We both have shiny happy fits of rage(二人は幸せすぎてケンカもする)
I want more fans, You want more stage(僕はもっと楽しみたいし、君はもっと緊密になりたい)
I don't see what anyone can see(私には見えない、誰もが見えるものが)
In anyone else but you(あなたしかいない)
Always trying to keep it real(あなたはいつも飾らない)
I'm in love with how you feel(あなたを感じるまま私は愛する)
I don't see what anyone can see(私には見えない、誰もが見えるものが)
In anyone else but you(あなたしかいない)
Kiss you on the brain in the shadow of the train(列車の影の中あなたの頭にキスをする)
I kiss you all starry eyed,(あなたの夢見る瞳にキスをする)
my body's swinging from side to side(私の体は端から端へと揺れ動く)
I don't see what anyone can see(私には見えない、誰もが見えるものが)
In anyone else but you(あなたしかいない)
The pebbles forgive me, the trees forgive me(小石も、木々も私を許す)
So why can't you forgive me?(でも君が許さないのはなぜ?)
I don't see what anyone can see(私には見えない、誰もが見えるものが)
In anyone else but you(あなたしかいない)
Tu tudo tudo tudududu...(スキャット)
I don't see what anyone can see(私には見えない、誰もが見えるものが)
In anyone else but you(あなたしかいない)


この映画を見たカップル達が影響を受け、このデュエット曲を仲良く歌いSNSに上げるのがブームになったようです・・・・・・・
そんなカップルの幸せソングを・・・・・・・・








ホント外人さんは皆さん個性的。


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『JUNO/ジュノ』結末感想

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普通の高校生が誰でもしでかしそうな、ふとした好奇心から始まった騒動。
一つの命を産んだ少女は、その命を手放した変わりに、人生の重さと輝きを知りました。
新たに産まれた一つの命は、それを望む人のもとにもたらされ、その赤ん坊の幸福と母と成る女性の幸福の、二つの喜びがこの世に誕生しました。

この映画はハッピーエンド。
でもこれはこれとして避妊をしっかり・・・・・・・・・

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2017年04月25日

映画『JUNO/ジュノ』16歳の妊娠騒動/感想・解説・意味・受賞歴

『JUNO/ジュノ』感想・解説 編

原題 Juno
製作国 アメリカ
製作年 2007/96分
監督 ジェイソン・ライトマン
脚本 ディアブロ・コディ


評価:★★★☆  3.5点



昔、いろいろな花の種を扱う卸問屋の倉庫で、棚が崩れあらゆる種が混ざったという事故があったそうです。
種が混じれば売り物にならず、その損失額は膨大で、みんな頭を抱えていたところ、ある社員が提案しました。
それは「会社で事故がありました。スミマセン、何が入ってるか分からないけど、買って下さいませんか」という商品を販売しましょうというものでした。
やらないよりましと売り出したところ、その失敗に端を発した商品は、無事完売し新たな商品企画へもつながり、失敗が成功の母になったそうです。
この映画も、望まず妊娠してしまった女子高生が、前向きに失敗に対処することで成長する物語かと思いました・・・・・・


『JUNO/ジュノ』予告動画



『JUNO/ジュノ』キャスト

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『JUNO/ジュノ』感想

映画の魅力
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この映画は、$7,500,000-の制作費の小品で、上映館も初めはたった7館でした。
しかし口コミで広がって、ティーンの少女達の支持を受けて、上映館も2400館まで拡大し、最終的には$231,411,584-の大ヒットになったのです。
juno-rogo1.gif
その魅力は、16歳の妊娠という重いテーマを、明るくPOPで、前向きなデザインで表現したことだと思います。


そして現代のハイティーンの等身大の感覚で、この問題を語りきったのが大きいだろうと感じました。
この映画は各国の映画賞で高い評価を受けていますが、中でもその脚本は第80回(2008年開催)アカデミー賞を始め多くのウィナーに輝くほど評価されました。

『JUNO/ジュノ』受賞歴

第80回アカデミー賞:脚本賞(ディアブロ・コーディ)
英国アカデミー賞:脚本賞
第79回ナショナル・ボード・オブ・レビュー:ブレークスルー女優賞(エレン・ペイジ)、脚色賞
サテライト賞:作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)
放送映画批評家協会賞:コメディ作品賞、脚本賞
アメリカ脚本家組合賞:脚本賞
第23回インディペンデント・スピリット賞:作品賞、主演女優賞
ゴッサム賞:ブレイクスルー女優賞
MTVムービー・アワード:女優賞
ティーン・チョイス・アワード:主演女優賞(コメディ部門)、ブレイクスルー女優賞、作品賞(コメディ部門)
他多数


脚本家ディアブロ・コーディー/2008年オスカー受賞スピーチ
【意訳】何が起こったの?これは脚本家にくれたもの、私は全ての脚本家に感謝したい。特に感謝したいのが、共にノミネートされた仲間。だって私はあなた達を崇拝して、毎日学んできたから。だから感謝します。アカデミー協会に感謝します。フォックスサーチング(映画会社)のMuddさん、 Mandate、 Dan Dubieckiさんに感謝します。そして我らが驚異的な出演者、超人エレン・ページに感謝します。(以下、名前を挙げて感謝)そして、何よりも、私を私のまま愛してくれる、私の家族に感謝します。


この、ディアブロ・コーディーという若い女性脚本家が描くセリフが、10代女子高生のライブ感のある言葉で出来ている点が評価されたのだと思います。
実はこの脚本家は、元ストリッパーという経歴を持つ、相当イナセなギャルです。そんな雰囲気がオスカーの豹ガラに現れているように感じます。
ともあれ、この映画の脚本は、主演のペイジが「スラングだらけの脚本を読んだ瞬間、ジュノに共感を覚えた」と話しているように、スラングと高校生英語に満ちていて、英語圏ネイティヴでなければ、その斬新さフレッシュな魅力は十分に理解できないのだろうとも想像します。
妊娠したと友達に連絡するシーンでのスラング例
juno-slang.jpg上:It's probably just a food baby, did you have a big lunch?
それって食べ過ぎ(Food Baby)じゃない、でかいランチ食べたでしょ?
中:This is not a food baby, I've taken three pregnancy tests and I am fo' shiz up the spout.
食べ過ぎ(Food Baby)じゃないって、妊娠テスト3回もやったんだから、マジ絶対妊娠だって。
下:How did you even generate enough pee for three pregnancy tests? That's amazing.
どうやって、妊娠テスト3回分もオシッコ出たわけ?ビックリなんだけど。

上の文章だけでも、私の貧しい英語力では下の三つは、まるで分かりませんでした。
Food Baby=アメリカの女子高生は食べ過ぎて丸くなったお腹をFood babyと呼ぶらしい。
Fo'shiz=確実、間違いないという意味らしい。
Up the spout=見込みがない、悪い、害される状態を言うらしい。転じて、妊娠という意味でも使うらしい。


いずれにしても、この映画の持つ魅力は、そんな10代のリアルな等身大の姿で前進する姿を、映画として表現した点にあるだろうと感じました。

juno-poster.jpg冒頭の種の例ではないですが、少なくとも、もう妊娠という主人公にとっての失敗をしてしまった以上、少しでも好転するように努力するというのは、正しい選択だと思うのです。

この映画の主人公は、好奇心からそれほど好きでもない相手ポ−リーとSEXをし、妊娠してしまいます。

その危機状況に対し10代の女子高生が、あふれる生命力で突き進みます。
そして、仮にこの映画の主人公と同じ状況に陥った少女達に、現実的に可能な解決策を一つ提示したことは、賞賛されていいと思います。


少なくとも、出来た命を中絶という形で終わらせなかった事に、個人的には好感を持ちました。
juno-poo.gif様々な意見はあるかとは思いますが、自分で育てられない以上、親になりたくともなれない大人に命を預ける、譲渡するという選択肢も、現実的な解決策として考慮して然るべきべきだろうと感じました。
この映画の主人公は、いい加減でチャランポランだと思いますが、10代は多かれ少なかれ似たようなもので、少なくとも、この映画が圧倒的に支持されたことを考えれば、現代アメリカのティーンに共感を呼ぶキャラクターだったのは間違いありません。

つまりは、誰にも明日、同じ状況が生じるという現実があるからこそ、この映画は支持されたのでしょう。
その結果生じた妊娠を通じて、家族の絆や、友達の大切さ、そして本当に大事なものが何かという結論に達します。
それは、成長と言えるでしょう。

この映画の結末はハッピーエンドと言えるものだと思います。

この映画の J.K.シモンズは優しく理解のある父を演じて説得力があります。
この人は、『セッション』では鬼教官役で凄味を見せたりと、いぶし銀の演技が個人的に大好きです。
大切なものが何か語る父
juno-sunshine.gif
上:良い時も悪い時も、醜くても、可愛いくても、美しくても、正しい相手ならいつだってお前の事を高く評価してくれるさ。

当ブログ関連レビュー:
デイミアン・チャゼル監督作品『セッション』
J.K.シモンズがアカデミー助演賞に輝いた作品
ジャズにかける思いがぶつかり合う


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『JUNO/ジュノ』感想

アメリカの養子制度
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日本では違和感があるかもしれませんが、この映画でも語られているように、養子制度はアメリカでは一般的なようです。
養子縁組
アメリカ合衆国では、年間12万件を超える養子縁組が成立しているとされる。その中心的な担い手となるのは、民間団体と里親制度(Foster Care)下にある子を対象にあっせんする公的機関で、この2タイプが養子縁組の全体件数のおよそ3分の2を占める。養子縁組に関する認知度も9割近くととても高く、アメリカ人の約3人に1人が養子縁組を考えたことがあるとアンケート調査に回答している。このような社会的な関心の高さを背景に、政府により養親に対する支援が行われている。
養子の養育費を税控除という形で補助する仕組みがあり、2012年度は一世帯あたり最大12650ドルの控除が可能となっている。 アメリカでは1990年代に、ネグレクト(育児放棄)や児童虐待が深刻化したことを背景に、クリントン政権下で「養子縁組と安全な家族法」が成立し、養子縁組を増やすため、国を挙げての取り組みが行われた(wikipediaより)


上のように、アメリカや欧米諸国では社会福祉の一環として養子縁組が盛んです。
juno-tom-yousi.jpgたとえばハリウッドスターの夫婦は必ずと言っていいほど、養子を取っていますが、それは社会貢献のアピールという側面もあるようです。
ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの元夫婦は、6人いる子どもの内、3人が養子。
トム・クルーズとニコール・キッドマンの元夫婦には、養子が2人いて今はトムと共に暮らしているようです。

アメリカでは、悲惨な状況にある子供たちを救おうという努力がなされていて、年間12万組の養子縁組が行われているそうで、要保護児童の80%近くが里親や養子縁組などの制度で、新たな「家庭」を得ているということです。
逆に言えば、アメリカにおける児童虐待などの問題がそれほど深刻だという事の裏返しでもあるでしょう。

Film-USA-flag.png
その里親の形も、この映画で語られているようにさまざまです。

基本的には実母(映画のジュノ)が里親候補者の中から気に入った相手を選びます。
そして、子供の成長や交流を、実母も養母も共有する「オープンアダプション(開かれた養子縁組)」と、実母には子供の情報を知らせない「クローズダプション(閉ざされた養子縁組)」を選ぶそうです。

ジュノは映画の中で、最近主流の「オープンアダプション(開かれた養子縁組)」は嫌だと言い、古いタイプの「クローズダプション(閉ざされた養子縁組)」を選んでいます。
これは、子供を産んだ後は関わりたくないという、ジュノの意思が尊重されたと結果だと言えます。

このアメリカの養子縁組制度は、アメリカの子供たちの状況から導きだされた制度であり、公共意識ゆえの結果だとも思います。
juno-photo.jpg
しかし日本においては、乳児院や児童養護施設などで生活する子どもが全国に約3万3千人いて、里親など家庭環境で養育される子どもは5000人弱だそうです。

まだまだ日本では里親制度は浸透しておらず、ほとんどの子どもたちが、全国の児童養護施設で過ごしているのが現状だそうです。
したがって日本では、ジュノのように10代で妊娠し育てられないというときには、中絶に走ったり、酷い時はトイレに産み落として放置するような事態になるのではないでしょうか。


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『JUNO/ジュノ』感想

ささやかな、でも重大な心配
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実はこの映画の完成度は、★4つはある作品だと個人的には思うのですが、どうも気になる点があって、中途半端な3.5という評価にしました。

juno-poster2.jpg
その★-0.5分の要因とは、やはりこの失敗を犯さないように釘を刺してほしいという思いからです。

単純に避妊をすれば済む話ですし、必要なことをしなかったというペナルティーを書くことが、やはり悲劇を減らすために必要だと思うのです。
また、この映画では全てがメデタシメデタシになっていますが、望まれずに生まれた子供に対する、憐憫や謝罪がもっとあっても良いのではないかと感じます。

きっと、そんな子供たちが持つ悲劇の描写がもう少しあれば、現実における抑止力になるのではないかと思うのです。

もっともアメリカの10代にとっては、避妊や中絶、望まれない命の事は、周りで頻々とおこる実例や、学校教育で十分判っていることなので敢えて触れないということかもしれませんが・・・・・・・・・
F-japan.jpg
だから、これは日本に住んでいる人間の、この状況に対する非日常感ゆえに出た「こうなる前にちゃんと考えろと、映画は言ってほしいという」感慨かもしれません。

またそんな、日米の違いという点も考えると、この映画のジュノは自分で考え解決策を見出し、それを親は承認する形になっています。
これは個人主義の発達した欧米流の思考法で、子供といえども独立した人間としてその判断を尊重するという考え方だろうと思います。

しかし日本は家を中心に社会制度が構築されているので、他人を家族に迎えるという点に違和感を持ちます。
その結果としてジュノが産んだような望まれない子は、圧倒的に社会の一般家族の構成員に比べ、日本では公的にも私的にも不利になるだろうと思わざるを得ません。
さらに子を宿した方も、日本でこの事態が起こればたぶん学校は退学になるでしょうし、出産後は人生は元通りのハッピーエンドとは成りえないことを考えると、やはりハッピーなだけではない痛みや苦みも描いてほしかったという事でした。

これを見て、特に日本のティーンが、妊娠なんて大した問題じゃないと考えちゃうと困るという大人の意見です。

関連レビュー:アメリカの養子縁組を扱った映画
『愛する人』
2009年のロドリゴ・ガルシア監督作品
新しく生まれた命を巡る女たちの思い



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posted by ヒラヒ・S at 17:15| Comment(4) | TrackBack(1) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする