2017年05月04日

オスカー男優賞『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』アメリカの業/感想・解説・意味

ゼア・ウイル・ビー・ブラッド(感想・解説 編)


原題 THERE WILL BE BLOOD
製作国 アメリカ
製作年 2007/158分
監督・脚本 ポール・トーマス・アンダーソン
原作 アプトン・シンクレア


評価:★★★☆  3.5点



アメリカの石油産業の創生期を骨太に描いた、重厚な映画です。
この映画は、壮絶と言っていい男の生きざまを、ダニエル・デイ・ルイスが鬼気迫る演技で魅せ、その結果はオスカーでの主演男優賞を含め各国賞に輝きました。
この映画の題名『そこにブラッド=血があるはずだ』という"ブラッド"には、血族=肉親、産業の血=石油、キリストの血=宗教の意味が語られていると思います。

『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』解説

アメリカの石油産業の歴史


この映画の主人公、ダニエル・デイ・ルイス演じるダニエル・プレインビューのモデルは、エドワード・ローレンス・ドヒニーという実在の人物だという。
エドワード・ローレンス・ドヒニー(Edward Laurence Doheny,1856年8月10日- 1935年9月8日)
Blood-Edward_L._Doheny.jpg1892年にロサンゼルス市油田を開発しカリフォルニア州の石油王になった。彼の成功は南カリフォルニアに石油掘削ブームを起こし、1902年に彼の財産を売却したときに彼に富をもたらした。
その後、メキシコのタンピコで収益性の高い石油事業を開始し、1901年にアメリカ人として初の井戸を掘削した。メキシコ革命期間中に操業を拡大し、タンピコからメキシコの「ゴールデンベルト」内に大きな新しい油田を開設した。彼の持ち株は、1920年代の世界最大の石油会社の 1つであるパンアメリカン石油&輸送会社として発展した。
1920年代には、ドヒニーはティーポットドームスキャンダルに関与し、アルバート・フォール内務省長官に10万ドルの賄賂を提供したと非難された。ドヒニーは2度の賄賂を払って無罪だったが、フォールはそれを受け入れることで有罪判決を受けた。アプトン・シンクレアの1927年の小説「Oil!」のキャラクターJ.アーノルド・ロス (2007年の映画「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド」の原作)は、ドヒニーに基づいている。(英語版wikipediaより)

この人物は石油王というだけあって、ビバリーヒルズにドヒニーロードと名前がつくほどの成功者だった。

ここでアメリカの石油開発の歴史を参考までにまとめさせて頂こう。
日本では江戸時代の末期、日米修好通商条約が締結された1858年、埋蔵石油の採掘を目的にアメリカにセネカ・オイル社が設立。
blood-edowindoreak.bmp採掘責任者としてエドウィン・ドレークがペンシルバニア州タイタスビル採掘開始。(右:エドウィン・ドレーク)
地下石油の採掘は固い岩盤に阻まれ技術的困難に直面し、資金は枯渇しセネカ・オイル出資者は撤退。
ドレークは自力で資金を調達し採掘を続け、1859年石油が掘削パイプから湧出、地下石油の採掘に成功し「世界で初めて石油を発掘した男」と呼ばれた。
この成功を見て、数年後アメリカでは空前の石油投資ブームとなり、全米各地で採掘に新規参入し産油量が増加、オイルラッシュ時代に突入。
石油の消費がランプの需要位だった時代に、大幅な供給過多に陥り原油価格は暴落、当初1バレル20米ドルが1861年には10セントにまで下落した。
石油価格の急落に事業家たちは、カルテルによる産油量規制によって価格操作をし、価格を回復させた。
John_D._Rockefeller.jpgその一方石油事業者の統合の時代が到来し、各社が鎬を削ったが、鉄道会社とカルテルを結び輸送費を削減したジョン・ロックフェラー(右写真)率いるスタンダード・オイル社が勝ち残った。
ロックフェラーは会社をトラスト化し、ピーク時はアメリカの石油の90%を支配した。そのやり方は強引で明らかに非合法な手段も厭わなかった。
T型フォードが世に広まり、ガソリン需要やストーブ燃料として石油消費も増大していく中で、一社独占体制にアメリカ政府が1911年、「反トラスト法」が制定され、スタンダード・オイルは地域ごとの34社へ分割解体される。
1911以降は、スタンダード・オイルを前身とするエクソン、モービル、ソーカル、20世紀のテキサス石油ブームで生まれたガルフ、テキサコ、オランダの植民地の石油を扱うロイヤル・ダッチ・シェル、イギリスの植民地の石油を扱うブリティッシュ・ペトロリアム7社が支配する「セブンシスターズ」の石油メジャーが世界の石油市場を支配していく。

この映画のダニエル・プレンビューがカリフォルニアで石油採掘をしたのが1912年ごろだと描かれている。
上でのべた「セブン・シスターズ」体制の初期であり、この頃には個人の力では石油を市場に売ることは出来ないような状況だった。
これは、個人の努力の成果が、大資本により奪われる産業構造がすでに出来上がっていたことを意味しただろう。
それを示すように、この映画には主人公ダニエルがスタンダード・オイルと交渉し蹴る場面が出てくる。
ここには息子の事で怒ったことは勿論、そんな大資本に対する怒りもあったのではないかと思える。
スタンダード・オイルとの交渉
テルフォード:息子さんはどう?/ダニエル:お尋ね感謝する。/テルフォード:我々に何か出来るかね?/ダニエル:お尋ね感謝するが、それはもういい。/テルフォード:君達の計画は?/ダニエル:私の油田を買収したいんだな?/テルフォード:そう。(以下:コヨーテヒル、リトルヒル、の契約条件をつめる)/テルフォード:今ここに一分座っているだけで、我々は君を百万長者にした。/ダニエル:売った後俺は何をすればいい?/テルフォード:私に聞いているのか?/ダニエル:売った後俺は何をすればいい?/テルフォード:息子さんの世話をするとか。/ダニエル:・・・・/テルフォード:私には分からんよ。

ダニエル:もし、スタンダードが100万ドルで買いたいっていったら、なぜだ?それはなぜだ?/テルフォード:なぜか分かるだろう。/ダニエル:我々や他の人間が苦労した仕事を買うばかりじゃなく、お前達で地面を引っかいて、探すがいい。/カーター:私はひっかいたさ/テルフォード:何が望みだ?/ダニエル:お前達は輸送費を変更するだろう?/テルフォード:我々は輸送費に口出しせんよ、それは鉄道会社の仕事だ・・・・・・・/ダニエル:お前達は鉄道会社を持っていないのか?もちろん持ってる。もちろん持ってる。/テルフォード:どうやって石油を外に持ち出すんだ?パイプラインを引いて、ユニオンオイルと取引するか?冒険だね、もし決裂したら、足元にある石油の海をどう持ち出すんだ?我々によこしたまえ。金持ちになれるぞ。息子さんと一緒に暮らせばいい。それは偉大な発見だ・・・・・さあ君を助けさせてくれ。/ダニエル:俺の家族の生活をどうするか、俺に説教か?/テルフォード:埋蔵された油田より、それは今の君にとってより重要だろ。我々に買わせてくれ。/ダニエル:ある夜・・・・・お前の家に入って、寝ているところ、その喉を掻っ切ってやる。/テルフォード:何?何言ってるんだダニエル、気でも狂ったのか?/ダニエル:俺の言っていることが分かったか?/テルフォード:ああ、分かった、何でそんなことを言うんだ?/ダニエル:俺の息子のことを言うな。/テルフォード:何でそんな怒って、俺の喉を切るなんて言うんだ?/カーター:俺の息子のことを言うな。/テルフォード:俺達は何も言ってない。怒らせたんだったら謝るさ。/ダニエル:俺がどうするか見てろ。

そもそも、山師という一か八かのるかそるかの、命がけの仕事を、ただ机の上での談合で上前をはねるような「石油メジャー」が支配する産業構造に怒りを感じるのは当然だと思う。
Film-USA-flag.pngそんな個人を抑圧する大資本が、個人的事情に口を出す事に怒りを感じるのも無理は無いだろう。
そもそもアメリカ移民の人々の基本的な動機は、本国で困窮し生きるために国を出なければなら無い人々だった。
そんな苦難の果てに、個々が努力して生きる場を獲得する戦いが、アメリカでも日々繰り広げられた。
そういう意味では、この映画を見れば分かるが、全てを犠牲にして勝ち取った石油なのだ。
実を言えばアメリカの石油とは、そんな男達の血であったかも知れない。
その血を絞り取る事で、アメリカの産業界は世界を制覇したのだ。
アメリカの歴史において、石油資源をいち早く産業化し、市場を支配し得たことの重要な意味は計り知れない。

しかし、その大資本化していく中で、どれほど個人が犠牲になったかが、この映画の主人公に表されていると思う。

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『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』解説

アメリカとキリスト教


この映画の中で「キリストの血」という言葉が出てくる。
Film-USA-flag.png
アメリカ文化とはキリスト教と不可分であり、大統領選挙ですらその信徒に左右されるほどだ。

なぜならアメリカの最初の植民者達の中には、イギリス国内でプロテスタント迫害から逃げてきた人や、本国の宗教的堕落が許せず、正しいキリストの王国を作るという理想で移住した人たちがいた。
禁酒法がキリスト教の影響で施法されたように、アメリカでは現在でも、避妊を認めないとか、進化論を教えないという地域があり、事実米ピュー・リサーチ・センターが2015年11月の調査で、まだ6割しか進化論を信じていないほど、宗教的信仰心が強い。


この映画のもう一人の主役というべき、イーライ・サンデーは「第三の啓示教会」の伝道師ということになっている。
これは架空の教団だが、イーライには現実のモデルがいて、福音派伝道師ビリー・サンデーだという説もある。
ビリー・サンデー(William Ashley "Billy" Sunday 1862年11月19日〜1935年11月6日)
Blood-Billy_Sunday_1921.jpg1880年代の大リーグのナショナルリーグで人気の外野手になった後、アメリカで20世紀初頭の20年間で最も有名で有力な伝道者。
アイオワ州の貧困状態で生まれたサンデー、アイオワ州兵士孤児院で数年間過ごした後、地元の野球チームや野球チームでプレーした。彼のスピードと俊敏性は、8年間メジャーリーグで野球をする機会を提供した。彼はアベレージ・ヒッターであり、巧走塁で知られている良い野手だった。
1880年代に福音派キリスト教に改宗し、サンデーはキリスト教の牧師活動のために野球を引退した。彼は徐々に中西部の説教壇伝道者としての能力を開花させ、20世紀初頭には国内で最も有名な伝道者となり、口頭での説教と熱狂的な伝道会を行った。アメリカの大都市で広範に知られた伝道活動を開催し、ラジオの登場前にはあらゆる伝道師の中で一番の人を集めた。彼はまた多額の金を稼ぎ、豊かで影響力のある上流階級の一員になった。サンデーは禁酒法の強い支持者だった。
彼の聴衆は、1920年代には、サンデーが齢を重ね、宗教的な復興活動人気が低下し、娯楽の代替源が登場したことで減少した。しかし、サンデーは説教を続け、彼の死まで、忠実なキリスト教の擁護者となった。(英語版wikipediaより)

当時、ラジオやTVの無い時代、宗教の伝道会、説教とは、娯楽としても人々から人気だった。
この映画でも、イーライが説教するシーンを見ると、信者達の宗教的なカタルシスを眼にすることができる。
イーライの説教
【意訳】イーライ:啓示があった。そう、昨夜、神を見たのだ。神の息吹が我が体内に入るのを感じた。そしてそれは深く私の腹に入り駆け巡った。そして、私の腹が囁くように語った、決して叫びではなかった。”その女性に、その手で触れよ。そして彼女を癒せ”と。そう、親愛なるハンター夫人、関節炎で苦しんでますね。/ハンター夫人:ええそうよイーライ。/イーライ:そう。悪魔があなたの両手に宿っている、それを私は引きずり出そう。さあ熱にうなされたような方法では無く、私の中の精霊が新しい方法を知らせてくれた。

それは優しく囁くのだ。ここから出て行け邪悪な霊よ、ここから出て行くのだ邪悪な霊よ。出て行け。ここから出て行くのだ邪悪な霊よ。出て行け。今すぐこの女性の体から、ここから去れ霊よ二度と戻って来てはいけない。もし戻れば神の宿る靴先で蹴り上げ、お前の歯を砕き、汚濁の彼方に吹き飛ばし、地獄へと叩き返し、我が歯がある限り、お前を咬み続け、もし歯がなくとも、離しはしない。こぶしがある限り殴り続ける。出て行け邪悪な霊よ、出て行け霊よ、出て行け!ハレルヤ!/信徒:ハレルヤ!神をたたえよ、栄光の日よ!神をたたえよ!アーメン、感謝しますイエスよ。感謝します神よ!

このイーライは治癒師で精霊の宿主だと語られている。
この「第三の啓示教会」の教義の特徴に、罪を告白することによって洗礼を受けるという行為がある。


blood-christ.jpgまたその教団名「第三の啓示」とは、モーゼに示された十戒が「第一の啓示」、キリストの口を通じ語られた神の言葉が「第二の啓示」、そして再びイエスが地上に再臨し神の千年王国を現世に打ち立てるのが「第三の啓示」だとされる。
つまりは、現世にキリストが何らかの形で復活することを指す。


これは、先に述べたように、半分以上が進化論を信じていない現状を考えれば、1910年当時のアメリカでは真剣に神の再臨があると信じる人々がたくさんいたのである。

つまりアメリカには「キリストの血」が流れ、その敬虔さと共に狂信的な一面も見え隠れする。
同時にその宗教を悪用する姿もこの映画では描かれているように思える。

『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』解説

アメリカ移民の孤独


最後にこの映画で語られる血とは、血縁、血族だ。
故郷を遠く離れてアメリカに来た移民者達は、根本的に不安と孤独を感じざるを得なかったはずだ。
それゆえ、イタリア系アメリカ人のマフィアではないが、地縁・血縁に強く依存するように思える。

この映画では、早く親元を離れた主人公の元に、義理の兄弟だというヘンリーという男が現れる。
しかし実際の弟は結核で死んでいて、その素性を詐称していたのだった。
お前は本当に俺の弟か?

ヘンリー:ダニエル、俺は友達だ。君を傷つけようとは思わない。絶対。生き伸びたい

それは生まれ故郷で、困窮が原因だったにしても、宗教的迫害から逃れたにしても、基本的には追い出されたという状況から、更に望郷の念が強くなるものではないだろうか。

その心理的空白を埋めようとして、経済的成功をあくまで追求する成功への渇望と、宗教的な純粋性・狂信性につながって行くだろう。

この下のシーンは、偽の弟を殺した後、本当の弟の書いた日記を読み涙するシーンだ。

ここに、アメリカ社会の根本にポッカリと開いた孤独を感じざるをえない。



『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』解説

映 画 賞 受 賞 歴

オスカーでの主演男優賞を含め各国賞に輝きました。
第80回アカデミー賞/主演男優賞:ダニエル・デイ=ルイス、撮影賞:ロバート・エルスウィット

第58回ベルリン国際映画祭/監督賞:ポール・トーマス・アンダーソン
第74回ニューヨーク映画批評家協会賞/男優賞:ダニエル・デイ=ルイス、撮影賞:ロバート・エルスウィット
第65回ゴールデングローブ賞/男優賞(ドラマ):ダニエル・デイ=ルイス
第61回英国アカデミー賞/主演男優賞:ダニエル・デイ=ルイス
第60回全米撮影監督協会賞:ロバート・エルスウィット
第42回全米映画批評家協会賞/作品賞、主演男優賞:ダニエル・デイ=ルイス、監督賞:ポール・トーマス・アンダーソン、撮影賞:ロバート・エルスウィット
第33回ロサンゼルス映画批評家協会賞/作品賞、男優賞:ダニエル・デイ=ルイス、監督賞:ポール・トーマス・アンダーソン、美術賞:ジャック・フィスク
第14回全米映画俳優組合賞/主演男優賞:ダニエル・デイ=ルイス
第13回放送映画批評家協会賞/主演男優賞:ダニエル・デイ=ルイス、音楽賞:ジョニー・グリーンウッド

BBC『21世紀最高の映画ベスト100』で、第三位


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2017年05月03日

オスカー男優賞『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』アメリカの業/詳しいストーリー・あらすじ

ゼア・ウイル・ビー・ブラッド(ストーリー・あらすじ編)


原題 THERE WILL BE BLOOD
製作国 アメリカ
製作年 2007/158分
監督・脚本 ポール・トーマス・アンダーソン
原作 アプトン・シンクレア


評価:★★★☆  3.5点



題名『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』とは、直訳すれば「そこに血がある(だろう)」という意味かと思います。
しかし、この「血」が実に多くのモノを指しており、その「血」を巡る一人の男の人生を描く映画だと言えます。
壮絶と言っていい男の生きざまを、ダニエル・デイ・ルイスが鬼気迫る演技で魅せ、その結果はオスカーでの主演男優賞の受賞という形で評価されました。

『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』予告



『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』あらすじ


1898年のアメリカ。穴を掘る一人の男。
彼、ダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、足の骨を折りながらも金を採掘した。そして次に手掛けたのが石油採掘だった。
1902年数人の男達を従え、縦穴を掘り続け、死人を出しながらも油田の採掘に成功した。
blood-oil.pngblood-torain.png
その傍らには、バスケットに入った赤ん坊がいた。
それから10年ダニエルは、更なる油田を求め各地で試掘の交渉をして回っていた。
その場には成長したH.W.(ディロン・フレイジャー)を伴っていた。
blood-oyako.jpg

そんなダニエルの元に、ポール・サンデー(ポール・ダノ)という若者が訪ねてきた。
blood-phol.jpg彼は、自分の牧場には石油が眠っているという情報を、金で売った。
そのの情報を元にプレインヴューは、H.W.仕事の相棒フレッチャー(キアラン・ハインズ)と相談し、カリフォルニアの小さな町リトル・ボストンのサンデ−牧場を訪問した。
周辺を調査し確信したダニエルは、牧場主エイベル・サンデー(デビッド・ウイリス)に牧場の購入を申し入れた。
その交渉にポールの双子の弟で「第三の啓示教会」伝道師イーライ(ポール・ダノ)が割って入り、自分の教会の為に寄付を要求しダニエルは受けた。
blood-nego.png
ダニエルはサンデー牧場を皮切りに、その周辺の土地を買い続けた。ただし少ない面積ながら、バンディ家の土地だけは買収できなかった。
ダニエルはいよいよ油田の試掘に取り掛かる。記念すべき初掘削式の前に、イーライが神の祝福を授けたいと申し出たが、式でダニエルはイーライの願いを無視した。
その後ダニエルは掘り続け、ついに油脈を掘り当てたが、その時石油より先にガスが噴出し、櫓にいたH.W.を吹き飛ばした。
作業員:ガスだ!/ダニエル:ライトを消せ(走る)火を消せ!

そのショックでH.W.は聴力を失ってしまう。
ガスにつづいて油が天高く吹き上がったが、その油に火が付き火柱となった。家に避難したH.W.が一人にしないでと頼むが、ダニエルはそれを振り切って現場へ走った。
blood-fire.jpg
火炎はダイナイマイトの爆風によって、ようやく消し止められた。

油田から油は湧き出し続け、ダニエルは富を手にしたが、耳の聞こえないH.W.とダニエルは意思疎通が困難になる。
そこにイーライがやってきて、約束の教会への寄付5,000ドルを要求した。

イーライ:いつ金を貰えるんだ、ダニエル?/ダニエル:お前は「治癒師」で「精霊の宿主」だろう。いつお前は俺の息子の耳を直しに来るんだ?出来ないのか!/イーライ:あの油田を祝福していれば−ダニエルこんなこと/イーライ:アンタは第三の教会に5000ドル払うと事前にで決めたはずだ。/ダニエル:抵抗するなガキめ!どうだ、いいぞ。お前を地面の下に埋めてやる。おお。お前を埋葬してやる。

イーライをダニエルは殴打し、H.W.の耳をなぜ直せない、お前を埋めてやると責めた。
イーライは家に戻ると、父に掴み掛り、家にはいない双子の兄弟ポールと共に、2人のせいでダニエルをのさばらせることになったと八つ当たりした。
blood-stupid.gif
(上:神は愚かな人間のままでも救ってくれると思うのか)

そんな時、ダニエルの元に彼の弟だと名乗るヘンリー(ケヴィン・J・オコナー)がやってきた。
彼はダニエルと共に仕事に参加するようになる。
blood-hen.png
H.W.はそんなダニエルの日記を盗み見て、ダニエルとヘンリーの密接な関係に疎外感を持ち、ある晩家に火をつけてしまう。
そんなH.W.をダニエルは汽車に乗せ、騙してサン・フランシスコの寄宿舎学校に追いやった。
blood TRIN.gif

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そんなある日ダニエルの元に大手石油メジャー、スタンダード・オイルのテルフォードが訪ねてきて、彼の油田を100万ドルで買うとオファーした。
交渉はまとまるかと思われたが、金をつかんで引退したら「息子の世話ができる」と相手に言われ、ダニエルは息子のことに口を出すなと激高し席を立つ。
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(上:お前の首を掻っ切ってやる)

そして、ユニオン・オイルと契約し、自らパイプラインを海まで引く決意をする。ダニエルはパイプラインの施設調査のためヘンリーと共に旅立つ。
最初に唯一買収できなかった、バンディ家に立ち寄るが、当主が不在だった。
その後旅を続けついに海に達し、パイプラインのコースが決まった。
海で遊ぶダニエルは世間話の中で、ヘンリーが本当の弟かと疑念を持つ。
brood-see.png
酒場で飲みながらも気分は晴れない。その夜ダニエルは、ヘンリーに銃を突きつけ、本当に弟なのかと問い詰めた。ヘンリーは、ある町でダニエルの弟に会い、彼が結核で死んだので弟に成りすましたと告白した。
ダニエルは許しを請うヘンリーを射殺し、埋めた。
Blood-henkill.png

Blood-bandy.png翌朝、バンディー家当主ウィリアム(ハンス・ハウェス)がダニエルを起こした。
彼はヘンリー殺しも知っており、パイプラインを自分の土地に通したければ、イーライの洗礼を受ける事を要求した。

パイプラインのためダニエルは、イーライの教会で「子供を捨てた罪びとだ」と屈辱の懺悔をさせられ、洗礼を受けた。


土地の問題が解消され、パイプラインが順調に建設される中、ダニエルはH.W.を呼び戻した。
「愛している」というダニエルに対して、H.W.は怒り殴りかかった。
しかし、その後二人はパートナーとして常に傍らにいて、共に仕事の場にいた。
イーライは宣教のため町を離れていった。

月日がたち1927年青年H.W.(ディロン・フリーシャー)はイーライの妹メアリー(シドニー・マカリスター)と結婚をした。
ダニエルにとって順風満帆かと思われた時、H.W.が彼にある相談を持ちかけた・・・・・・・
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『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』出演者


ダニエル・プレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)/ポール・サンデー:イーライ・サンデー(ポール・ダノ)/ヘンリー(ケヴィン・J・オコナー)/フレッチャー(キーラン・ハインズ)/H・W・プレインビュー(ディロン・フリーシャー)/メアリー・サンデー(シドニー・マカリスター)/H・M・ティルフォード(デヴィッド・ウォーショフスキー)/ジーン・ブレイズ(ダン・スワロー)/ウィリアム・バンディ(ハンス・ハウェス)


関連レビュー:ダニエル・デイ・ルイス出演
『ギャング・オブ・ニューヨーク』
ダニエル・デイ・ルイスとデカプリオの対決
アメリカ神話の創世紀


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2017年05月01日

難解映画『ノーカントリー』コーエン兄弟の傑作/ネタバレ・ラスト・結末感想・解説

『ノーカントリー』ネタバレ・ラスト 編

原題 No Country for Old men
製作国 アメリカ
製作年 2007
上映時間 122分
監督・脚本 ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
原作 コーマック・マッカーシー


評価:★★★★  4.0点




この映画の、哲学的なテーマと、空から降るような暴力が組み合わさった時、今世界が直面している事態の本質が見えてくるように思う。
このシガーの行動と、結末のトムの言葉が語るものに、この映画の本質的なメッセージが現れていると、個人的には思った。
このラストの放り投げられるような終わり方は、この映画の続きが観客一人一人に委ねられたことを意味しているだろう。

『ノーカントリー』予告


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以降の文章に

『ノーカントリー』ネタバレ

があります。ご注意ください。

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保安官トムがモーテルに駆けつけたとき、メキシコ側の追手が死に物狂いで逃げて行った。
nocnu-run.png
モーテルでは、メキシコ側の追手の一人が地面でのた打ち回り、プールサイドに水着姿の女性が殺され、モスも部屋の玄関で殺されていた。

その晩、トムは地元のベテラン警官と事件の話をする。
nocun-coff.png
金はなく、トムはその金はメキシコ人の慌てぶりから考えて持っていないと思えると語った。

地元の警官はシガーをサイコパスだというが、トムはそうは思えないゴーストのようだと語った。
そのトムに対し老警官は、間違いなく現実だと反論し、こんな相手からどう身を守るのかと嘆いた。
モスを救えず残念だったと言って、警官は去った。
一人車に乗ったトムは、何事か考え込みモスの殺害現場へ戻る。
そこで鍵穴が吹き飛ばされた跡を見たトムは、シガーが部屋にいると思い緊張した。
nocun-room.png
しかし、部屋の中にシガーはいなかった。
だが、その部屋の通気口には金を引きずった跡があり、コインが落ちていた。
その痕跡は、シガーが来て、金を持ち去った事を物語っていた・・・・・・・・
nocun-trail.gif

西部に帰った、トムは元保安官だった叔父エリスを訪問する。
叔父はトムの妻からの手紙で保安官引退の話を知っていた。
伯父エリスとの会話

【意訳】伯父:保安官を辞めるのか。なぜだ。/トム:分からない。俺は打ちのめされたようだ。俺はいつも、年をとれば神が俺の人生のどこかで関わってくると思っていた。違った。不平を言っているわけじゃない、俺が神でも同意見だ、俺には関わらない。/伯父:お前に何が分かる。俺はマック伯父さんの保安官バッジとライフルをレインジャーズに送った。記念館に飾るらしい。(以下:マック伯父が、7・8人のインディアンに全てよこせと言われて、ショットガンを持ち出したら、自分の家のポーチで左肺を撃たれ死んだ。叔母は次の朝硬い地面を掘って埋めたと語る)お前が感じる無常観とは今始まったわけじゃない。この国は人に過酷なんだ。来るものを受け入れざるを得ない。彼らはお前を待ちはしない。それはうぬぼれだ。

伯父エリスは、この国の暴力性は昔からで、来るものは拒めないし、古い者達に合わせはしない。
それを合わせろというのは自惚れ、慢心、無意味だとトムに話した。

そして死んだモスの妻カーラは、ガンを患っていた母の葬儀を終え、一人帰宅すると、そこにはシガーがいた・・・・・・・・・・・
妻カーラとシガー

【意訳】カーラ:今日、母を埋めて、お金はない。/シガー:俺は気にしない。/カーラ:座りたい。・・・・あなたに私を傷つける理由がない。/シガー:ないな。しかし俺の言葉がある。/カーラ:あなたの言葉?/シガー:あんたの夫に。/カーラ:それは無意味よ。あなたは夫に私を殺すといったから、殺すの?/シガー:あんたの夫はあんたを救うチャンスがあった。それなのに、それをあんたに使わず、自分のために使った。/カーラ:それは違う。あなたが言うのは違う。これをすべきではない。/シガー:いつも同じことを言う。/カーラ:誰が言うって?/シガー:みんな、これをすべきでは無いという。/カーラ:無いわ。/シガー:分かった。これが俺に出来る最善だ。裏か表か。/カーラ:座っているあなたを見て、狂人だって分かってた。私に何が起きるか分かったわ。/シガー:裏か表か。/カーラ:イヤよ。私は選ばない。/シガー:裏か表か。/カーラ:コインは何も言わない。それはあなたよ。/シガー:そうか、コインがするのと同じことをしよう。

シガーはカーラの家から、出てきた。
家の中で何が行われたかは語られない。
そしてシガーが現場から離れた時、それは起こる。


【意訳】少年A:おじさん、腕から骨が出てる。/シガー:大丈夫。ここにチョット座らせてくれ。/少年B:救急車が来るよ。電話してた。/シガー:そうか。/少年A:大丈夫かい?腕から骨が出てるよ。/シガー:シャツをくれるか?/少年B:えーと、それじゃ、おじさんシャツ上げるよ。/少年A:うわー骨が。/シガー:結べ、縛って。/少年A:なんだよおじさん、そんなつもりじゃないよ。大金だし。/シガー:とっとけ。受け取って・・・・・それで、お前は俺を見なかった。俺はもう立ち去ってた。/少年B:はい。/少年A:分け前くれよ/少年B:イヤだよシャツ着てるだろ。/少年A:そういう意味の金じゃない/少年B:そうだけどシャツ着てるじゃん。

シガーはその場を後にした。
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『ノーカントリー』ラスト・結末



物語は、トムが妻に昨夜見た2つの夢の話する場面で幕となる。
2つの夢

朝の夫婦の会話。夫は馬に一緒に乗ろうか、ダメなら整理しようかと問い、妻は両方乗り気ではない。そして眠れたかと聞くと、夫は夢を見たと語る。妻がどんな夢か聞くと口ごもるが、重ねて問われ語りだす。
【意訳】「二つの夢を見たが、両方に父が出てきた。父は今の俺より20歳若くして死んだ。夢では俺が年上だ。どこかの町で親父に金をもらい、それを無くした。二つめは二人で昔に戻ったような夢で、俺は馬に乗り夜中に山を越えていた。寒くて地面には雪が積もっていて、親父は俺を追い抜き何も言わず先に行った。体に毛布を巻き付け、うなだれて進んで行く。親父は手に火を持っていた。夢の中で俺は知ってた。親父が先に行き、闇と寒さの中どこかで火を焚いていると。俺が行く先に親父がいると。そこで目が覚めた。」

その夫を優しげに見つめる妻と不安げな夫。
ここで画面は暗転・・・・・・・・・


『ノーカントリー』結末感想

ここから先は、個人的にこの映画の夢を解釈を試みたものです・・・・・・

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最初の夢は、父は20歳も若くして死んで、その父から貰った金をなくしたというもの。

これは、解説編で「No Contory For Old Man」にも書いたが、つまりは若い者達は「金=欲望」の為に命をかけるのであり、その金を無くしたというのは、欲望に走らなかったことを意味し、それゆえトムは老人になるまで命を永らえたのだろう。
この夢を補強するのが、伯父エリスとの対話だ。

つまり昔から物を巡り対立が生じており、それに対し欲を発すれば、死が近づくのだと語っているだろう。
欲を持った者は常に来て、それに対して「欲を持たない=公平・正義」を求めるのは無理な望みだと語られていると感じた。

実は、この映画のほとんどのパートは、「金=欲」を巡る戦いが描かれている。

そして欲というのが個人の利益の追求だとすれば、その戦いは利己的なほうが勝つ。
だとすれば、そこに広がるのは、弱肉強食の世界なのである。
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そう考えれば、シガーという絶対的強者とは「利己主義の権化」を意味するのであり、それゆえ理屈ではなく気分で殺すのである。

そしてその「利己的な殺人」とは、殺される側にとっては、モスの妻が語ったように理不尽で不合理な形をとって現れるだろう。
しかし、それは冒頭、モスが荒野で鹿を撃った狩と同じ行為ではないかと思える。
それは鹿から見れば、それは理不尽に降ってくる死なのだ。

結局、モスとシガーとは共に利己的な戦いを繰り広げ、それゆえモスの死んだモーテルのプールの女やモスの妻に理不尽な死を供給したのではなかったか。

つまりは欲の行き着くところは、利己主義によってもたらされた、理不尽な死であり、その端的な表れが戦争ではないか。

nocun-bell2.pngこの理不尽さに直面したとき、殺される側、弱者、この映画でいう「老人」は絶対に、死から逃れられない。
なぜなら、欲を持たない者、「利己的」でない者、弱者が生きる道は「利他的」な相互扶助による以外ないが、「利他的」とは利己主義の対極にある。

それゆえ弱者は、利己的な条理の無い暴力を前にすれば、守りようが無い。
それは狩られる鹿のように、何事が起きたか理解できずに死に至る以外ない。
その現れは、不可知で不条理であるがゆえに、保安官トムが「幽霊=ゴースト」といい、モスが「死神」という通り、自然界を超越した神に近い存在だと感じられるだろう。

つまりシガーが表す無軌道な暴力とは、弱者にとっては絶対的な力の行使であり、それは自然災害と同じ顔を見せるだろう。

しかし、その人為的力の行使でありながら、絶対的な姿として現れる、現在の不条理な暴力に、弱き者達は諦め従うしかないのだろうか・・・・・・


その冷酷な運命に抵抗する手段。
その答えを導き出すヒントがシガーが事故に巻き込まれたシーンにあるだろう。
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そこで描かれた、弱者にとっての唯一の救いとは、人為的な不条理は絶対的な力の前で無力化されるのではないかという想定だ。

それは単純に言葉にすれば「勧善懲悪」という表現が相応しい。
弱者はただ正しく生きて、無慈悲な暴力を行使したものの上に「勧善懲悪」の原理が働くのだと祈る以外ないのだと語られていると信じる。
それが、冒頭の言葉「魂が危機に陥ったら、世界の一部になることを承認せよ」というモノローグではなかったか。
たぶん「利己的な暴力行使者」は、シガーが少年二人に「金=欲」を与え、新たな利己的な萌芽を撒き散らしたように、その悪を拡散するだろう。

しかし、その悪の力に抵抗し、やはり正しく生き、悪は滅びると願うという、古来から無力な者達が必死に行なって来た絶対者への祈りを語っているだろう。
そしてそれは、利己的な暴力の前に命を捨ててきた数多くの「弱者」達が、それでも正義を主張し利己主義の不条理に抵抗してきた事にオーバーラップする。
それは、モスの妻がシガーの悪を断罪したように、保安官トムの父やその一族が命を顧みず成してきた事であったのだ。

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その悪と対峙する姿こそが、正しき世界を創出しようという「祈りの犠牲」なのだと信じる。

それを象徴的に語ったのが、二つめの夢だったように思える。
たとえ若き欲望の前に朽ち果てる運命だとしても・・・・・・・
たとえ今自らの内に神を感じられないにしても・・・・・・
正しく生き、悪と闘かい理不尽に倒れた父の姿を、追いかけて生きることこそ、現代の不条理に立ち向かう唯一の方法なのだと。

このトムを見つめる妻の笑顔を見た時、「あなたはきっと保安官に戻るわ」という心の声を聞いたような気がする。
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posted by ヒラヒ・S at 17:50| Comment(4) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする