2017年06月22日

映画『ハスラー2』ビリヤード・ブームを生んだ映画/詳しいストーリー・あらすじ・受賞歴

ハスラー2(ストーリー・あらすじ編)


原題 The Color of Money
製作国 アメリカ
製作年 1986
上映時間 119分
監督 マーティン・スコセッシ
脚色 リチャード・プライス
原作 ウォルター・テヴィス


評価:★★★★  4.0点


この1986年の映画は、ベテラン俳優ポール・ニューマンと、当時売出し中の若手トム・クルーズの組み合わせにより、鮮やかな対比を生みビリヤードの魅力と相まって、大ヒットしました。
この映画を見て、ビリヤードというレジャーが認知され、バブル時代の若者がビリヤード場に押しかけ、プールバーという名前の新たなビリヤード場が次々オープンし、大ブームになったのでした。
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『ハスラー2』あらすじ



かつてのハスラー、エディ(ポール・ニューマン)は50代になり、頭には白いものがまじっていた。
「ファースト・エディー(早打ちエディー)」と呼ばれた、トップクラスのビリヤード・プレーヤーだった昔から25年が経っている。
今はいささか怪しい酒も取り扱うセールスで生計をたて、恋人のジャネル(ヘレン・シェイヴァー)と、老後の生活のことを語り合うようになっていた。
hustler-first.jpg

そんなある日、エディーは自分がパトロンをしているハスラーを、手玉に取った若いハスラーと出会う。

そのハスラーは、騒々しく、軽薄だったが、ビリヤードの腕は天下一品だった。
エディーはそのヴィンセント(トム・クルーズ)にコンビを組めば、ハスラーとして生きる術を教えると持ちかける。
エディーが資金面の面倒を見て、ヴィンセントと共に町々のビリヤード場を回り、どうすれば効率よく稼げるかを伝授するというのだ。
hastler2-meet.jpgそして、最終的な目的は数カ月後にアトランティックシティで開催される、ナインボールの大会に焦点を定めた。
そして、エディーとヴィンセントと、ヴィンセントの恋人カルメン(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)も加わって、3人の旅が始まった。

エディーは最初に負けておいて、掛け金を釣り上げる方法や、一人がカモのふりをして敵を誘い込む方法など、様々なテクニックをヴィンセントに教える。
しかし、ヴィンセントは単純に勝てば良いという考え方で、みすみす大金を喪うこともしばしばだった。
本来負けて、大金を賭ける相手との対戦をする計画だったのに勝利してしまうヴィンセント。
【意訳】ハスラー:何持ってるんだ。/ヴィンセント:これか?破滅さ。/ハスラー:来いよ少年。やろう。/ヴィンセント:ああ、やろう。楽しもうぜ。/ハスラー:悪くないな。悪くない。もう町を出ろ。今すぐな。/ヴィンセント:もう一試合どうだい。冗談だよ殺さないで。

しかし、そんな若さあふれるヴィンセントを見るうちに、自らの中にハスラーの血が騒ぐのを覚えるようになった。そして自らも、ビリヤードをプレイしだす。
そして、ある日、黒人の若者とプレイし大負けする。
【意訳】アモス:それでやめた。その後、大学で働き出した…被験者ってやつで。何をしてたと思う。/エディー:何をしてた?/アモス:俺は研究材料だ。/エディー:何だって?/アモス:研究材料だよ精神科の。おれは反応や記憶の実験をされた。何でもなかったけど・・・・・電気ショックを受けた時を考えなければ。あれ。/エディー:OK。ほら。もう一度やるか?/アモスー:ああ、もちろん構わないよ。二倍で?/エディー:二倍で。/エディー:重なってたな?/アモス:さあやろう。/ヴィンセント:エディー調子は?/エディー:ヤツより俺のペースだ。/アモス:そら、こい、こい、こい、こい。やった。何て事だ。/エディー:もう一度。/アモス:二倍?/エディー:他にあるか?/アモス:ははは!何てこった!俺にはできない。何て運が良いんだ!ほんとに悪いな。何もしてないのに、ボールが落ちるなんて。信じられないよ。

エディー:お前ハスラーだな、アモス?/アモス:何いってんだい、エディー。ついてたんだ。/エディー:お前ハスラーだろ?/アモス:おい、金を払いたくないのか?じゃあ持ってろよ。もう忘れるよ。でかい負けだから。俺が負けた時、俺は払ったけど。俺は…/エディー:お前ハスラーだろ、アモス?/アモス:なんだよ?止めたいのか?/エディー:なめるな小僧。もう一度、二倍だ。/アモス:悪く思うなよ。正直なところを聞きたいんだけど、もうちょっと痩せたほうが良いかな?

その男はハスラーで、まんまとカモにされ、エディーは屈辱に悔し涙を見せた。
それを見ていたヴィンセントとカルメンが慰めるが、エディーは2人に金を渡し、ここで別れると告げた。

【意訳】ヴィンセント:エディー、エディー、俺達はどういうステップを踏むか話し合ってきたろう。今終わりにすれば全部無駄だ。/エディー:どけよ。/ヴィンセント:言ったじゃないか。OKエディー、OK分かった、俺の態度だろ、な。今から/エディー:お前はいつだって、お前のやりたいようにやるだろ。/ヴィンセント:そんなこと言わないで―/エディー:もし俺が言ったら、その通りにするんだ。/ヴィンセント:そんな事言わずに、言われた通りにしようと努力してる。/エディー:お前に俺は必要ない。金を取れ。それで最後だ。/カルメン:行かせなさいよ。ヴィンセント!/ヴィンセント:俺に金を渡してお払い箱か。/エディー:お前は若いんだ、坊や。まだ道は長い/ヴィンセント:俺に金をよこしたいのか。こんなの5セントよりクズだ。/エディー:お前が俺にそんな口を―/ヴィンセント:黙れ、金を/カルメン:三千ドルはないと。/エディー:金をやる。持ってる金の全部。/ヴィンセント:アンタのクソッタレの金はいらない。クソ!クソ!

ヴィンセントはここまで来て、ほっぽりだすのかと泣きつくが、エディーはお前は言うことを聞かない、勝手にやれと怒鳴り、アトランティックシティまで自力で行けと言い分かれた。
その後エディーは、日々ビリヤードの練習を続け、かつてのカンを取り戻していった。
エディー練習シーン

そしてアトランティックシティのナインボール大会に、参加した。
そこには、けんか別れしたヴィンセントも姿を現し、競技が始まった・・・・・・

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『ハスラー2』出演者

ファースト・エディ(ポール・ニューマン)/ヴィンセント(トム・クルーズ)/カルメン(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)/ジャネル(ヘレン・シェイヴァー)/ジュリアン(ジョン・タトゥーロ)/路上プレイヤー(イギー・ポップ)/アモス(フォレスト・ウィテカー)
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『ハスラー2』サントラ

実はこの映画のサントラは、ブルースを基調に、モダンなナンバーが並んでいて、前作の「ハスラー」のジャズの重厚さと対比を見せています。
エリック・クラプトン「It's In The Way That You Use It」
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『ハスラー2』受賞歴

第59回アカデミー賞:主演男優賞 ポール・ニューマン
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2017年06月12日

『フォレスト・ガンプ』ホラ話・アメリカ現代史/ネタバレ・ラスト・結末感想

フォレスト・ガンプ(ネタバレ・結末 編)


原題 Forrest Gump
製作国 アメリカ
製作年 1994
上映時間 142分
監督 ロバート・ゼメキス
脚本 エリック・ロス
原作 ウィンストン・グルーム


評価:★★★☆  3.5点



この映画は、トム・ハンクスの演技力が光る作品だと思います。
フォレスト・ガンプという男の波瀾万丈の人生を、楽天的に、大らかに、描いているアメリカ的な物語で、アメリカ人から見ると、懐かしくもあり、楽しくもある、更に涙を誘う作品でも有ります。
そんな点が評価され、1995年の第67回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞などに輝きました。
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『フォレスト・ガンプ』予告動画


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『フォレスト・ガンプ』出演者

フォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)/ミセス・ガンプ(サリー・フィールド)/ジェニー・カラン(ロビン・ライト)/ダン・テイラー(ゲイリー・シニーズ)/バッバ・ブルー(ミケルティ・ウィリアムソン)/フォレスト・ガンプJr.(ハーレイ・ジョエル・オスメント)
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以降の文章には

『フォレスト・ガンプ』ネタバレ

が含まれますご注意ください。

(あらすじから)
フォレストがバスを待っていたのは、ジェニーに会いに行くためだった。
話を聞いていた老婦人から、そこが近くだと教えられ、フォレストは走ってジェニーが待つアパートの一室へ辿り着いた。そこにジェニーの息子が帰宅した。
【意訳】ジェニー:私の親しい友達、ガンプさんよ。こんにちはは?/息子:こんにちは。/フォレスト:こんにちは。/息子:今、TV見に行っていい?/ジェニー:良いけど音小さくね。/フォレスト:君はママなんだね。/ジェニー:私はママよ。彼の名前はフォレスト。/フォレスト:僕の名前みたいだ。/ジェニー:彼の名前は彼のパパの名前よ。/フォレスト:パパの名前もフォレストなの?/あなたがパパなの。フォレスト。(フォレスト下がる)/ジェニー:ねえ、フォレスト、こっち見て。あなたは何もしなくていいの。あなたは何も悪くないの。いい。彼、美くしくない?/フォレスト:今まで生きてきた中で一番美しい。でも、頭は良いの?僕−/ジェニー:彼は賢いわ。クラスでも一番なの。/フォレスト:そうか、OK、彼と話してくる。(息子に近づく)何見てるの?/息子:バートとアニー

ジェニーは彼がフォレストと自分の子供であると告げる。
その後、ジェニー本人から「不治の病」を罹っていると告白されたフォレストは、改めて自分の想いを伝え、結婚を誓い合う。
アラバマのフォレストの家に帰り、結婚式を挙げる2人。
結婚式

【意訳】フォレスト:ダン中尉、ダン中尉。/ダン:こんにちはフォレスト。/フォレスト:ダン中尉足が・・・/ダン:ああ、新しい足が。チタン性の特注だ。スペース・シャトルに使われてるんだ。/フォレスト:魔法の足だ。

彼らを祝福するために訪ねてきたダンはチタン製の義足をつけ、アジア系の女性と婚約していた。
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『フォレスト・ガンプ』ラスト


程無くしてジェニーは亡くなり、フォレストは幼少の頃一緒に過ごした木の下に彼女を埋葬した。
【意訳】ジェニー:ねえ、フォレスト。ベトナムは恐かった?/フォレスト:う〜ん、分からないな。ある時は雨上がりに星が出ると、美しかった。ベトナムの湾の太陽が沈む時は、水に一万の輝きが見えた。山の湖もきれいだった。透き通って上と下に二つの空があるようだった。それに砂漠の日の出、境が分からなかった。どこまでが天国で、どこからこの世なのか、美しかった。/ジェニー:私も一緒に見たかったわ。/フォレスト:君もいた。/ジェニー:愛してるわ。/フォレスト:君は土曜の朝に死んだ。僕等の木の下に君を埋めた。君のお父さんの家は、ブルドーザーで土に戻した。ママはいつも言ってた。「死は人生の一部だって。」でも悲しい。

小さなフォレストは元気だ。直ぐに学校に戻る。毎日、僕が朝、昼、晩を作ってる。そして毎日、髪をとかし、歯を磨かせている。ピンポンも教えている。釣りもよく行く。本もよく読む。それは頭の良い子だ、ジェニー。君も誇りに思うよ。僕もだ。あの子から手紙だよ。読むなといわれたから、君のためにここに置いておくよ。ジェニー、僕には分からない。正しいのはママなのか、ダン少尉なのか。みんなには運命があるのか。それとも、いつでも風に漂っているだけなのか。だけど、その両方なんだろう。その両方が同時に起こっている。君が恋しいよ。何か欲しいものがあれば、直ぐに呼んでくれ。

フォレストは、かつての自分のように息子をスクールバスで小学校へ送り出す。
そしてバス停で息子を待つガンプの足元から、羽が飛び立ち物語は幕を閉じる。

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『フォレスト・ガンプ』結末感想


人生は風に漂う羽のようなものなのか、それとも、あらかじめ人それぞれ運命が決まっているのか。
フォレストはその両方だと思うといいます・・・・・・・

この「ほら話」は、風に漂い偶然のせいにするところと、運命に導かれるところを、話の都合に合わせて上手く使い分けていると思います。


壮大で、トム・ハンクスの名演が光る作品なだけに、個人的には歴史解釈の点を惜しまざるを得ません・・・・・


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posted by ヒラヒ・S at 18:14| Comment(2) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月09日

『フォレスト・ガンプ』ホラ話・アメリカ現代史/解説・感想・評価・批判

フォレスト・ガンプ(感想・解説 編)


原題 Forrest Gump
製作国 アメリカ
製作年 1994
上映時間 142分
監督 ロバート・ゼメキス
脚本 エリック・ロス
原作 ウィンストン・グルーム

評価:★★★☆  3.5点



この映画は、トム・ハンクスの演じる主人公フォレスト・ガンプが、アメリカの1950〜90年の歴史を走り続けるような映画です。
ここには、アメリカの物語の伝統「トール・ストーリー(ほら話)」の伝統があるように思います。
また同時に、そんな「ほら話」がこの映画の題材に相応しかったのかと、問いたい気持ちもあります・・・・・
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『フォレスト・ガンプ』予告動画


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『フォレスト・ガンプ』解説

「アメリカン・トール・ストーリー」ほら話の伝統


この映画を見て、アメリカのトール・ストーリー(ほら話)の伝統を思い起こしました。

「トール・ストーリー=Tall Story:Tall tales=背の高い物語」とは、誇張された部分や信じられない部分を含んだ、大きく驚くようなありえないような「ホラ物語」です。

トール・ストーリーの主眼は、物語全体をどうオーバーに誇張するかにありますので、話として非常に面白いですし、現実離れしたファンタジーに近づくように思われます。

このアメリカの民間文学の伝統である、「トール・ストーリー」は、アメリカの開拓者達が、火の周りに集まったときに自慢話合戦から始まったと考えられているようです。
アメリカのほとんどの「トール・ストーリー」は、勇敢な探検家が西部の荒野へ進んだ、1800年代の西部開拓の冒険時代から由来しているといいます。

そんなアメリカの民話の人気者の例を挙げてみましょう。
gump-Paul-Bunyan.jpg
ポール・バニヤン(Paul Bunyan)は、アメリカ合衆国の伝説上の巨人、西部開拓時代の怪力無双のきこりです。

「生まれたときから8mという巨体で、木を伐採すると1日で山が丸裸になって、ベイブという巨大な青い牛を連れていて、五大湖やミシシッピ川をつくった」という凄い人です。

ペコス・ビル(Pecos Bill)はアメリカ合衆国の伝説上のカウボーイです。
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コヨーテに育てられて、身長が2メートル以上あって、気は優しくて力持ちで、投げ縄の腕は超一流。
鞭として、ガラガラヘビを使い、投げ縄で竜巻を捕まえて、竜巻を野生馬のように乗りこなした。
リオ・グランデ川を掘って、カウボーイの歌を作ったという、豪快で、でも優しい人です。

これらの物語に登場する、背の高い物語の英雄達は、実在の人物に基づいていたとしても、実際の人よりも背が高く、大きくて強く優しい存在として描かれています。

そんな、アメリカ民話の伝統を正しく引き継ぎ、映画として定着したのが、この映画だと感じました。
さらに言えば、トール・ストーリーの伝統を引き継いだ映画は、他のハリウッド映画作品でも見ることができます。

関連レビュー:ティム・バートン監督の「ほら話」
『ビッグ・フィッシュ』
「ほら話=ファンタジー」の力
親子の和解の物語

そして、この『フォレストガンプ』においては、過去のニュース映像に主人公をはめ込むと言う形で、歴史的なホラを構築することに成功しました。

その特殊撮影によるリアリティーは、映画表現に新たな可能性を開くものだと思います。

しかし下手をすれば、過去の映像資料を改変して、都合のいい事実を作ることもできそうで一抹の不安も感じます・・・・・・・

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この映画はアカデミー賞に輝く高い評価を受けている作品です。
しかし、以下の文章には私見による批判、悪評が含まれています。ご注意下さい。

『フォレスト・ガンプ』感想


上で描いたように、アメリカのほら話の伝統を継ぐ、この映画は知的障害を持ちながらも優しい一途な主人公が、歴史的事件に関わりつつ成功する物語です。

gump-pos.jpgその物語は、明るく壮大で、人情味もあって、映画の語るストーリーラインや主張に素直に従えば、感動的な物語として心に響きます。
このイノセントな主人公の生きてきた道とは、大きな歴史の流れに漂う羽のように、「人生とは歴史の中で翻弄されるものだが、きっとハッピーになれる」というメッセージに集約できるかと感じました。

それは、社会の一員として生きる庶民にとっては、間違いなく実感だったでしょう。
個人では、どうしようもない時代の潮流というのも、間違いなくあると思います。
しかし、それでもこの映画が語る「歴史」に対する認識に納得がいかないのです。


Film-USA-flag.png
この映画が「歴史的事件」を語っていながら、歴史認識が皆無だという点に違和感を感じざるを得ないのです。

たとえば、映画の中で「アラバマ州立大学問題」や「ブラック・パンサー党」など黒人差別が語られ、「ベトナム戦争」が語られ、「ベトナム反戦運動」が語られ、「ジョン・F・ケネディー」や「ウォーター事件」が語られる時、その社会を揺るがし、世界を変えた事件に対し、この主人公は一切主体的に関わろうとしません。

このフォレストは歴史の場に立ち会いはしますが、それは大学卒業時にたまたま勧誘のビラを見て陸軍に入ったように、ワシントン観光中に流されるままに反戦デモに組み込まれたように、成り行きと偶然とに彩られた人生です。


しかし、普通に考えれば、ベトナム戦争や人権問題を眼にすれば、そこにはその主人公の感慨なり意見が生じるはずで、それこそが通常は映画のテーマとなるべきものだったはずです。
そしてその主人公の主義主張を通して、表現されるのが「歴史に対する責任」であるはずです。

Film.jpg基本的には歴史事実には、その事実ゆえに世界がどう変化し、その変化をどう解釈するかという言葉が求められるはずです。
なぜなら、その歴史事実によって傷つき苦しんでいる人々がいて、その人たちに対する救済や、次の世代に対する戒めを、その事実から汲み取り伝える必要があると思うからです。

たとえば、この映画で語られる歴史事実として「アウシュビッツ」が出てきて、主人公がそれを、ただ眺めているとしたらどうでしょうか?

たとえば、この主人公がヒロシマに原爆を落とした、B29エノラ・ゲイに乗っていたとしたらどうでしょうか?
何も言わずに通り過ぎて済まされるでしょうか?

極端な例だと言われるかもしれませんが、ベトナム戦争は上二つに匹敵する犯罪行為だと個人的には思います。
また、人種差別の問題も100年に渡る差別の中で多くの黒人が命を落してきた経緯と、その差別を受けた者達の苦悩はどれほどのものか想像もつきません。
この両者に対して何の意見も表明されないという、この映画の描き方は異様ですらあると思います。

例えば「アラバマ州立大学黒人入学問題」では、ウォーレス知事に「なぜ黒人が大学に入ってはいけないのか」と聞いてほしかったのです・・・・・・・
「ベトナム戦争の反戦集会」ではマイクを切らず、ベトナムでどんな苦しみがあったか語らせてほしかったのです。

【意訳】後ろの男:お前はいいヤツだ。いいぞ。/フォレスト:分かった。(フォレスト・ナレーション:演説をしている男がいた。アメリカ国旗のシャツを着た男が、Fの付く言葉をたくさん言い、それを聞くたびに観衆が喜んでいた)/国旗シャツの男:来いよ、早く、上がって来いよ。/国旗シャツの男:前線の話を。/フォレスト:ベトナムの話?/国旗シャツの男:ベトナム、クソッタレ戦争の話だ!/(フォレスト・ナレーション:ベトナムについて僕に言えることは唯一つだった)/フォレスト:ベトナムについて僕に言えることは唯一つ。ベトナムでは・・・(男がマイクの線を抜く)観衆:聞こえないぞ、何も聞こえない。/フォレスト:僕にいえるのはそれだけです。/国旗シャツの男:素晴らしい。その通りだ。君の名前は/フォレスト:フォレスト、フォレスト・ガンプ/国旗シャツの男:フォレスト・ガンプ

しかしこの映画は、それらの歴史解釈を、慎重に語らないように努めているように見えます。
ここにあるのは、アメリカ現代史に対する肯定でも否定でもなく、単なる事実の羅列です。
そしてそのことで、その事件・事実に関わった人々が傷つく結果になっていないかと恐れるのです。
関連レビュー:ベトナム戦争の罪を語らない映画
『プラトーン』
オリバー・ストーンの自伝的物語
ベトナム戦争の敗北の真実

さらに言えば、これらの人権問題や、ベトナム戦争という、負の歴史を正面から捉えていないことで、このフォレスト・ガンプに代表される白人中間層(それはトランプ政権の支持基盤でもありますが)の、人種差別や反グローバリズムの感情を助長するのではないかと恐れるのです。
Gump-forest.jpg
実を言えば、こんな不自然な過去の歴史に対する無関心を成立させるために、この映画は主人公を知的障害があるという設定にしたのではないかと疑っています。

例えば、これが普通の人間であれば、この映画の事件の現場で意見を言わずに済ませられないでしょう。
その無関心さを、イノセントさとして演じて見せた、トム・ハンクスの演技力も恐るべきものだと思います。


個人的な印象では、トム・ハンクス演じるキャラクターには、白人中間層を代表するような役柄が多いような気もします・・・・・・・・・・
関連レビュー:人種差別が垣間見える映画
『グリーン・マイル』
刑務所の奇跡の物語
トム・ハンクス主演のアカデミー賞作品


映画としての表現技術が高いにもかかわらず、その表現力を歴史を無視する方向で使役していることに疑問を持ったものですから、敢えて申し上げました。

当作品に対する評価★★★☆ 3.5点は、映画表現としては5点に近いものの、その歴史性無視ゆえに★をマイナスしました。

現実をほら話として語るには、もう少し時が立つのを待った方が良いのではないでしょうか・・・・・・

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posted by ヒラヒ・S at 17:16| Comment(2) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする