2017年11月22日

アニメ映画『サマーウォーズ』完全再現ストーリー/感想・あらすじ・ネタバレ・ラスト

『サマーウォーズ』(ストーリー・あらすじ編)




製作国 日本
製作年 2009
上映時間 115分
監督 細田守
脚本 奥寺佐渡子
キャラクター・デザイン 貞本義行


評価:★★★★★ 5.0点



このアニメは人間とヴァーチャルの両方の世界を舞台にした感動巨編です。
現実世界では日本の夏休みの郷愁が、見る者に沁み込み、ヴァーチャル世界ではあっという間に世界規模でつながるスケールの大きさがドラマを盛り上げます。

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映画『サマーウォーズ』予告

映画『サマーウォーズ』出演者

神木隆之介(小磯健二)/桜庭ななみ(篠原夏希)/谷村美月(池沢佳主馬)/仲里依紗 (陣内由美)/斎藤歩(陣内侘助)/富司純子(陣内栄)/中村正(陣内万作)/永井一郎(陣内万助)/信澤三惠子( 陣内万理子)/板倉光隆(陣内克彦)/高久ちぐさ(陣内奈々)/中村橋弥(陣内邦彦)/谷川清美(陣内典子)/田中要次(陣内頼彦)/田村たがめ(池沢聖美)/山像かおり(三輪直美)

映画『サマーウォーズ』受賞歴

第42回シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門:最優秀長編作品賞
第24回デジタルコンテンツグランプリ:経済産業大臣賞
第13回文化庁メディア芸術祭:アニメーション部門大賞
第33回日本アカデミー賞:最優秀アニメーション作品賞
第64回毎日映画コンクール:アニメーション映画賞
第52回ブルーリボン賞:日本映画ベスト10選出
第14回日本インターネット映画大賞:日本映画部門 作品賞
第9回東京アニメアワードアニメーションオブザイヤー:監督賞他4賞
第6回リスボン国際インディペンデント映画祭:観客賞
第14回モントリオール・ファンタジア映画祭:最優秀アニメーション賞観客部門金賞
第41回星雲賞メディア部門
第1回アナハイム国際映画祭:最優秀アニメーション賞
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映画『サマーウォーズ』あらすじ



高校2年生の小磯健二は物理部の教室にいると、憧れの先輩の篠原夏希やってきた。
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彼女の曽祖母・陣内栄の90歳の誕生会に行くため、長野まで一緒に来てほしいと言うのだ。
しかも、婚約者のふりをして欲しいという、変なバイトを頼まれた。

長野の陣内家では一族郎党の26名が集まり、戦国真田家の伝統を継ぐ名家だけに、話は信州上田合戦まで遡り盛り上がる。その中心には栄おばーちゃんがいた。
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宴会もお開きとなったその深夜、篠原家に泊まった健二の携帯に不審な数学クイズのメールが送られて来た。数学が得意な健二は、その「数学クイズ」の答えを導いてしまう。
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実はその回答とは、インターネット上の仮想世界OZ(オズ)の管理権限の暗号パスだった。

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そのメールの差出人は、ラブマシーンと名付けられた人口知能(A.I)だったのだ。

翌日にはOZの心臓部に侵入したラブマシーンは、4億人以上のアカウントを奪った。
そして現実世界に影響を及ぼし、緊急通報システムや交通管理システムを混乱させ、警察、消防、病院などが機能しなくなり、世界中が大混乱に陥っていった。
そのラブマシーンを設計したのは、陣内家の妾の子ながら栄に可愛がられていながら若いころ出奔した、陣内侘助だということが判明した。

怒った栄は、なぎなたを持ち出し、侘助を追い回す。
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そして「身内の不始末は身内で片付けるよ!」と叱咤し、一族に対応を促し、更に名家の人脈を使い政府閣僚級の人々をも動かした。
しかし、その翌朝、持病の狭心症により曾祖母・栄は帰らぬ人となった。

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女達が葬儀の準備を始める中、健二を含む陣内家の男達は、大型コンピューターを調達し、自衛隊の通信車両を持ち出し、ラブマシーンとの電脳世界での対決の準備を整えた。
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OZで格闘ゲームの世界的チャンピオンにまでなった、夏希のいとこ中学1年生・池沢佳主馬をプレーヤーとして、ラブマシーンとの対決に挑む。

勝負はバーチャル世界で佳主馬のアバーターのキング・カズマが優位に立ち、ついにラブマシーン勝利するかと思われた。
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しかしその時、スーパーコンピューターの冷却用の氷を、栄の遺体の保存のために持ち出され、コンピューターが故障した。

そして、ラブマシーンに逃げ出されてしまう。
敵がいなくなったラブマシーンは大勢のアカウントを奪い、ますますその力を強めていく。
そして、ラブマシーンは、惑星探査機「あらわし」を遠隔操作し、原子力発電所の上に落とそうとしていることが判明した。
無力感に落ち込む、陣内家の男達。
そんな彼らの前で栄の遺言が読み上げられた。
【栄の遺言】

陣内家の人々は、栄の遺言通り昼食を皆で食べ、一族の和解と団結を確かめた。

その時健二から、ラブマシーンのこれまでの行動からして、花札の勝負に誘えば乗ってくるという言葉が出た。
花札勝負をバーチャル世界で戦って、アカウントを取り戻そうと提案する。
そして案の定、ラブマシーンはその誘いに応じ、戦いの場に姿を見せた・・・・・・・・・

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以降の文章に

映画『サマーウォーズ』ネタバレ

があります。

花札勝負のプレーヤーは、子供の頃から曾祖母栄に鍛えられた、篠原夏希だった。
夏樹は一族のアカウント20人を賭けて、ラブマシーンの持つ4億人のカウントを奪還しようという、無謀ともいえる戦いだった。
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しかし夏樹は善戦し、次々にアカウントを解放していく。
その周りでは、一族の者の声援と、ヴァーチャル世界を注視する人々の応援がこだましていた。
しかし、一瞬の油断からラブマシーンに勝利を奪われ、残すところ数人のアカウントを残すのみとなった。
絶体絶命と思われたその時、ドイツの少年が語りかける。
「僕のアカウントを使ってください」その言葉はたちまち、ゲームを見守る世界中の人々に広がり、夏樹に提供されたアカウントは1億を超えた。

そのアカウントを元に、ついに夏樹はラブマシーンに勝利した。

しかしラブマシーンは、弱りながらも「あらわし」の落下地点を、夏希のいる陣内邸に定めた。
混乱の中、健二は卓越した計算能力を駆使し、パスワードを解読し「あらわし」の落下地点を、近隣の山にずらすことに成功した。

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映画『サマーウォーズ』ラスト・シーン



陣内家と世界の危機は回避された。
ラブマシーンの暴走は、アメリカ国防総省の管理の不備が原因だとCNNニュースは告げていた。
一族を救った功労者である健二と、夏希。
夏樹は健二を本当に好きになり、そんな二人の様子を陣内一族は暖かく見守る。


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映画『サマーウォーズ』結末感想


とりあえず、田舎に帰ってみようと・・・・・・・
ヴァーチャル世界の戦いを描きながら、そんな人の温もりを求めさせる映画です。

関連レビュー:細田監督のヴァーチャル世界の戦い
『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』
サマーウォーズの原型
デジタル世界の神話


ちょっと、遠いかもしれませんが、この映画の侘助に「寅さん」を感じました・・・・・
関連レビュー:日本人とふるさと
『男はつらいよ』
放浪者寅次郎
日本の聖者



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posted by ヒラヒ・S at 17:51| Comment(0) | アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月31日

アニメ『アナと雪の女王』ディズニープリンセスの進化/感想・あらすじ・ネタバレ・ラスト解説

ディズニープリンセスの「独立宣言」



評価(お嬢様方用) :★★★★★  5.0点
評価(奥様方用)  :★★★★   4.0点
評価(坊ちゃんども):★★     2.0点


世界的大ヒットアニメ、大ディズニーの輝ける王冠「プリンセス・シリーズ」の栄光を見事に継承したこの作品は、完璧なマーケティングによるプロフェショナルな一本だと感じます。
その見事な作りこみは一見の価値があると思います・・・・・

アナと雪の女王あらすじ


アレンデール王国の王女姉のエルサと妹のアナは、王家の美しい姉妹。しかし、エルサは触れたものを凍らせる魔法の力を持って生まれていた。8歳の時、妹のアナと魔法で遊んでいて誤ってアナを傷つけ、こん睡状態にさせてしまう。王と妃はトロールの力を借りアナは回復するが、エルサの魔法に関する記憶をアナは失う。
エルサは触れるものを凍らせる“禁断の力”が発現しないように、部屋に閉じこもっていたが、エルサは女王としての即位式に出席せざるを得なくなった。一方アナは久しぶりの開放感にウキウキし、隣国の王子ハンスと出会って恋に落ち結婚の約束もした。姉エルサは反対し、思わず人々の前で魔法を暴発させ、王国を冬に変えてしまった。エルサは山に籠もり氷の城を建て、自分を開放し独りで生きていく決意をし“雪の女王”となる。
行方を絶った姉と王国を救うため、山男クリストフとトナカイのスヴェン、“夏に憧れる雪だるま”オラフと共に雪山の奥深くへエルサを探し旅に出るアナ。アナはついにエルサと対面し帰ってくるように迫るが、拒否され、さらに氷で傷つけられてしまう。その魔法を溶かすのはエルサ自身にも不可能で、その解除方法は“真実の愛”だけだった。それを知ったクリストフは城に戻り隣国の王子ハンスに事情を話し彼のキスを求めるが・・・・・・・・・世界を救うことができるのか?引き裂かれた姉妹の運命は?

(原題FROZEN/アメリカ/製作年2013/上映時間102分/監督クリス・バック 、ジェニファー・リー/脚本ジェニファー・リー/原作アンデルセン:「雪の女王」)

アナと雪の女王出演者


神田沙也加(アナ)/松たか子(エルサ)/原慎一郎(クリストフ)/ピエール瀧(オラフ)/津田英佑(ハンス王子)/多田野曜平(ウェーゼルトン公爵)/安崎求(パビー)/北川勝博(オーケン)

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アナと雪の女王・感想・解説
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この映画は世界中で大ヒットして、今さら何を言えばいいのかというぐらいのものですが・・・・・・

anayuki-back.jpgまずは、CGによるアニメーションの完成度がスゴイと思いました。
普通CGというと、もともとこの技術自体が嘘を本当に見せるという目的なので、写真のようなリアルな映像をつくってしまい、アニメのファンタジーのイメージにマッチしない事がママあります。

それが、この映画ではイメージ世界とCGのニュアンスというかリアル度のさじ加減というべきか、ホントに完璧だと思いました。

さらに、ディズニー映画は歌がつきものですが、見事に「名曲」を世に送り出したと感心します。
たぶんディズニーメロディーとして100年後も歌われるに違いありません。
松たか子のレリゴーです

そして、最後に感心したのが、このアニメの割り切りの良さでしょうか。
そしてまた、同時にそこはどうなのというのも、割り切りの良さだったりします。

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この「割り切り」というのは、ディズニーだけではなく、ハリウッドの映画システム自体の問題でもあるのですが・・・・

例えばハリウッドでは映画を撮るときに、企画段階でどの位の資金を投入して、どの位リターン(回収)出来るかを冷徹に計算します。
そしてその中で、鍵となるのが「ターゲット」と「コンテンツ」です。

つまりどんな客層に、どんな内容を伝えれば、最も効率よく資金回収が可能かの見極めが大事というわけで・・・・

で、この映画です。
ディズニーの伝統的「プリンセス・シリーズ」の一本。
ターゲットはハッキリしています、ローティーンの少女たちです。
そのコンテンツは当然「少女たちが喜ぶもの」に集約されます。
『アナと雪の女王』雪だるまつくろう <八戸弁・南部弁・ver>

それゆえ、「噂ほど面白くないなぁ」なんてお考えの、親御様、特にお父さん、心配ありません。
あなたを喜ばせるために作ってませんから。同様に「ちっともオモシロクね〜じゃん」という、ガキど―失礼、お坊っちゃん達、あなた達は「カーズ」とか「モンスターズインク」を見るように。
これはキミタチのアニメじゃないよ。
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そんな、徹底して「少女たちの夢・憧れ」を作り上げるのが、このシリーズです。
嘘だと思ったら少女たちに聞いて見て下さい。ほぼ100%満足と答えるはずです。

しかし、今回はちょっと今までのプリンセスストーリーとは違う「コンテンツ」となっていて、この内容で「大ヒット」したのは、ディズニーの今後に大きな影響が出るほどの大事件じゃないでしょうか。

『アナと雪の女王』生まれてはじめて・大阪弁.Ver

その新しさは― 
今までの王子様を待つお姫様という定型にはまっていないということ。
これは、革命的です!
恋らしき風景が出てくるものの、物語の主体は「プリンセスの自主自立」です。ここで言われているのは、もう男なんかに頼らないで!自分で人生に立ち向かいなさい!という檄かと思われます。

Anayuki-futari.jpg上の新機軸に合わせて、必要となったのがプリンセスを二人登場させるという設定だったでしょう。

つまり少女達の自立物語であれば、構造的に正しいストーリーは二人の対立する少女達の問題を描き、それを解消させることでカタルシスに至るという展開でしょう。


この映画で言えば、問題とは「少女が自分らしく在るために孤立してしまうと、周囲の人々を傷つける。」です。
そしてその問題に対する解は「周囲の人々の愛を受け入れれば、自分らしさを失わずに皆幸せになる。」です。
そして、この内容を「王子との愛」を基軸にしてしまえば、「結局、男頼みか」と思われ少女の自立としてのテーマがぼやけてしまうでしょう。
『アナと雪の女王』ピエール瀧が歌う!雪だるまの"オラフ"

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以上の結果、プリンセスストーリーとしては初めて「王子」様が不在で、「おとぎ話」の形式から離れた内容になったに違いありません。

しかしこの内容で結果が出たという事は、今や世界中の少女達の夢が「いつか王子様が来て助けてくれる」というものから「自分の力で自分らしく生きるのが大事」という方向にシフトしたことを表しているのでしょう。

ぶっちゃけ、離婚はあるわ、不倫はあるわ「現代のあてにならない恋」に人生賭けられないでしょ?

そんなわけで、この一作によってデイズニープリンセスも「♪わた〜しは自由〜よ〜♪なんで〜もでき〜る〜♪」ということになりましたとさ。

めでたし、めでたし・・・・・かどうかは、今後のディズニー作品次第ですが・・・・・

『アナと雪の女王』Let It Go<25か国語 Ver.>

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以降「アナと雪の女王・ネタバレ」を含みますので、ご注意下さい。

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城に着いたアナは凍った体を溶かすには「真実の愛」が必要だと、ハンスに話し彼のキスを求めるが、途端にハンスの態度は豹変する。
彼は王国を乗っ取るつもりで、アナを選んだと本心を告げる。ハンスは瀕死のアナが死んだと城中に言いふらし、エルサを反逆罪で死刑にすると告げる。オラフの助けで城を抜け出したアナは、ハンスがエルサに剣を振り下ろそうとするのを見て、自らの命を捨ててエルサを助ける。

アナの身体は完全に凍りつき、ハンスの剣を砕き彼を弾き飛ばす。
エルサは氷の彫像と化したアナを抱きしめて泣きじゃくる。そのとき凍りついたアナの身体が元に戻り、「真実の愛」とは姉妹の愛だったということが分かる。

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アナと雪の女王・ラストシーン

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クリストフはアナの恋人になる。
エルサは二度と城の門を閉ざさないと約束し、凍らせた城の広場の地面でアナや国民たちとともに真夏のスケートを楽しんだ。

めでたし・・・・・・・めでたし。

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posted by ヒラヒ・S at 17:09| Comment(4) | TrackBack(0) | アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月06日

新海誠『言の葉の庭』現実より美しいアニメの力/あらすじ・感想・ネタバレ・解説

新海誠のリアリズム


評価:★★★    3.0点

この作品では現実世界で起こる、リアルで日常的な恋を描いています。
この現実的な恋愛物語を、アニメーションとして表現する必要があったのかとも思うのですが・・・・
言の葉の庭あらすじ
高校1年生のタカオ(声:入野自由)は、母と兄の三人暮らしだが、兄が同棲を始めるというので母は怒って若い恋人のもとに走る。子供の頃から奔放な母になれている兄弟は、それでも淡々と生活を続けている。
そんなタカオは雨になると午前中は学校をさぼり、新宿の公園で将来の靴職人の夢に向かって、靴のデザインを描ている。その公園のベンチにある日一人の女性が、缶ビールを飲みチョコを食べていた。ユキノ(声:花澤香菜)というその女性も、雨の日には公園に来ており、二人は徐々に雨の日を待つようになっていく。実はユキノは精神的に追い詰められ、ビールとチョコの味しかわからないほどの状態だった。タカオは彼女に好意を抱き、彼女が歩きたくなるような靴を作りたいと思うようになる。しかし、梅雨が明け二人が会う機会が減って行く・・・・・・

(日本/2013年/46分/監督・脚本・原作、新海誠/主題歌・秦基博「Rain」)

このアニメで語られているのは、現実的な恋愛と書きましたが、「恋愛ドラマ」として見てみれば正直言って平均的な「劇」でしかないと感じます・・・・・・・・・・・・
しかし、それでもこの映画は見るべき価値があると思うのは、そのアニメの表現力の高さゆえです。

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以降ネタバレがありますご注意下さい

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この主人公タカオは、作中ではアッサリと描かれますが、実は母が兄にばかり愛情を注ぎ、そこはかとなく孤独を感じながら生きてきました。
そんな彼が、女性用の靴を作ろうとしたり、料理が得意だったりするのは、ある種の母性に対する憧憬のようにも思えます。
そんな欠落ゆえに、学校をサボる事になるのでしょう。

ヒロインのユキノにとっては状況はもっと悲惨です。
タカオの通う高校の「古文」の教師である彼女は、生徒のイジメの対象になり精神的に追い詰められ、学校にも行けず、助けてくれる者もなく、どうしようもなく公園で朝からビールを飲んでいるのです。
そんな孤独な二人が出会い、それと知らず、生徒と教師の恋が始まるのです。

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そこには、孤独な者同士が「言葉を葉のように茂らせ、緑豊かな庭園とする」過程、つまりは「孤独を言葉によって埋め、愛を育む」過程が、間違いなく描写されていると感じます。

そしてまた、お互いの気持ちを確かめ合って、それぞれの道でシッカリ歩けるようになってから、再び再会しようという前向きなハッピーエンドになっています。

しかし、前にも書いたとおり、この恋愛劇を単にドラマの強さから見れば、残念ながら、凡庸と言わざるを得ません・・・・・・・

例えばここには『秒速5センチメートル』にあるような、恋愛劇としての鮮烈さは正直有りません。
実はこの映画のドラマは、『秒速5センチメートル』で描かれた「初恋」のドラマが、賛否を含めあまりに反響が大きかったがゆえに、どこか現実的なハッピーエンドに落ち着かせようという意思が働いたのではないかとすら思いました。
関連レビュー:『秒速5センチメートル』

いずれにしても、この映画で描かれた恋愛劇が、日常的な、現実的な世界観をもっている事を強調したいと思います。
そこで疑問なのが、だったら実写で映画化したほうが鮮烈にドラマを際立たせられるのではないかという事です。
そこで思い出したのは、今はなきアニメーション作家の今敏監督です。
かれは『パーフェクト・ブルー』というアニメで、それまでのアニメとは違いSFやファンタジーの設定を使わない、そのまま実写として表現できる現実世界のドラマをアニメーション作品として作りました。
それを見た時に、正直、この作品は実写で撮った方が表現力が高くなると感じたものです。
関連レビュー:『パーフェクト・ブルー』

この映画『言の葉の庭』も実写で撮るべきなのではないかと感じつつ・・・・・・・
しかし見終わったときに思ったのは、映画として凡庸であったとしてもアニメーションとして卓越しているという感想でした。

上手く説明できていないのですが、『パーフェクト・ブルー』の時にはこれは実写で撮った方が力を持つ作品だと思いました。
しかし、この映画は実写で撮ったときに、アニメで描かれたこの美しく繊細な風景、雨の情感が喪われてしまう事が、なんとも残念だと感じたのです。
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もう一度整理しますと、今敏監督作品では現実世界の描写は、アニメーションに置き換わったとき表現力が落ちると感じました。

しかし、この新海誠作品では現実世界の描写は、実写にしたよりもアニメーションの方が表現力が上がると感じたのです。

それはすなわち新海作品においては、実写映像よりもアニメ表現の方が「現実世界」をより豊かに表現できるということを表わしています。
今敏作品に関してはアニメでしか描けない「虚構世界」を確立し、それは卓越した酩酊感を生む素晴らしい表現だと個人的には感じます。(下/パプリカ「パレードシーン」)

しかし、そんな現実を異化する表現であるがゆえに、現実に依拠したドラマを描くにはアニメ表現の方向性が違っていたのだと、新海誠作品を見て思うようになりました。


つまり、新海誠のアニメ表現は、間違いなく現実世界(ことに自然風景)を描いて、実写映像よりも優越していると言う事を鮮烈に、繊細に、情緒的に、瑞々しく、華麗に、この映画が証明したように思います。

そういうわけで、この映画は現実世界を超越した現実表現を、アニメーションが表現したと言う意味で歴史的な作品だと思うのです。

このアニメによる現実表現を持ってすれば、実写映画をアニメとしてリメイクして、実写よりも優れた作品になることを意味するでしょう。

え〜例えば・・・・・『恋空』なんていう低評価映画(yahoo映画で★1.98、ぴあ映画生活で★2)であっても、新海誠監督のアニメ力を持ってすれば傑作にしちゃうんじゃないかなんて思ったりします。
「言の葉の庭」エンディング・ソング秦基博『Rain』


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ラベル:秦基博 新海誠
posted by ヒラヒ・S at 17:29| Comment(4) | TrackBack(0) | アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする